こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その3

「ここかぁ瑞鳳!」

 ピシャーンと勢いよく扉を開け、間宮の店内に踏み込む提督。なぜか鍵も開いていて灯りもついている間宮。灯りだけなら珍しくもないが、いい匂いまで漂わせている。勝手になのかどうなのか定かではないが瑞鳳が使っている、と踏んだ提督。

「わ!! なにっ!? って、提督?」

 案の定、瑞鳳が料理をしていた。

「やっぱり、遅くなるならなるって言えよ。こっちは飯も食わずに待ってるんだから」

「あああ、ごめんなさい。集中してたら時間忘れちゃって…。ゴメンね」

 ペロっと舌を出して謝る瑞鳳。その可愛さに許しそうになる。

「まぁいい。で、何してるんだ?」

「料理、見ればわかるでしょう」

「じゃなくて」

「いい食材が手に入ったから、それで今料理してるの。あ、提督も食べり…、食べる?」

「あ、いいの? じゃあお言葉に甘えて…」

 空腹に負けて用件そっちのけ、瑞鳳の料理をいただくことにした提督。客席に座り瑞鳳の料理を待つ。ほどなくして両手いっぱい料理を運んでくる瑞鳳。

「はい、お待たせ」

「お…、すげぇ美味そう」

 食卓に並ぶ料理の数々。白く輝き米が立っている炊き立ての白飯、具はオーソドックスに豆腐とわかめと油揚げではあるが非常に香りのいい味噌汁、どこで獲れたのかこの時期としては非常に脂ののった鱈の西京焼き、肉じゃが、得意料理の卵焼き、オムライス、ゆで卵、煮卵、ポーチドエッグ、オムレツ、イタリア風オムレツ、韓国風オムレツetc.…。

「卵料理多くない!? それにオムライスあるなら白飯いらなくない? コレステロール値オーバーしちゃうよ」

 気づけば卵だらけ、殺しにきてるとすら思えてしまう。

「何も一人で全部食べなくてもいいよ、私も食べるんだから」

「そりゃそうだろうけど…、まぁいただきます」

「はい、召し上がれ」

 確実に黄色い食卓、某美食家なら間違いなくキレている。取り敢えず冷めてはなんだと料理に手を付ける。

「…おぉ美味い」

 一口すすった味噌汁でその美味しさがわかる提督。これから箸を付けるものも恐らく間違いはないであろうと確信する。

「でしょ?」

 自信満々嬉しそうに提督のつぶやきに反応する瑞鳳。そしてその後も腹が減っていたことも相まって、出された料理を次々に食べる提督。新婚ほやほやのお嫁さんが旦那の帰りを待ちながら腕を振るい、やっと帰ってきた旦那がその料理を美味しく食べる。傍から見ればそうとしか見えない光景ではあるが、提督は瑞鳳を説教しに来ている、そこんとこ忘れてはいけない。

「で、提督。用事って何?」

「は! 忘れていた!」

 やっぱり忘れていた。いったん箸を止め口の中を空にしてお茶を一口、一息つく提督。そしておもむろに話し出す。

「瑞鳳、遠征は止めて間宮さんを手伝うんだ」

 担当直入、提督としての威厳全開で瑞鳳に告げる。

「えー、ヤダ!」

 なんの迷いもなくその要望は突っぱねられる、とても清々しい。

「イヤ、じゃなーい! これは提督命令としてもいいんだぞ。これだけ料理が美味ければ十分間宮さんの助けになる。てかお前給糧科所属として仕事しろよ」

「えーだってー、寒くなる前に北の海に行ってホッケ獲ってこようと思ってたのに。あとついでにロシア(の卵)料理学んで来ようと…」

「ガングートが戻ってきたら教われー!(ロシア組帰省中)」

 なんとしてでもコイツを鎮守府にとどめなくては。ロシアなんか行かれた日にゃ何年帰ってこないか、心底心配になってくる。

「ダメェ?」

「ぐ…」

 すんごい上目遣いでおねだりされる。やられそうになる提督。

「ダメ、ダメなもんはダメ!」

 瑞鳳テンプテーションになんとか勝った、腕組みして改めてお願いを拒否する。

「えー!」

 とても残念そうな瑞鳳、テンションだだ下がり。それを見た提督はあまりの落ち込み方にちょっとだけ同情してしまう。それほどまでに瑞鳳にとって料理というものは大切なのだろうか、というか上手くなるならほかの手があるだろうにと考える。と同時に一つの考えが思いつく。

「なぁ瑞鳳」

「…ん?」

「お前、自分より料理が上手いヤツに会いたいんだよな?」

「うん、その人から色々教わりたくて」

「よしわかった。じゃあオレと勝負しろ、そして勝ったらロシアでもベーリング海でもどこにでも行かせてやる」

「ホント!?」

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