こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その8

 …暫くの後

 

 ゾロゾロと大浴場から出ていく深海棲艦勢。貸し切りの時間が終わり「さぁメシだ」とはやるメンバーが先に風呂から上がって自室へと一時引っ込む。その後、やっと静かになったということで引き続き浸かり続けるワンコと、泳ぎ疲れワンコの横でグッタリしている水母水姫の二人のみ残っている。ちなみに潜水姫は「ゲームコーナーに行く」といって先に出ていった。

「これだ、これを待っていた…」

 その小さなつぶやきすら反響しそうなほど静かな大浴場。静けさを噛み締めているワンコ。

「あ”ー…」

 疲れきってのびてのぼせている水母。

「水母よ、ちゃんと自分の足であがるのだぞ。おぶってはいかぬからな?」

「あー…あぁ」

 返事なのかうめき声なのかわからない言葉を発する水母。一応意思確認をしたことで満足したのか、再び湯を満喫することに全力になるワンコ。

「ふぅ…、この海底温泉は落ち着く。やはり我々は海の底にいたからこそなのだろうか。しかしこれほどまでに豪勢だと日本一高いのではないか、このホテルは?」

 ふと不安になるワンコ。いえ、そうでもないです。

「いくら勝利の報酬とはいえ、ここまでもてなしてもらってなんの礼もせず去るのも礼儀が悪かろう。多少何か考えんといかんな」

 最近の若者、無作法な日本人と比較してもよっぽど礼節をわきまえ節度ある対応と考えをもっているワンコ。これが深海棲艦の美徳なのかと思うほどである。チップという文化が彼女らにあるかどうかわからないが、このもてなしの礼をせねばと一人考えている。

「…ここの水槽の魚たちは、このあと我々に食われてしまうのだろうか?」

 視線を水槽に向けるワンコ。その視線に驚いたのかそれとも言葉が通じたのか、水槽の中を泳いでいた魚介類が一斉にビクッとなってワンコの目の前から姿を消す。

「活きのいいフカの1~2匹でも差し出せばいいだろうか?」

 さらにビクッとして岩陰に身を隠す魚介類。

「まぁいい、女将にでも少し相談してからにしよう」

 そして再び目を閉じて身を湯にゆだねる。貸し切りが終わったことで少しずつ一般の客が入ってくるが、先ほどまでの喧騒はない。気になることはない。

「夕食はなんだろうな」

 

 椴法華鎮守府なう

 

「わーい、バーベキューだー!!」

「お前らが深海勢羨ましい羨ましいうるせぇからわざわざ買い出しに行って火まで起こしてもらってやってんだ。オレと間宮さんたちに深々と頭下げてから食え!」

 鎮守府グラウンドでは、突発の大バーベキュー大会が開かれていた。肉は提督が近所まで買い出しにいき、魚介系は一部有志の艦娘が全力で調達してきた。200名超分の肉、その日椴法華近辺の肉屋からは全ての肉が消え去った。

※漁業権を持っているので漁自体に問題はありません

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