こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その4

 週末、晴れ渡った空、吹き抜ける海からの風、漂う祭りの雰囲気、鎮守府内グラウンドに特設ステージが設けられる。

「この鎮守府、毎週末なんかイベントやってる気がするんだけど」

「今日のは提督主導でしょう」

「そうなんだけどね…」

 ステージ下からそれを眺める提督と大淀。『提督vs瑞鳳 料理対決!(かも)』と書かれた大看板、そう先日提督は瑞鳳に対して料理勝負を持ちかけていた。

 

 …先日の続き

 

「よしわかった。じゃあオレと勝負しろ、そして勝ったらロシアでもベーリング海でもどこにでも行かせてやる」

「ホント!?」

「あぁ、二言はない」

「やったぁ、そんなのもう勝ったも同然じゃない」

 瑞鳳は提督が勝手に負け試合を持ち掛けてきたと信じ込んでいる。

「だが、もしオレが勝ったらちゃんと鎮守府にとどまって仕事するんだぞ。行きたいところがあるなら休みの日に行け」

「いいよぉ、その勝負喜んで受けて立つ!」

 ブイサインを出してもう勝った気でいる瑞鳳。余裕しゃくしゃくとはまさにこのこと、どれだけ北に行きたいのか知らないがノリノリである。しかし、当然提督が無策でこんな勝負を持ち掛けるわけもない。「瑞鳳に仕事をさせる」当然のことなのだがここまでしなくてはいけないことに納得はいっていないが、これで瑞鳳を土俵に上がらせることはできた。喜び飛び跳ねている瑞鳳を不敵な笑みで眺めている。

「さて、食いきれない料理どうしよう…」

 やはりすべてに手の付けられない量だった。偶然歩いていた赤城を呼び止めノータイムで「食べます」と返事をもらって全てご馳走様。

 

 …戻って週末ステージ横

 

「伊達に瑞鳳さん料理上手くないですよ? 勝ち目あるんですか提督?」

「まぁ任せろ」

 頭に手ぬぐい、腰にエプロンを身に着け臨戦態勢の提督。自信満々大淀の問いに答える。

「それでは、選手入場!」

 本日のMCは那珂ちゃん、歌は無し。向かって左サイドから瑞鳳、右から提督がステージに上がる。ステージ上には厨房セットが一通り、二人分左右対称に並んでいる。提督は前述の通りの格好、瑞鳳はというと…。

「瑞鳳、あなた何でも形から入るタイプだったわね」

 ステージ下観客席で、誰に聞かれることもなく姉の祥鳳が呟く。その身なりはまさしく形から、洋食のシェフが着る白いユニフォームに袖を通しオレンジのスカーフを首に巻き、例の如くあの高いコック帽。日本の軍艦としての誇りなんてどこへやら、かぶれまくっている格好である。

「恰好はいっちょ前だな」

「提督こそ、似合ってるじゃない」

 登壇したステージ上でにらみ合って?いる二人。大したことをしているわけではないのに早くも火花が散っている。

「それではルールを説明します。二人には制限時間1時間で料理をしてもらいます。そして食材、これは今からこの箱の中に入っているクジを引いて出たものがメイン食材となります」

 公平を期すためにランダムでの決定。これは双方納得しての勝負方法である。

「そして審査員ですが、今からこれもクジを引きます。それで出た七名が審査員となります。さて、食べられるのはだれかな~?」

 煽る那珂ちゃん。

「では、まず食材から決定したいと思います。クジを引くのは…間宮さん!」

 その呼びかけで間宮がステージへと登壇する。そして観客に一礼してから那珂ちゃんの持つ抽選箱へ手を入れる。

「…これっ!」

 一枚の紙を引き抜く間宮。折り畳まれたそれを那珂ちゃんに渡す。

「さて、二人が料理する食材は…」

 引っ張る那珂ちゃん。さっさとやれと思ってる提督。

「おぉ、これは! 二人が料理する食材は…『卵』です」

 湧き上がる観客、そして何を思っているのか大体わかる顔で微笑む瑞鳳。彼女にとってこれ以上ない食材だろう、勝利を改めて確信する。しかしその後ろで提督が不敵に微笑む、誰にも気づかれないように小さく口元を動かす程度に。

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