こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その7(まだ半分くらいだぞ

 三番の重巡棲姫にあっさり外野フライを上げられ1点先制を許す。しかしこれは予定通り、次の四番を如何に抑えるか。ここがまず初回の勝負所だろうと勝手に思っているヘッドコーチ提督。

「四番、指名打者戦艦棲姫」

「待ってました、ダイソンさまー!」

「吸ってくれー!!」

 わけのわからない歓声が外野から飛んでくる。それに呼応(?)するかのように、オトモボクサーが砲身を外野に向け一発。歓声は止む。そして中の人がバッターボックスに立つ。

「独特の構えだな、打ちそうな雰囲気しかないな…」

 握りが逆ということもそうだが、やたらと前傾姿勢。気にせず瑞鶴が1球目を投じる。

「ブォン!」という凄まじい音、ベンチまで風が舞い込んでくるほどのスウィング。「いったか?」と一瞬思ったが、ボールは加賀のミットに吸い込まれている。

「あれ?」

 拍子抜けしたかのように提督が目を見開く。たまたまいいところにボールがいったのだろうとその時は解釈していざ2球目。

「ぐぉん!」ストライクツー。何か気になる。バットとボールが20センチくらい離れている気がする。

「まさか…」

 何か怪しい、目を細めていぶかしむ。3球目、「スパーン!」加賀のミットが小気味いい音を立てて白球を吸い込む。三球三振。なのに割と満足した顔でベンチへと下がっていく。

「なぁ武蔵よ」

「何だ提督よ」

「あの戦艦ちゃん、野球ヘタか?」

「何をもって下手とするかは人によるが、当てれば場外までひとっ飛びだ。しかし打率は推して知るべしだ」

 気になって深海勢の打撃成績表を速吸に持ってきてもらう。

 

戦艦棲姫:過去10試合(練習試合含む) 打率:0割7分8厘 HR:4本

 

「あのさ、DHってどういうポジションか知ってる?」

「バッターしかやりたくない、というやつが立候補するものだろう?」

 当然だろうといわんばかりに、しれっと武蔵が答える。

「ちげーし。…ってことはもしや武蔵も!?」

 嫌な予感はすぐに的中することになる。しかしなんだかんだでスリーアウト、なんとか初回は1点で収めることができた。

「よぉーし、こちらもさっそく反撃といこう。しまっていこー!」

「おー!」

「その熱意、仕事に向けてくれないかなぁ」

 初回だけで相当ツッコミ疲れしたので、羽黒にかき氷を買ってきてもらいシャクシャクやりながらベンチに座っている提督。さて向こうのピッチャーはと視線をマウンドに送る。

「…瑞鶴に似てね?」

『深海鶴棲姫』名前にも同じ鶴が入っており、ダイナミック寝ぐせこそ違いはあれど、顔は瑞鶴に瓜二つ。

「ああ、鶴ちゃんね。ひいおじいさんのそのまたおじいさんが同じだったってのが前話してわかってさ、遠縁だったのよあの子とは」

「それだけ遠いともう他人だよ? 似ることないよ? クローンじゃないの?」

 1回の裏、開始。

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