こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

18 / 109
その5

「試合開始に先立ちまして、椴法華鎮守府音楽科のメンバーによるテーマソングの斉唱を行わせていただきます」

「はーい、なっかちゃんでーす! 今日は私のためにあつまtt」

 

割愛!

 

 試合開始に先立ち、監督同士によるメンバー表の交換が行われる。

「長門、どんな感じだ?」

「うむ、これだ」

 

■深海棲艦側スターティングメンバー

 

監督:港湾棲姫

 

1番:セカンド駆逐古鬼

2番:レフト軽巡棲鬼

3番:サード重巡棲姫

4番:DH戦艦棲姫

5番:ファースト欧州水姫

6番:センター防空棲姫

7番:ショート潜水新棲姫

8番:ライト北方水姫

9番:キャッチャー集積地棲姫

先発ピッチャー:深海鶴棲姫

 

控え:もろもろ

 

「相変わらず二遊間が鉄壁だな。俊足の古鬼とあの潜水っ子だからな」

 深海勢のメンバー表を見て顔をしかめるこっちのメンバー。

「そんなにすごいの?」

 何も知らない提督が尋ねる。

「ええ、敵ながらあっぱれの守備力です。特にあの潜水新棲姫は、彼女のところにボールが飛んだらまずアウト一つ増えると思って差し支えありません。うちの島風ですらさされるでしょう。イベント最終マップ、初期マスで追い返されるがごとくまさに鉄壁、地獄の門番の名は伊達ではありません」

「イベント? 初期マス?」

 よくわからない単語が混じってはいるが、加賀が詳しく説明してくれる。「あの子」と三塁側のベンチを指さして教えてくれる。とても小さい、駆逐艦と同じかそれ以下しかない背丈の、ぱっと見そんな風には全然見えない。視線を感じたのか潜水新棲姫がこちらを向いて手を振ってくる。かわいい。

「やっほー、かわいいねぇ」

 手を振り返す提督。しかしその後ろに先日失礼をしてしまった港湾棲姫が恐ろしい形相で仁王立ちしている。手を振る潜水姫を抱き上げ奥に引っ込む。口元が「コ〇ス」といったようにも見えた。

「提督、何かあったんです?」

「事故だけどね…」

「よぉし、相手にとって不足はない。今年はかーつ!」

「おーっ!」

 ベンチ前で円陣を組んで気合を入れる。そして選手整列のアナウンスとともにバッターボックス付近へと走っていく。双方とても気合の入った挨拶を済ませ、後攻の艦娘勢が守備へと散っていく。

「それでは始球式を執り行います。本日はお忙しい中お越しいただきました、今や世界で活躍中のモデル『陸奥さん』にお越しいただきました」

「え?」

「うおー、むったーん!」

「きゃーきれーい!」

 黄色い声援が一斉に湧き起こる。結構な人数がこれがお目当てだったというレベルの大歓声。

「はぁい皆さん、今日はよろしく」

 こちら側のユニフォームに身を包んだ陸奥がマウンドへ向かう。

「長門、お前同型艦だよね。なんであの人モデルやってんの?」

「稼ぎが違う、かららしい。安心しろ、艦娘として鎮守府に籍はある」

「副業ってことでいいのかしら?」

 審判(外注の正式審判員)からボールを受け取りマウンドへ上がる。打席には深海の一番駆逐古鬼が少し距離を取ってバッターボックスに入る。

「じゃあ…」

 天高く足が振り上げられ、一気に振り下ろされ白球が加賀めがけてすっ飛んでいく。余りにも美しい投球フォーム。「チュドン!」という、瑞鶴の球を受けた時とは比較にならないほどの轟音が球場内に響き渡る。申し訳程度に古鬼が空振りする。

「おぉー!」

 球場が歓声に包まれる。スピードガンが『206km/h』と表示される。

「火遊びはダメよー」と、会場に一声挨拶をして大歓声の中マウンドを後にする陸奥。

「『火遊びストレート』はまだまだ健在だな。あれで現役を引退したというのだから惜しい」

 腕組みして長門が感心している。

「冷静に言ってんじゃねぇよ。連れ戻せ、エースだろうアレなら!」

 試合開始のサイレンが鳴る。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。