こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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これはいずれ投稿予定の話のプロローグです。
折角なので先行で投稿します。
※正式にスターとしたら前書きなども消去します。

慰安旅行は引き続き割り込みで投稿しますので話としてはそちらを追ってください。


第X話:その夜、鎮守府に降り積もった雪は赤く染まった(ただのクリスマスパーティー)
その1


「あーっ、疲れた」

 夜も更けて現在8時を回ったくらい。やっとのことで仕事のケリがついた提督が腕を伸ばし背を伸ばし、一日の仕事で凝り固まった体をほぐしている。

「はぁ、ってさみーなおい。さすが北国、南の人間には堪えますな」

 椅子から立ち上がりくるりと振り返り窓を開け外を眺める。窓灯りと街灯で照らされた鎮守府は、すっかり雪化粧しており今もしんしんと雪が降っている。流石に時間も時間なので誰も外にはおらず、みな建物の中でひっそりしていることだろう。数少ない冬型艦娘の時津風は、陽が落ちる頃まで犬の如く庭駆け回りグラウンドの雪で遊んでいた。無理やり付き合わされていた天津風が可愛そうである。

「さって、帰りますか」

 窓を閉めてデスクのスタンドライトを消す。反射式ストーブの火を落として戸締り火の元を何度も確認して、最後に部屋の灯りを消し、さて自室へと戻ろうと廊下へと出る。

「ん?」

 扉を開けると目の前に飛び込んできたいつもと違う映像、目隠しされていない限り必ず提督の目に入るであろう高さにそれはあった。

 

【こっち→】

 

 そう一言書かれた張り紙、そして提督をいざなうかのように矢印が書かれている。

「なんだこりゃ?」

 その張り紙をまじまじと見る提督。そして矢印のほうを見るとその先は曲がり角、そしてそこにも同じように「こっち→」と張り紙がしてある。

「何だこりゃあ、駆逐艦のいたずらか?」

 無視するわけにもいかない提督、仕方がないのでその矢印の示すほうへと歩いていく。取りあえず今のところは帰る方向と同じなので困ることはない。曲がり角を曲がると引き続き等間隔で同様の張り紙がしてある。下の階層へといざなわれ、とりあえず建物の外には出る。

「うー、さみっ!」

 自然と両手で体を抱きかかえる。風は穏やかだが非常にきれいな牡丹雪が降り続いている。さっさと自室に帰りたいところだが、追いかけてきた張り紙も気になる。次はどこかと探していると、それは張り紙ではなく雪に描かれていた。

 

【こっちこっち↑】

 

 提督の自室の離れとは真逆の方向にその矢印は向かっている。

「こうなりゃ最後まで付き合ってやる…」

 コートのポケットに手を突っ込み、力強く雪面に一歩を踏み出す、そしてコケる。

 雪の精のいたずらだろうか、なんてロマンチックなことを一瞬考えもしたが、ここにはそんなロマンチックなものは一人もおらず、いたずら好きの座敷童なら探さずともごまんといることを思い出す。暗くなった業務棟や間宮を通り過ぎ、ものの数分歩いて矢印は最後の目的地を示す。

 

【ゴール】

 

「ありゃ? ここって…」

 提督の目の前には、艦娘たちの宿舎があった。

「何だああいつら、この寒いのに呼びつけやがって。寒いし腹減ってんだから手短にしてくれっての」

 どうせロクなことじゃないだろう、そう考えながら宿舎の扉を開く。すると…

 

 パァン!

 

       パァン!

 

  シュポン!

 

「メリークリスマース!!」

 見計らったかのように、クラッカーが鳴り響きシャンパンのふたが飛び、そして雪が薄っすら積もった提督の頭に紙吹雪が同じように積もる。

「…は?」

「待ってたよ提督、さあ始めようか!」

「今晩は徹夜覚悟だよー!」

 そう、今日は12月24日クリスマスイブ。世間のカップルがこぞってイチャイチャする日でもなければ数日後に開かれる祭典のために必死になって原稿を間に合わせようとレッドブルをがぶ飲みして徹夜する日でもない。イエス様大爆誕をお祝いする日である。そしてこのお祭り大好き椴法華鎮守府も例外ではない。野球大会に勝るとも劣らない艦娘どものバカ騒ぎが、今宵幕を開ける!!

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