こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その3

 既に10分ほど時間が経過しただろうか、提督と神風が先ほどからそのままの状態で硬直している。その空間には変な間合いが生まれてしまっている。提督が一歩前に踏み出すとすぐに隠れてしまう神風。歩を一歩戻すとまた見切れ、一歩踏み出すとまた消える。しばらくは面白くてからかっていた提督だが、妙な緊張感が漂い始めてからは双方一向に動こうとしない。「何をしに来たんだ」というツッコミは当然とうの昔に心の中でしている。

「このままだと千日戦争になっちまう…」

 意を決した提督はゆっくりと提督室へと身を引く態勢に移行する。一歩また一歩とあとずさり。それに合わせて少しずつ神風も体を現す。

「俺、殺されんのかな?」

 殺気でも感じ取ったのかぼそりと呟く提督。

「今だ!」

 素早く神風の隙を見て体を部屋の中に収め扉を閉める提督。扉の向こう少し離れた場所から「ちぃ」という悔しそうな声が聞こえてくる。やはり殺りにきていたのか、ゾッとする。

「どれ…」

 しばらく扉の前で身をかがめ耳をそばだてている提督。コツコツという神風のブーツの音がしたと思ったら止まり、またしたと思ったらまた止まる。そんなのを繰り返していると、いつからか音が止む。諦めてどこかへ行ったのだろうか、そんなことを思いながら体を起こし扉から離れる。すると次の瞬間…

 

 ズドォン!!!!

 

 激しい爆発音とともに今まで身を寄せていた扉が窓を突き破り外まで吹っ飛んでいく。もし提督がそのままの格好であったのなら、扉同様外まで吹き飛ばされ全治数か月ということになりかねない状況だったのは言うまでもない。

「えぇ…」

 爆煙を爆音、耳がキーンとしている。煙が収まるのを待って廊下に再度戻る。そこには既に神風の姿はなく、その音になんだなんだと人が群がってくる。

「どうなさったんです、司令?」

 真っ先に声を掛けてきたのは旗風だった。

「あ、旗風。いやそれがね」

「もしかして姉さんが何かしましたか?」

「あれ? なんでわかるの?」

 一部始終を見ていたのだろうか、誰が誰に何をしてどうなったのかを理解している旗風。不思議そうに尋ねる提督。

「えぇ、それが昨晩から姉さんの様子がおかしくて。まぁいつものことではあるんですけど、昨晩に関してはいつも以上におかしくて。一晩中九五爆雷の改造をしていて、イヤな予感がしたので提督にご報告をと思いまして、ここにきたら爆煙が…」

「ああ、うん。一歩間違ってたら次の提督着任してたかもね、うん」

 殺りに来ている、ということを大体把握した提督。

「と、とりあえず神風探すことから始めようか、ここは後でどうにかするから。殺されちゃたまらないし」

 ギクシャクしながら旗風にそう告げる。

「あ、いえ司令。姉さんそういうつもりではないと思います」

「え? じゃあ、どういうつもり?」

 爆雷までこさえて怪しい長物まで携えてスキをうかがうような行動。殺しに来ていると考えないほうが難しい。

「ちゃんと火薬の量は減らして致命傷にはならないように調整していた痕跡はありますし、それに…」

「そこ重要じゃないよね」

「おそらくですが、司令にチョコをお渡しになりたいのでは、と」

「はい?」

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