こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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ご注意

この話から深海棲艦のセリフを通常表記として記載しています。
だってカタカナ変換面倒なんだもん!


その3

 いざ搭乗。30名程の深海勢がゾロゾロとボーディングブリッジを歩いていく。一般客は何事かといった感じでその行列を物珍しそうに眺めている。見られている側は特に何も気にはしていないが、子供で愛想のいいヒメコやモデル稼業をしている戦艦姫あたりは手を振っている。写真にも快く応じている。そんなこんなで割りとスムーズに搭乗は完了する。

 機内後部が異様な光景に包まれている。白い衣装と黒い衣装、深海勢の来ている服のせいかやたらモノトーン調で目に痛い。初めての飛行機、実のところ昨年は気合いで海路を行ったため乗ってはいない。

 その昨年の話だが、熱海に向かう際大勢で海を進んでいる最中、深夜当然のように道に迷いどうしたものかと悩んでいたところ、近くに漁をしている船を見つけ道を訪ねた。彼女らとしては何の気なしに聞きにいったのだが、漁船側からすれば当然そんなところに人がいるはずもない、いて魚くらいのものだ。結構なスピードで船に近づいてくる、徐々に血の気が引いていく船員。そしてそれが余りに白く美しい女性だったものだから「船幽霊だ!」と、関東近海の漁港ではしばらくの間で噂になったという。そんな反省もあり、今年はおとなしく空路を選んだという経緯もある。

 

 機内に話を戻そう。

 飛行機初体験の彼女らは、完全にお上りさん状態でキョロキョロと機内を見まわしたり窓にへばりついて外を眺めたり、CAさんに「写真撮ってもいいか」などなど、自由気ままにやっている。結構礼儀正しいのでCAもそう困っていない。

「まもなく離陸いたします。皆さまシートベルトをお締めください」

 お決まりの機内放送が流れてくる。

「これを締めればいいのか」

 腰元にあるベルトを手に取り眺めるワンコ。しかしアタッチメントの存在が見えていないのか、そのまま強引に体に縛り付ける。

「おねえちゃん、私のも締めて」

「うむ、ちょっと待っていろ」

 ヒメコから頼まれ、彼女の分も同様に体に巻き付ける。小さい分固定しやすい。

「あ…あの、お客様」

「ん、なんだ?」

 CAから声がかかる、そりゃそうだ。

「それはそのようにお使いになるのではなく、そちらの器具にはめて頂ければ大丈夫です」

 アタッチメントを指さすCA。

「お、なるほど。そういうことだったのか。すまない」

 素直に応じて、体に巻いていたベルトを取り外し正常な使い方へと戻す。ボンレスハムのようにぐるぐる巻きだったヒメコも普通の状態に戻る。

「それでは離陸いたします。機体が揺れることがございますので十分ご注意ください」

「ワクワク」

「…」

 楽しそうなヒメコに対して変な緊張をしているその他大勢。機体が徐々に加速して体に多少のGが掛かる。そして今まで体験したことのない浮遊感が彼女たちを襲う。

「おぉ!」

 わかりやすい驚き方を全員でする。

「浮いたぞ!」

「飛んだぞ!」

 そりゃそうだと提督がいればツッコんだかもしれないが、今ここに適切なツッコミ役はいない。敢えて挙げるのであれば前のほうで乗務員席に座り彼女らを見ているCAが心の中で「そりゃそうだ」と思っているくらいである。

 機体が徐々に高度を上げていく。それをとても楽しそうに窓の外を眺めているヒメコ。そしてある一定の高度に達した時、それは起こった。

「うおっ!」

 深海勢全員が一斉に声を挙げて耳を押さえる。そう「耳キーン」である。余りにも綺麗に一斉に耳を押さえたものだから、見ていたCAが吹き出しそうになっている。しばらくその画のまま固まる。

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