こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その10

 少年から大切なものと引き換えに得た自室の鍵を使い部屋に入る。オーシャンビューの部屋の中に長い夏の昼が終わる証、海に反射したオレンジ色の光が差し込んでいる。

「わーい、きれー!」

 ヒメコが窓に駆け寄りその光景を眺めている。それを見守りつつワンコも窓際の板の間にある椅子に腰かける。そしてその手には、先ほど風呂に入る前に渡された手紙があった。「支配人から」と言われたその手紙。それを目の前でピラピラさせ、まだ中を見てはいないが直感として「なんか微妙なことが書いてありそう」と眉をひそめるている。

「おねえちゃん、ごはんまだかな?」

「ん? あぁ、準備が出来たらホテルの者から連絡があるはずだ。もう少しだろう」

 ヒメコの質問に時計を見ながら答えるワンコ。

「海に行きたいんだけど、今からダメ?」

「よしなさい…。もうすぐご飯の時間だから」

 ヒメコの肩に手を掛けて制止するワンコ。「今から」というのはホントに今で、窓を開けて足を掛けている。ホテルの7階、海辺までどのくらいあるだろう、ここから飛び降りて直行するつもりだったらしい。

※深海さんにはそれくらいの身体能力はあるので問題ございません

 そんな会話をしていると部屋の電話が鳴る。立ち上がり受話器を取るワンコ。案の定ホテルの者からの食事の連絡だった。

「ヒメ、ご飯の準備ができたようだ。宴会場へ行くぞ」

「はーい」

 窓を閉め部屋の灯りを消し部屋を後にする。結局このタイミングでも手紙は読まずに後回しとなった。

 外に出ると数部屋離れた集積地水母組の部屋の前に横たわる物体が二つ。酔った集積地とのぼせのびた水母だった。食事の連絡が当然向こうにも入ったのだろうが、そんな状態のためまともに歩けない二人。バイオ〇ザードのはいずりゾンビみたいな状態で、徐々にではあるがゆっくりと前進してきている。あの状態だと宴会場まで何分かかるか、わかったものではない。

「おねえちゃん、あの二人どうするの?」

「知らん」

 置いていくことにした。

 

 鎮守h(ry

 

「仰角80度、打ちまーす!!」

 

 ズドーーーーーン!!!!

 

 爆音が暗くなった椴法華の空に響き渡る。そして数秒の後、上空に大輪の花が咲く。大和の46㎝砲に花火を装填して打ち上げている最中であった。

「かーぎやー」

「おーけやー」

「にーくやー」

 ホテルの次は花火師にでもなったのだろうか。酔った大和が非常に楽しそうに次から次へと上空に大玉を打ち上げている。尚、本来の46cm砲の最大仰角は45度。当然このために改修した戦後特注品である。

「あのさ、花火ってどこで調達してくるの?」

 肉を片手に提督が明石に問う。

「工廠科の花火部ってのがあるんですけど、そこで作ってます。お盆に毎年鎮守府主催の夏祭りやってるんですよ。4000発くらい上げてます」

「…へぇ」

 思い当たる予算書があった。

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