こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その16(いよいよ決着):終

「カッ!」

 長門のバットが三連装砲さんの渾身の直球を捉える。

「おぉ!」

 歓声が上がる、一瞬景色が止まる。そしてピッチャーの右横を抜け弾丸ライナーが外野めがけて一直線。

「抜けろぉ!」

 バットを放り投げ走り出す長門、そして…

 

 ゴッ

 

「…あ」

「あ」

「…」

 鈍い音、それは弾丸ライナーが走り出した金剛の左頬に直撃した音だった。歪む金剛の顔、それを見て真っ白になり固まる長門、同じく固まる艦娘サイド、よろめきその場に倒れる金剛、浮かび上がるボール、フライで捕球する駆逐古鬼、そのまま二塁を踏む、スローモーションのように流れる情景。艦娘サイドの時間が動き出すまで、それではお聞きいただきましょう「加賀岬 二航戦アレンジver」

「ゲームセット!」

 二塁塁審の二回のアウトコールを確認したのち主審から発せられる試合終了のコール。と同時にレフトスタンドから大きな歓声が上がる。提督はパチパチと手を叩きナイスゲームと称賛している。深海勢はマウンドに集まってハイタッチ、かと思いきや金剛の周りに集まって心配そうにその白目をむいて失神している金剛を介抱している。ホント、何から何まですいませんと言いたい。そしてようやっと動き出す艦娘の時間。

「ま、負けた…」

 膝からがっくり崩れ落ちている一塁ライン上の長門。

「負けるべくして負けたわ」

「あ、あんなに練習したのに。ピッチングマシーンだって新調したのに…」

「二度と無駄遣いさせねぇからな」

 

 選手がホームベース前に集まりゲームセットの挨拶を行う。

「13対11で、深海サーモンズの勝利!」

「ありがとうございましたー」

 一同礼、それぞれに握手を交わす選手たち。監督の長門はまだ立ち直れないでいるため、代わりに提督が監督同士の握手を行う。相手はあのワンコ。

「うちの連中がホントすいません…」

「…」

 提督が手を差し出すもそれに応じてこないワンコ。やはりまだ例の件が尾を引いているのか。

「イイシアイダッタ」

 提督の手を握り返してくる港湾棲姫。初めて触れる深海棲艦の肌、少し冷たいがチョーすべすべでキメが細かくずっと握っていたい、そんなことを思っているとちょっとワンコの目が光りかける。感情を殺す。

「あ…、いやこちらこそ」

「ライネンハ オマエガカントク ヤッタラドウナンダ」

「そのつもりです…」

 その後セレモニーが執り行われ「目録」と書かれた封筒を受け取る港湾棲姫。ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ古鬼や潜水姫ことヒメコ。良かったね、また熱海に行けて。そして選手は引き揚げるが、提督は深海勢の陣取るスタンドの前まで行き軽くお辞儀をする。するとどうだろう。

「タノシカッタゾ」

「イイシアイダッタゾー」

「マタライネンモ タノシマセテクレー」

 などなど、ねぎらいの言葉が次々と飛んでくる。「あいつら普通に楽しんでんな」なんてこと思いながら、それを聞いてもう一度深々と頭を下げる提督。その横を港湾棲姫と潜水新棲姫が手をつないで通り過ぎる、その時「アリガトウ」と聞こえたのは空耳だろうか。そのままダグアウトへと消えていく二人。最後にヒメコちゃんだけが振り返って「マタネ」と口が動いたように見えた。

「…平和だねぇ」

 陽の傾きかけた空、試合中のそれとは異なる人々の騒がしい声。徐々に薄れていき平和の祭典は幕を閉じる。

 

 

 後日

「アイツらチョー楽しそうなんだけど!」

 瑞鶴宛に届いた鶴ちゃんからの写真付きメール、そこには温泉旅行をド満喫している深海勢の姿が写っていた。

「自腹で行けよ」

 

 日常へと戻る…

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