こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その4:終

「間宮って?」

「食堂です。給糧艦の間宮さんが経営されているのでそのままお店の名前も間宮なんです」

「なるほど、美味しい?」

「サイコウです」

 親指を立ててメガネをキラつかせ、それ以上も以下もない答えを返してくれる大淀。

「じゃあ混んでるかな」

「もうピークは過ぎてますから、すぐに座れると思いますけど」

 左腕の腕時計を確認して繁忙時間帯を判断している。

「繁盛店のラーメン屋みたいなこと言うね」

「うちの鎮守府の食事って、間宮さん以外にもあるにはあるんです。外に食べに行ってもいいですし宅配のお弁当もあるんですけど、味が天と地ほど違うので、結局みんな間宮行っちゃうんですよね。業者変えようかなぁ。そうだ提督、まず美味しい仕出し弁当の業者探してください。どうせヒマなんですから」

「僕、ヒマ確定なの?」

 着任早々ヒマが確定しているらしく、雑用チックなことを大淀から仰せつかる。

「間宮さんがこの前あまりに忙しくて、せめて週休二日にしないとハンガーストライキ起こすぞって私に泣きついてきたので、さすがにほ放っておくわけにもいきません。私たちの胃袋は間宮さんに掛かっているんですから」

 こんな何気ない話がきっかけで提督が動き、鎮守府内の食に関する自由度が一気に跳ね上がった。これにより間宮は大繁忙から脱却し、ゆとりある経営ができるようになったのは割と近い未来のお話。いずれ顛末のご説明はちらほらと。

 

 大淀の予想通り間宮はすぐに席に着くことができ、30分ほど食事をして店を出る。なお、当然支払いは提督が行った(遅刻した罰ですとのこと)ということは、全艦娘におごるまでこの罰は続くということなのだろうか、背筋が凍り付く。そしてその後は鎮守府の全施設を案内してもらい現在提督執務室へと落ち着く。真新しい、とはいえない前任者の使っていたお古の椅子と机。それでも物はいい、肘あてのある椅子にどっしりと腰を掛ける。

「ふぅ、広いなぁ。今までいた鹿屋の基地と比べても倍以上あるよ」

「今はここが全国一の拠点ですからね。ほとんどの艦娘の母港もここになっていますから」

「いない娘もいるの?」

「はい、任務で別の鎮守府に行っている娘も多少います。入れ替わり立ち替わりという感じですね、そう長期間には及びません」

「なるほどね」

 資料をめくりながら大淀に返事を返す提督。

「先ほどご説明した通りですが、現状当鎮守府は戦闘終結につき一部施設は閉鎖されています。それにより色々戦時中と鎮守府内のシステムも変更されています。科に関しては下記の通りです」

 

庶務科

海防科

戦略科

工廠科

給糧科

救護科

音楽科

 

「音楽科? 吹奏楽でもやるの?」

「いえ、一部熱狂的な艦娘の要望で設立された科ですが、コンサートなんかの外回りが主の、まぁ趣味です。いい収入源になってはいますが」

「…」

「科についてはおいおいご自身で時間のある時に見て回ってみてください。そのほうが早いと思います。それと提督業で一番の変更があるとすれば、秘書艦というシステムが廃止されています。あれも戦意高揚を目的としたところもありましたので、現状不必要かと思われます」

「そうだね、負担にもなるしね」

「ですので、何か御用があるときは庶務科にご連絡いただければと思います。なお、それぞれの科には科長がおりますので、その者に話を通していただければ業務的にはスムーズにいくと思われます」

「庶務科の科長さんは?」

「私です」

「でしょうね」

 想像はついていたらしい。

「それでは、私も一旦失礼します」

「はーい、ありがとう」

 一礼して部屋を後にする大淀、一人広めの部屋に残される提督。そして大淀と入れ替わるように扉をノックする音が聞こえる。

「はい、どうぞ」

 扉が開くとそこには、先ほど約束していた六駆の4人がいた。

「司令官、持ってきたわよ」

 巨大な横断幕をずるずると引きずりながら部屋に入ってくる4人。

「ああ、早速ありがとう。ってホント大きいね」

「いったでしょう、大きいって。じゃあどこに飾ろうかしら」

 部屋の中をきょろきょろと見回す。そして4人の意見が一致した場所にそれは飾られる。

 

「ん? 何だあれ?」

 外を行きかう艦娘が足を止めて建物の上層を見上げる。そこには督執務室があるわけだが、その窓の下にデカデカと飾られる六駆制作の歓迎横断幕。「Welcone 司令官!」と書かれている。

「綴り違ってるんだよなぁ…」

 ちょっとした学園祭のようになってしまった。彼女らが飽きるまで10日ほど、それは飾られたままだった。撤去は提督一人で行ったとさ。

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