こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その3

 当選から5か月が経過していた。その間、共有していたタブレットをそれぞれにということで一台追加してみたり、暑いのが苦手ということもあり夏に備えて高い扇風機を買ってみたり(提督の買った安物とは大違い)、ラーメン屋に行った際に煮卵を二個追加してみたり、飲みに行った際の飲み放題の時間をいつもなら2時間のところ無制限に延長してみたり、海防艦ズにファミレスで好きなだけ奢ってあげたりと、二人が考えうる範囲の贅沢や大盤振る舞いをしてみたが、やはり大した消費額にはならず、当選金残高約5億9千9百5十万円。むしろ給料に手を付けないで済んでいる、これだけの預金のため少しではあるが利息が付いてむしろ増えている。既に二人は夢の利息生活に突入しているのであった。

「減らないわねぇ」

「そうですね…」

 また二人、通帳とにらめっこをしている。少しばかりものが増えた部屋の中、ついでに言うと一階という立地を活かして、床を改装してもらい掘りごたつにしたお決まりの場所で足を伸ばしている。これに少々お金はかかったが、やはりかすり傷にもならない。

「何かいい使い道はないかしら」

「無理に考えることもないんじゃないですか姉さま」

「そうねぇ…」

 顔を見合わせる二人。この数か月色々と考えてみた二人だったが、やはりこれといって思いつくことはなかった。家を買うわけでも車を買うわけでも、世界一周旅行に出かけるわけでもない。ホストクラブに入れあげることもこの二人は絶対にありえない。再び視線を通帳に落とす。

「どこかに寄付でもしちゃいましょうか」

「それもいいですけど、もうちょっと自分たちのために使いたいですよね」

「そうよね。まだ人生長いしねぇ」

「あ、姉さま。私温泉に行きたいです」

「あら、いいわね。どこに行こうかしら」

「折角だから遠いところがいいです。そうですね…」

 タブレットに手を伸ばして調べ始める山城。

「ここなんてどうでしょう?」

「あら、いい雰囲気。何日かお休みを貰っていきましょうか。今ならオフシーズンで安そうだし」

「あ、姉さま、私博多に行ってみたいです。屋台巡りしたいです」

「あら、それもいいわね。ちょっと長めにお休みを貰いましょうか」

 少しではあるがやりたいことが出てくる。その一つ一つを書き留めていく扶桑。このためにノートを一冊「やりたいこと帳」として作った。まだ1ページも埋まっていないが。

「じゃあ明日にでも提督に休暇の申請に行きましょう…、あ」

 何か思いついたかのように声を出す扶桑。

「どうしました姉さま?」

「あのね山城。私ちょっと行きたいところがあるのだけれど」

「どこですか?」

「えっとね…」

 

 翌日

 

「休暇? もちろんいいけど、どのくらい?」

「はい、2週間ほど」

「おや、結構長いね。遠出?」

「はい、ちょっと遠くへ行こうかと」

「いいねぇ。たまにゃのんびりしておいでよ、はいどうぞ」

 話しながら申請書類にハンコを押す提督。それを扶桑と山城それぞれに返す。

「どこ行くの?」

「それは、帰ったらお話ししますね」

 にこやかに「秘密」といわんばかりの笑顔で応える扶桑。

「楽しみにしてるねー」

 提督に軽く会釈して部屋を後にする扶桑と山城。

「これで準備完了ね」

「ええ」

「じゃあ、明日からよ山城?」

「はい、姉さま」

 旅行に行くはずの二人だが、ちょっとだけ神妙、何かを決意したような顔でお互いを見つめる。そして翌日、二人は鎮守府を後にした。

 

 

 

「姉さま、怖いです…」

「私もよ、山城…」

 初めての飛行機にめっちゃビビっている。ちなみにちょっと奮発してビジネスクラスにした。

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