こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その4

「あれ、一枚多いよ?」

 その場にいた全員が当然気づいたことではあったが、まず最初に声を上げたのは村雨。三人分であれば三枚でいいようなものだがなぜか一枚多い四枚のピザがテーブルに並ぶ。

「一枚はサービスだ。マルゲリータだから誰でも好き嫌いなく食べられるだろう」

「わーい、ありがとう」

「それでは遠慮なく」

「いただきます」

 三人そろって手を合わせて唱和する。サイズも宅配ピザのように大きくはなく、一枚を一人で十分食べきれる程度の大きさ。余分に一枚あるが三人なら残さず食いきれるであろう。そして店主が気を遣ってくれたのだろう、四枚すべて具は異なる。小皿も貰いテーブル中央に四枚並べて、好きにちぎって食べるスタイル。

「あたしこれ」

「私こっち」

「んじゃ、これからいってみっか」

 三者三様、別々のものを取り分けいざ食す。

「…」

「…」

「…」

「んん~、美味しい!」

 落ちそうな頬に手を添え、美味しさのあまり声を出す村雨。白露もつられるように声を出して、次から次へと色々なピザに手を伸ばしている。

「美味いなホント。やっぱただもんじゃねぇなあの店主」

 食に明るい提督、同様の反応をして改めて店主を見る。店主も腕組みをしながらこちらを嬉しそうに眺めている。お互い「グー」のサインで、何か料理人同士にしかわからない意思疎通をしている。

「何枚でもいけちゃう。これで足りるかな?」

「まぁ多少なら追加してもいいぞ」

「ホント? わーい」

 奢る約束の提督、多少の無茶は聞いてやるつもりできている。艦娘の胃袋も一部を除けば底はある。この二人ならそこまでにはなるまいと考えている。すると、徐々に客が増え始め、店主もこちらばかり構っていられなくなったようで、注文はほかの店員に任せ厨房へと引っ込む。

 最終的に七枚ほどを平らげ店を後にする。会計の際店主に「あんたら鎮守府の人たちだろう? サービスするからまた来なよ」と、今後のサービスを確約されてしまったので、今後一部艦娘には行きつけの店となる。商売上手だなと感心する。

「はー、美味しかった」

「提督、また連れてきてね」

「時間が合えば、な」

 そうしょっちゅう奢るわけにもいかないので、そこは流す。

「さて、じゃあまずどこから行くかな」

「そういえば提督って何しに行くの?」

 白露と村雨には自身の目的を告げていなかったため、白露から質問が飛んでくる。

「ああ、扇風機買いに行くんだ。自宅のが壊れちゃってな」

「ふぅん」

「じゃあさ、電気屋さん行く前にちょっと時雨たちのお遣い済ませていいかな? 多分そっちのほうが近いから」

 村雨から提案される。

「構わんぞ。で、どこへ行けばいい?」

「もうちょっと行った先の服屋さん」

「おっけー、じゃあまずそこな」

 最初の目的地が決まる。ナビは村雨に任せて車は進む。腹が膨れて少し眠いが、二人の話声が賑やかなのでそれも何とか耐えられる。電球の替えも買っておこうか、自身の買い物も何かほかにないか考えながら、15分ほどで最初の目的地へと到着する。

「あそこ、入って」

 後部座席から身を乗り出してきて目的地を指し示す村雨。

「あいよ」

 スピードを落とし通り沿いの衣類量販店へと入っていく車。田舎によくある例の店『ファッションセンター島〇作』ここなら自身の下着やシャツなんかもあるだろう。この瞬間自分の買うものも増えた提督。空いている駐車場に適当に止めて、さっさと店内へと入っていく。

「提督、すぐ済ませてくるから。ゴメンね」

「ん? おう、そんな急がなくていいぞ」

 そそくさと店の奥へと消えていく村雨。白露は特に用事はないらしく、すぐ済むならと外で待っている。提督も自身の必要そうな衣類を見に村雨とは逆方向へと歩を進める。そして村雨はというと、ある売り場の前で足を止める。何と書いてはいないがそこは『女性向け下着売り場』であった。

「提督に見られちゃダメ、提督に見られちゃダメ…」

 なんか異様に緊張している。

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