こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その6

「白露、おまえはどっか行きたいとこないのか?」

「んー、そだなぁ」

 村雨の用事が済んで次に向かうは提督の扇風機。食事は村雨の希望、さっきの店も姉妹の用事、白露本人の希望は今のところ特になし、提督が白露に何か希望がないか確認する。どうせ急ぐ外出ではないし時間にも余裕はある。多少接待してもよかろうと考えている提督。

「んー」

 悩む白露。

「無理に捻り出す必要もないぞ、あればでいい」

「わかった。提督が用事済ます間に考えておく」

「んじゃ、電気屋いくぞ」

 まばらだった通り沿いの建物が徐々に増え始める。そんな中に少し大きめの家電量販店が姿を現す。ウィンカーを出して駐車場へ。ここも空いているので適当に停める。ここは白露もついてくるらしく、三人そろって店内へ。店に入るなり村雨は「スマホみてくる」と一人別行動。そして残される提督と白露。

「お前はいいんか?」

「うん、扇風機見る」

「物好きだな、まぁいいや。さて扇風機は…」

 店内看板に目を向けて売り場を確認する提督と白露。白露が看板を見つけて移動、よりどりみどりの扇風機が並ぶ前へと到着する二人。

「どれにすっかな」

「提督、これにしようの。この羽のないヤツ」

 白露が一つの扇風機を指さす。

「ん、どれ…。たかっ!」

 白露推薦の品に目をやる、そして値札を見ると同時に吹き出しそうになる提督。自宅で使っているレトロな扇風機の額を倍にしてさらに丸を一つ増やしたほどの値段。とてもじゃないが買えない。いや、買えなくはないが今ここでこの額を使う気にはなれない提督。

「却下!」

「えー、かっこいいじゃん。一番高いし」

「お前の一番癖を値段にまで広げないでくれ、破産しちまう」

「じゃあこの小さいサイズのでもいいから」

 最初に指し示した品を一回り小さくしたようなものを今度は推してくる。しかしそちらもそちらで当然高い。

「却下、昼飯がひと月カップラーメンになっちまう。いいの普通ので」

「男気ないなぁ」

「こんなところで出す男気はない。それにこんなオシャレなの、あの家に似合うと思うか? レトロなのでいいの、レトロなので」

 一番安い、一番オーソドックスな扇風機の頭をポンポンとする提督。

「一応気にするんだ、そういうの」

「あの宿舎がデザイナーズマンションで、コンクリうちっぱなしみたいなオシャレ感バリバリの家だったら買ったかもしれないけど、あの築50年といった感じの日本家屋に、このダイ〇ンとかいうのは不釣り合いだろう。それにこんなにいっぱい機能いらないっての。羽が回ればそれで十分!」

 力説する提督。仮にこれを買ってしまった場合、誰かに目を付けられて結果鎮守府のお古と交換させられてしまう未来予知ができたのあって余計に買いたくない。被害は少ないほうのがいい、安さは正義と白露に言い聞かせる。それを聞く白露は、別に自分の買い物でもないのでどうでもよく「確かに羽がないとあ”あ”あ”あ”あ”って遊べないもんね」と、提督の力説に流されたのかそれ以上勧めてはこない。

「じゃあ、これレジ持ってけば…」

 商品棚の下にある、該当の品の在庫を手にするためにかがむ提督。

「ねぇ、提督」

 そんな提督の背中をつつく白露。

「ん、どうした?」

「これ見て」

 扇風機売り場の端に立っている宣伝用と思われる大きいポップを指さす白露。提督も品を抱え立ち上がりそれを覗く。

「…あれ?」

「これってさぁ、深海の戦艦さんだよね?」

 そこにあったのは、先ほどのお高い扇風機とともに並んで写っている戦艦棲姫の等身大ポップだった。扇風機に肘を掛け背をこちらに向け振り返るポーズ。服を着ているがその衣装に浮かぶ尻のラインが妙にエロい。『吸引力は伊達じゃない、扇風機も伊達じゃない』というキャッチコピーがそこには添えられている。

「…?」

「仕事してるんだ。にしてもスタイルいいねー」

「…、まぁ平和だからなんでもいいっしょ」

 深海勢については色々考えることを辞めた提督。平和ならそれでよし、それに勝る結論はない。

「ねぇねぇ提督。ゲーム買って」

「自分で買いなさい」

「またデートしてあげるよ?」

「タダ飯食いたいだけだろう、おまえは」

「バレたか」

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