こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その9

 いい加減のぼせてきたワンコも、結局のぼせて動けない水母を担いで風呂から上がる。扇風機の前に水母を放り投げ着替えを済ませ、意識が戻りかけた水母に何とか浴衣を着せて、これまた担いで大浴場を後にする。部屋に戻る道中ゲームコーナーが目に留まる。そこではヒメコがUFOキャッチャーの中身をカラにする勢いで全ての景品を吊り上げ、自身の後ろに山積みにしている光景があった。

「ヒメ、先に部屋に戻っているぞ」

 その呼びかけに気づいたヒメコが振り返る。

「うん、わかったー」

「702だぞ、間違えるなよ?」

 すでに視線はUFOキャッチャーに戻っていたが、後ろ手に「OK」のサインを出すヒメコ。それを確認したワンコは、水母を引きずり部屋へと戻る。

「集積地め、同じ部屋なら責任をもって回収しにこいっての…」

 水母の同室の集積地が迎えに来ないことをグチりながらも、人様のご迷惑にはなるまいと律義に自分で部屋まで送り届ける。水母の部屋へ辿り着くと、そこにはすでにルームサービスで出来上がっている集積地の姿があった。軽くキレて担いでいた水母を投げつけて扉を乱暴に閉めるワンコ。

「あれではせっかくのご馳走が食べられなくなるではないか。わかっていない、アイツはなにもわかっていない!」

 温泉好きというよりもう旅行大好きマナーお姉さんになっているワンコ。自室の前へと戻り鍵を開け、ようとするが鍵が見当たらない。小物入れの中、浴衣のポケット、胸の間、ありそうなところを全てまさぐるがやはりない。

「あ、あれ? どこかで落としたか?」

 周りをきょろきょろと見渡すが、やはり見当たらない。困り果てるワンコ。取りあえずフロントへ行こうと踵を返しエレベーターへ向かう。するとそのエレベーター側から一人の小さな男の子がこちらへと向かってくる。

「あの、お姉さん」

 その子はワンコの前で立ち止まり声を掛ける。

「ん、何か用か少年よ?」

「これ、落としませんでしたか?」

 少年の掌にはワンコの部屋の鍵が乗っていた。

「あ、これは私の部屋の鍵だ。少年よ、どこでこれを?」

「一階のエレベーターの前に落ちてました。部屋の番号も書いてあったので持ってきました」

「そうか、ありがとう。探していたんだ、とても助かったよ」

 微笑んでそれを受け取るワンコ。持ち主にそれを渡せたことで少年もうれしそうに微笑んでいる。

「何か礼をせねばなるまい。少年よ、何か望みはないか? そう大したことは叶えてはやれぬが」

 ここでも義理堅く、少年に対して礼をすることを提案するワンコ。

「えっ、いいの!? それじゃあどうしようかな…」

 さすがに悩む少年。しばらくの熟考の後その少年はワンコにこう告げる。

「えっと、それじゃあ…」

「言ってみよ」

 どんな可愛い願いがくるのか、しゃがんでそれを見ていたワンコが聞いた答えは…。

「お姉さんのおっぱい揉ませて!」

「おっ…………ぱ?????」

※ただいま放送が一時中断しております。今しばらくお待ちくださいませ

 

「ありがとうお姉さん!」

 やたら艶々した少年が元気よくワンコに手を振り去っていく。

「…5秒にしておくべきだった」

 両手をがっくりと床につき、せっかく流したはずの汗が体中につたわっているワンコ。そこに少年と入れ替わるようにヒメコが戻ってくる。

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「…どうもしていない。さぁ部屋に入ろうか…」

 

 椴法華なう

 

「加賀さん、なんでこんなに胸大きいのよー! 私に少し分けてくれてもいいじゃない!」

「…瑞鶴、あなた酔うたびに私の胸を触りに来る癖、直しなさい」

 バーベキューで酒の入った瑞鶴が、加賀に絡んでいる。瑞鶴は酔うと加賀にも遠慮なく絡み、そして胸を揉むという癖があったのだ。それはもう鎮守府では周知の事実でだれも驚くことは無いが、その光景を初めて見た提督は何とも言えない気持ちになっている。しかしそれもつかの間、赤城から目つぶしを食らいもんどりうっている。瑞鶴の後ろではそれを羨ましそうに眺める葛城の姿がある。

「あ…、あたしも揉んでほしい!!」

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