その1
「支配人、今年も深海棲艦が勝利したようです」
「そうか…」
とあるホテルの一室、秘書と思われる人物がそのホテルの支配人に先日の艦娘対深海棲艦の野球大会の結果を報告している。とても神妙な面持ちでその報告を聞いている支配人、それほど彼女らは招かれざる客なのだろうか。
「いかがいたしますか?」
「…出来る限りの準備はするのだ、お客様であることに変わりはない」
「承知しました」
そう支配人が告げると秘書は部屋を後にする。扉が閉まると伏せていた顔を上げ立ち上がり、窓の外に顔を向ける。
「今年も来るのだな…」
やはり相当身構えている様子である。オーシャンビューの部屋、その水平線の先を見つめる支配人。ガラスに映るその顔、しかし先ほどまで秘書に向けていた神妙な面持ちから少し口元が緩んでいるようにも思える。その背にあるデスクの上には宴会場で楽しむ深海勢を写した写真がある。その中心には笑顔で収まっている潜水新棲姫の姿があった。
「明日から行くみたいだね、鶴ちゃんたち」
「ん、どこにだ?」
提督執務室で油を売っている瑞鶴。椅子に逆向きに腰かけてスマホを眺めている。
「熱海、野球の副賞のアレ」
「あぁ、あれか」
瑞鶴のスマホに『鶴ちゃん』こと深海鶴棲姫からメッセージが届いているらしい。その内容を提督に伝えている。
「この暑いのに大丈夫なのかアイツら」
「大丈夫でしょ、去年も行ってるんだし。それに暑いのより寒いほうが苦手らしいし」
「そうなの?」
「そうだよ」
理由はわからないがそうらしい。納得するしかない提督。
「てか瑞鶴、仕事は?」
「…」
シカト、スマホをいじり続ける瑞鶴。
「なんか言ってよ」
「お土産なにがいい? だって」
「えっとね、ときわぎの百年羊羹」
ノータイムでリクエストを伝える提督。
「りょーかい」
ポチポチ操作して返事をする瑞鶴。サボりの理由は結局聞けず仕舞い。
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「フム ヨウカンダナ」
ところ変わって深海島(めんどうなのでそう呼称することにした)瑞鶴からの返事をみている鶴姫。返事を返して机にスマホを置く。そして部屋を出て別室へと向かう。
「ヒメヨ ジュンビハデキタカ?」
「ウン ダイジョウブ」
そこにいたのはヒメコこと潜水新棲姫。明日の出発に備えて荷物を整えている最中だった。
「ハヤクアシタニナラナイカナ」
嬉しそうに飛び跳ねる潜水新棲姫(今後めんどうなのでヒメコで統一)
「ウム タノシミダ」
冷静そうに見えるが内心非常に心躍っている鶴姫。他でも明日の準備にいそしむ深海棲艦たちがいる。勝利のご褒美、そして味を占めた熱海の色々な味覚に観光。窓の外の海を見つめて目がキラキラしちゃっている。