こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その3

 鎮守府を抜け一般道へ入る。窓を全開にしていると心地よい海風が車内に吹き込んでくる。晴れて景色も非常にいい、とばすことなく景色を楽しむためゆっくりと車を走らせる。二人も珍しい車窓からの景色を身を乗り出して楽しんでいる。海ばかりの彼女らにとっても提督同様この景色は新鮮なものであった。

「あ、そうだ。はいこれ、妙高さんから」

「ん、なんだ?」

 白露から紙切れを一枚渡される。今日は大淀が非番のため先ほど電話に出た妙高が庶務科の仕切りをしている。

「お遣い、お願いしますだって」

「揃いも揃って提督コキ使って…」

 明石に続き妙高も提督に対してお遣いを依頼してきた。立っている者は親でも使え理論がこの鎮守府には浸透しているのだろうかと考える。渡されたメモをチラ見してみると「ティッシュペーパー 買い置きのコーヒー」などなど、個数含めしっかりと記載されている。几帳面な性格の通りメーカーまできっちり指定。雑な買い物はできそうにない。

「あ…、提督」

 村雨が言いづらそうにしている。

「まさか」

「そのまさか。時雨や夕立からもお遣い頼まれちゃった。ああ、別に提督に買ってきてってわけじゃないから、寄ってくれればいいだけだから、うん」

「それならまぁいいけど。取りあえずまず飯、食いに行くか?」

「おー!」

「わーい」

 朝起きてからまだ何も食べていなかった提督。自身の腹を満たすことも兼ねてまずは約束を果たす。少しスピードを上げて市街地へと向かう。

「なに食いたい?」

 ご希望を賜る提督。

「んー、そうだなぁ」

「村雨、ピザが食べたいな」

 悩む白露に対して即決の村雨。和食メインの間宮と出前と近所のラーメン屋。確かに洋食はなかなか食べる機会に恵まれない。

「白露、それでいいか?」

「うん!」

「ピザ屋か、こんな田舎にあるのかね」

 姉妹は気が合う。さて、希望は確認したがそのピザ屋がどこにあったものか。ファミレスレベルで妥協してくれるかそれともきっちりとした窯焼きのピザか。運よく道中にそんなものがあればよいのだが。

 15分ほど車を走らせ市街地のちょっと手前に差し掛かると、一軒の食事処がある。

「あったよおい」

 

「こんなところにお店あったんだ」

 来ることをわかっていたかのように、真新しい建物の洋食屋が三人を迎える。看板に「窯焼きピザ」と記載されているので、お望みのものはあるだろう。屋根の上には煙突があるので、窯が本当にあるのだろう。車を駐車場へと入れてエンジンを切る。飛び降りて店に突撃する二人、その後を追う提督。まだ開店して間もない時間のためか客は提督達が最初であった。

「いらっしゃい」

 店の外観とは真逆、非常に野太い声、丸太のような腕、一見某国の退役軍人じゃなかろうかと思うほどの体格。そして顔全体に髭を蓄えた屈強なオッサンが出迎える、店主だろうか。そんなこと白露たちは気にも留めず席に腰かけメニューを眺めている。しかしそのただならぬ雰囲気の店主がどうしても気になる提督。席に着くまでお互い目を合わせたまま威嚇しあっている、散歩中の犬か。

「なににしよっかなー」

 提督がメニューを覗くと、こんなにあるのかと思うほどのピザの種類がメニューに並んでいる。アイツ只者ではない、カウンター裏でこちらを見ている店主に目を向けるとニヤリとされる。

「多分、この店美味いぞ」

「え、なんでわかるの? 来たことあるの?」

 白露が提督に問う。

「いや、無いが直感だ」

「? なにいってんの提督」

 程なくしてその店主が水を持ってテーブルまでやってくる。

「ご注文は?」

「えっとねー、迷うなぁ」

「迷ってんなら、俺に任せてみねぇか?」

「え?」

 三人そろって声を上げる。店主からの提案、従うべきか従わざるべきか。

「損はさせねぇよ、ピザ食いてぇんだろ」

「な、なんでわかるの?」

「顔に書いてあるんだよ。どうだい?」

 ここで提督はこの店主が只者ではないことを確信する。ほか二人は「なにいってんだコイツ」といった顔をしている。しかしその店主の自信満々の顔を見て考えを改めたようで、せっかくなのでその提案に乗っかることにする。

「じゃあ、ピザ3人前、お任せで」

「おうよ」

 ドスドスと巨体を揺らし厨房へと消えていく。そして奥から今度はバスンバスンと多分生地を練っているんだろうな、そんな音が響いてくる。

「おお、すごそう。ねぇ村雨、ここきっと美味しいよ」

 遠目に厨房をチラと除く白露が村雨にそんなことを言っている。提督はというとメニューもロクに見ずに決めてしまったため、値段が気になりメニューを開く。しかし、そこに書かれている値段は非常にリーズナブルで懐にやさしい。吹っ掛けられるかとも思ったがそれもどうやら杞憂に終わりそうである。

「食えねぇもんはあるかい嬢ちゃんたち」

「なーい!」

 好みを確認する店主。それに答える二人。

「あ、あのオレウリ科がダメなんで…」

 聞かれていない提督も一応答える。

「男は黙って出されたモンを食え。それにピザにウリ科なんて滅多に入らねぇから安心しろ」

 一喝され黙る提督。聞いている分には苦手なものは入ってこないであろうと、諦めて出てくるものを待つ。そして30分後、焼き立ての香ばしい匂いとともに三人分のピザがテーブルに並ぶ。

「へい、お待ち!」

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