こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その4

 耳鳴りも収まった一同。一部飛行機酔いをしたり足が地に着かない感覚で顔面蒼白になっている者がいたりと、若干名CAにご迷惑を掛ける輩がいるがそれ以外目立って問題は起きていない。CAに飲み物を頼んだり外を眺めたり、アイマスクを付け熟睡している者もいる。

「すごーい、海があんな下にある」

 嬉々として窓の外を眺めているのはヒメコ。横では無表情ながらそれを嬉しそうに(?)眺めているワンコがいる。袖を引かれワンコ自身も窓に近寄って同じように外を眺める。

「本当に綺麗だな。私たちの棲む場所は世界一美しいのかもしれない」

「そうだよねー」

 自分たちが生まれ出でた場所を誇らしく思う。

「あ、あれは船かな?」

 相当な高度にあるにもかかわらず、海面に浮かぶ船を捉えるヒメコ。ケニアの方々より眼がいいのでそれくらい朝飯前である。いつまでも窓の外を眺めるヒメコ。体を席に戻して提供された飲み物を口にしているワンコ。

「あれ?」

 ヒメコが眼下の何かに気が付く。

「ん、どうした?」

 その声に反応し、改めて身を乗り出し窓の外を覗くワンコ。

「あれって…」

 

 

 …所変わって1時間ほど前の鎮守府港の堤防上

 

「よっしゃー、釣れた釣れた!」

「うおっ、早過ぎないか? ってか潜水艦がお前の針に魚くっつけてんじゃねぇのか?」

 提督と数名の駆逐艦、そして潜水艦たちが鎮守府の港で釣りに興じている最中である。稀に「今日のおかずは釣りなさい」と間宮さんからお達しが出ることがあり、提督はデフォで参加として他数名有志(暇を持て余しているメンツ)の艦娘と釣りをすることがある。

「そんなことするわけないでち、提督のセンスがないだけでち」

「ですってー、でっちの言う通り!」

 海面から顔を出したゴーヤとろーちゃんが今のところ丸ボウズの提督をからかっている。横ではビーチパラソルの下で読書に勤しむはっちゃんがいる。

「提督、晩御飯寂しいのは嫌ですよ?」

「わかってるっての。てか、潜れるなら獲ってきてくれよ」

「イヤです、今日はこの本読み切らなくちゃいけないんです」

 あっさり断られる。

「私たちは魚群探知するだけ、あくまで釣り勝負ですよ」

「そうそう、ほらほら早く釣らないと負けちゃうよー」

 でっちとろーちゃんの少し後ろ、しおんとしおいが顔を出してこれまた提督をはやし立てる。ボウズである事実は事実、悔しそうな顔で釣り糸を垂らし続ける提督。

「へっへーん、こりゃダブルスコアついちゃうかな? おっと、また引きが」

 横で釣っている深雪までもが提督を煽り始める。

「ちくしょう…」

 少し身を乗り出し海面を覗き込む提督。

「あれ?」

 深雪の後ろでその対決を眺めていた白雪がふと何かに気が付く。

「ん、どうした?」

「あれ…、深海さんじゃありませんか?」

「え?」

 海の向こう、遠くを指さす白雪。釣竿を置き体の向きを変え白雪の示すほうに目を向ける提督。しかし何も見えない。艦娘も人よりは眼がいいため凡人の提督より遠くの何かに気づくのは早い。

「…全く見えんぞ」

 手で日差しを遮って目を細めてみるがやはり何も見えない。他の艦娘たちもぞろぞろと後に続く。はっちゃんだけは気にせず読書を続ける。

「…あ、あれ水母さんだ」

 最初に気づいたのは敷波だった。

「水母?」

「うん、瑞穂さんとかと同じ水上機母艦の深海さん。テストさんと田舎が一緒の深海さん」

「へぇ…って、よくわかったな」

 気になる情報はあるにはあったが、さして自身の生活に重要ではないだろうと判断したためスルー。そして誰か判明したところで提督にはわからない、だって見たことないんだもん。ということで改めて目を凝らすがやはりさっぱりである。しかしそんな提督にも一つだけ分かったことがある。

「なぁ、あれって飛んでない?」

「飛んでますね」

「飛んでるね」

「飛んでるでち」

「飛んでますって」

 

 …時と場所は戻って機内

 

「あれ、水母おねえちゃんじゃない?」

「………」

「なんであそこにいるんだろう?」

 不思議そうにそれを眺め続けるヒメコ。席に戻り被っていた帽子を目深にして、ズーズーと飲み物をすすりだすワンコ。無くなったのでおかわりを頼んでいる。

 

「あれほど起こせといったのに!!!! 港湾め、熱海で会ったら覚えていろ!!!!」

 すごい数の深海ver水上機のじゅうたんに乗ってちょっと泣きながら海の上を駆けて行く水母水姫。音速は出ている。ソニックブームが引き起こす白波は、遠く鎮守府からでもしっかり確認することができた。

 

「海の珍走団でち」

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