こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その2

 午後3時ちょっと前、食い散らかされた出前の器が並ぶ机に一人座って黙々とスマホを眺めている奴がいる。扉が無くなって非常に風通しが良くなった部屋、扇風機いらず。

※話を書くにあたって都合のいい現代文化はあるという前提で書いています

「…なにしてんの?」

「ここwi-fiの繋がり良いから、ちょっと使わせてね」

「仕事は?」

「シフト休」

「ならいい…、いやダメでしょう。ここ提督室なんですけど」

「黙ってて、もう少しで予約始まるから」

「なんの?」

「限定のミュール」

「へぇ…いやいや、自分の部屋でやんなよ」

「あっきた!」

 午後3時丁度、恐らくそのミュールの予約が開始されたのだろう。提督の声なんざ全く聞いちゃいない。画面にかじりつき、すごい勢いで画面をタップし始める鈴谷。ストトトトという小気味いい音だけが部屋の中に響き渡る。その気迫に気おされて何も言えない提督。

「…よっしゃ!」

「買えた?」

「うん、あざーっす提督。じゃまったねー」

「はーい」

 嬉しそうにヒラヒラ手を振って部屋を後にする鈴谷。

「…早く扉直してもらわないと。てかなんでこの部屋の無線のパスワードしってんの?」

(庶務科に内通者がいるから)

 

 

午後4時、一服中の提督。缶コーヒー片手に窓のさんに寄りかかって外を眺めている。遠く視線の先には夕暮れのグラウンドが広がっている。休みの艦娘が草野球をしているのが見える。

「野球か、今度参加させてもらおう」

 コーヒーを一口含む、と同時に

 

 カキーン(木製バットだけど)

 

 パリーン

 

「あっ、提督ごめーん!」

 ホームランをかっ飛ばした伊勢からお詫びの言葉が飛んでくる。グラウンドの一番遠いところ、芯でとらえた大飛球が提督の真横をかすめて窓ガラスを突き破り、部屋の中を転々としている。ここまで飛ばすバッターもバッターだがピッチャーもピッチャーで、投げている日向はMAX170kmのストレートを投げる。

「艦娘って、スポーツやらせたら世界獲れるよね?」

 また風通しが良くなった。

 

 

午後6時。

「以上、本日の日次報告です」

「はい、ありがとう。お疲れさん」

「なお、本日は海防科の数名が夜間警戒訓練に出ておりますので、明日朝には報告を受けるようにお忘れなく」

「はい」

 事務的に一日の報告を大淀から受ける。

「ところで」

「はい?」

「扉と窓っていつ直るかな?」

「すでに手配はしてありますので、週内には恐らく」

「あぁよかった、ありがとう」

「それまでは新聞紙でも貼って我慢してください。扉のほうは…、諦めてください」

「しゃーないか」

「ところで提督」

「はい?」

「今日のうちにお皿はちゃんと洗ってくださいね。夏ですからすぐ臭います」

「へい…」

 16人プラス自分の分、間宮の厨房を借りて洗った。

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