「姉さん、ここのところヒマがあれば間宮に入り浸って、というか強引にヒマを作って」
「最近のサボり癖はそのせいか…」
思い当たるふしがある提督。旗風が続ける。
「間宮さんからお菓子の作り方を教わっていて。そして夜には部屋で爆雷の手入れをしたり日記には『司令官司令かぁ~ん』とノートを埋め尽くすほどに書き込んだり。そういった一連の奇行を繋げると…、恐らくそういうことなんです」
ところどころ神風の真似を交えて説明してくれる旗風。妙に生々しくて似ているので、若干引く提督。
「もうちょっとストレートな愛情表現はないのかな、嬉しいは嬉しいんだけど…」
「とにかく、このままだと司令がチョコを受け取る際には、その身が形を保っているか心配です。私も協力しますので、なんとか普通に受け取りましょう!」
姉の奇行を案じ、提督の身を案じ、出来ることなら旗風からもらえたらなぁ、なんて考えている提督。しかしその当人そんなつもりは一切ないらしく、提督の手を引いて建物の外へと神風を探しに行く。
「いや、なんで? 向こうからくるの待ってればいいじゃん」
「で、どこにいるか見当はついてるのか?」
執務棟の外に出て周りをきょろきょろ見渡す提督。
「はい、恐らく射程圏内に隠れていると思いますので。あ、ほらあそこに」
即座に旗風が指をさす。その先には先ほどと同じように建物の陰からチョコの包みが見切れている神風の姿があった。
「アレでチョコを渡す、と考えるほうが難しいと思わないかね?」
二人の視線が神風のほうへと向く。すると気づかれたと察知したのだろう、見切れていたチョコも姿を消し、どこか走り去る足音が聞こえる。
「あ、待って姉さん! 司令、追いかけましょう」
後を追う旗風。全速力の旗風に対しどうにも歩みに力が入らない提督。とぼとぼ旗風の後を追い、先ほど神風が消えた建物の角へと差し掛かる。そこには見失ったといわんばかりに左右を見渡す旗風。しかし提督はあるものに気が付いていた。
「いませんね、流石神風型、足が速いです」
「なぁ旗風」
「はい?」
「それ」
指をさす提督。数メートルも離れていないその指の先にあるものは一つの段ボールだった。人が一人入るには十分な大きさ。蓋は開いていないが底面側が開いている。そこからはみ出ているあのチョコの包み。
「…スネイク?」
「どこで覚えたの? そしてちげーし」
若干心配になる旗風のボケ、天然であることを願う。それはおいといて段ボールに近づく提督。すると、手を入れるところの隙間からこちらを見ているのだろう、ガサガサッという音とともにあとずさりする段ボール。
「段ボールが動いた!?」
「お願いだからわかって、ねぇ」
悲しくなりそうなやり取りをしていると、その隙に一気に距離を取る段ボール、というか神風。
「アッ、逃げた!」
「かみかぜー、くれるんなら早めにくれよー。仕事できないんだー」
逃げ去る段ボールに声を掛ける提督。しかし留まることなく颯爽と次の曲がり角へと消えていく。第二ステージへと移る。