「…ん、もうちょ…っと。あ、そこじゃない…」
カチャカチャと小さな音と独り言が部屋の中に小さく響く。
「…いっよっしゃぁー!!!」
全身全霊のコロンビアが炸裂する。
「おぉーーーー、おめでとー!!!」
「888888」
「マジすげぇっすドカ雪さんwwwww」
初雪が「ドルアーガの塔」の最速クリア挑戦生放送をしており、たった今新記録が樹立され、ネット民から祝福を受けているところである。苦節4か月、努力が実った瞬間であった。
ちなみにネット上の「ドカ雪」というハンドルネーム。
初雪→寒い、外出たくない→そういえばレミオロメンが歌ってたなー→ドカ雪にしておくか
という理由でつけられたものらしい。
試合に戻ろう。
ここからホントのその8
「一番、ショート島風」
「いっくよー」
意気揚々とバッターボックスに入る島風。バットを握り…、ではなくなぜか連装砲ちゃん(その1)を握り、その連装砲ちゃんがバットを握っている。
「あれ、アリなの?」
「ああ、艤装は体の一部ということで、使いたいヤツは使ってもいいルールになっている」
「野球じゃないなコレ。テニスとテニヌの違いみたいになってきたぞ…」
「まだ〇だだね」って言ってる人が思い浮かぶ。そう考えると戦艦棲姫は潔い。いくら打てなかろうが外の人には頼らず自身でバットを握っているのだから。そんなことを考えていると1球目が投じられる。
「ふんっ!」と声を挙げたのは島風。バットを持っているのは連装砲ちゃんなのに、その連装砲ちゃんを振っている。バッターで二段モーションって聞いたことないけど、島風が振る→連装砲ちゃんもバットを振る、って奇妙な構図になっている。
「メゴォ」
嫌な音がする。ボールが当たったのはバット、ではなく連装砲ちゃん。そりゃそうだ、タイミングを取ったのは島風であって連装砲ちゃんではない。バットは空を切りその代わりに連装砲ちゃんの頭部にジャストミート。チョー凹んでる。
「自分で打つ気あるなら最初からバットだけ持てよ!」
取りあえず打球をとらえた島風、バット(と連装砲ちゃん)を放り投げ一塁へと向かう。ベンチ前に転がってきた連装砲ちゃんが「行けよご主人、オレの屍を乗り越えて(CV:大塚明夫)」と割とはっきりしゃべっている。
「声ひくっ、しぶっ。てかしゃべれるの!?」
試合後、板金修理で元通りになった。
打球はというと、綺麗に三塁線を割るか割らないかスレスレのところを抜け、外野まで抜ける。長打コースだ。
「よし、いけっ」
俊足を飛ばして一塁を回る。外野からボールが返ってくる頃にはすでに二塁を陥れていた。
「よーし、ノーアウト二塁」
やったことはえげつないけど結果オーライ。誰も拾い上げない不憫な連装砲ちゃんを提督が優しく拾い上げベンチにそっと置く。どこからか湧いて出てきた連装砲ちゃんその2とその3も交え、この後提督のいい話し相手になってくれた。
「二番、神通いきます」
揺れる柳のように静かにバッターボックスへ向かう神通。入るなりバントの姿勢を取る。
「まぁ堅い選択かな」
送ってまずは確実に1点を獲る、セオリー通りの野球。そして鶴ちゃんが第1球を投じる、と同時に。
「探照灯、照射」
振りかぶった瞬間、神通の肩についた何かがフラッシュする。そして投球フォームを崩す鶴ちゃん。当然球にも影響が出て球威が落ちる。
「よし!」
「よしじゃねぇ! どう考えても反則だろうアレは」
「言っただろう、艤装は体の一部だと。使っても全く問題ないっ!」
「えぇー…。むこうさんそういうこと一切してないのに、どっちが悪者かわからなくなってきたぞ」
しかし、これを予想していた一部内野手はグラサンを掛けていた、たぶん去年もやったのだろう(鶴ちゃんは今年からの新入りなので知らなかったので用意し忘れたらしい)球威の削がれたボールは力なくバッターのもとへ到達する。そしてバスターに切り替えるかと思いきやそのままバント。フェアなんだかフェアじゃないんだか全く分からない。ボールは目のくらんだピッチャー前に転がる。キャッチャーが前に出てきて一塁へと放る。三塁への進塁は許したもののワンアウトはもぎ取る。
「神通も生きれると思ったが、まぁいい」
厚かましいとはこのことか。連装砲ちゃんを膝に乗せ試合を見守る提督。
「三番、サード衣笠」
これまた歓声が沸き上がる。赤い「C」と記載された帽子を被ったファンが特に。
「ふっふーん。まぁ見てなさい提督」
意気揚々とバッターボックスに立つ衣笠。そして初球、あっさりデッドボール。先ほどの目くらましがきいているのか、手元が狂ったらしい。どてっぱらに一発貰う。ある意味自業自得だ。鶴ちゃんがしっかり帽子を脱いでお詫びしてくる。ホントいい子らやで深海勢。
「四番、指名打者武蔵」
心配なのがきた。