こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その5

段ボールの行方を目で追わずとも鎮守府は辺り一面雪景色。まだ足跡も少ない朝であるため、簡単にその逃げる先はわかってしまう。旗風が必死に追うのをしり目に、提督は「あっちか」といった感じで冷静に神風の後を追う。

「ね、ねえさんどこへ逃げたのかしら」

「はたかぜー、こっちだぞー」

 少し先の旗風に声を掛ける提督。

「え? なんでわかるんですか?」

「まぁ…、勘だ」

 足元を見ろというのもなにか情緒にかけるというかなんというか、このシチュエーションを楽しんでいる旗風に申し訳ないので止めておく。また一つ曲がり角を曲がるとその視線の先には脱ぎ(?)捨てられた段ボールが転がっていた。

「あっ! あれはさっき逃げていった段ボール!」

「さすがに無理と悟ったか」

「提督、もしかしてこの中に姉さんがいたのでは?」

「うん、やっと気づいてくれた?」

 両手を口に当て「ウソ、私の年収…」的に女の子らしく真剣に驚いた表情で提督を見る旗風。かわいいんだけどなんか悲しい提督。

「じゃあ…、この辺りに身を潜めていることになりますね」

 辺りを見回して神風を探す旗風。しかしその隣で提督は既に神風をロックオンしている。「なぜ見つけられないのか」と旗風に問いたいところだが、恐らく何か艦娘専用のステルスでも発動してるんだろうそうだろうと、彼女が神風を見つけるのを黙って待っている。

「あっ! あそこ!」

「はいせいかーい」

 指をさす旗風、答え合わせをしてくれる提督。その先には誰かが作ったであろう巨大な雪だるまがあり、その後ろに隠れている神風自身を捉えることはできていないが、毎度おなじみチョコの包みだけがガッツリ見切れている状態。サクサクと雪を踏みしめその雪だるまに近づく二人。

「…う」

 雪だるまからうめき声がする。よく見るとちょうど目の辺りがくり抜かれておりこちらを見ることができる状態になっている。近づいてくる二人に驚きつい声が出てしまったのだろう。しかし先ほどの段ボールとは異なり動くことは叶わない。

「さて…」

 雪だるまの前に仁王立ちする提督。別に神風に説教するわけでも何でもないのだが、やたらと威圧感がある。

「神風、そこにいるんだ…」

 そう言いかけた瞬間だった。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 叫び声と共に雪だるまの顔を貫く神風の右ストレート。そんなものが飛んでくるなんて夢にも思っていない提督、高さも丁度いい感じにアッパーコースで顔面に飛んでくる。左頬に突き刺さる右。吹っ飛ぶ提督。

「おごっ!!」

「し、司令!?」

「来ないでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 雪かきで積まれていた雪山に突き刺さる提督。駆け寄る旗風逃げ去る神風。

「ご無事ですか、司令?」

 手を引いて起こしてくれる旗風。

「あのさ、ホントに神風は僕に好意があるのかな? 殺意の間違いじゃなくて?」

「呪詛の類は書かれていなかったので、恐らくは…」

 最初からだったけど余計心配になってきた。業務で鎮守府内を歩いている他の艦娘からは「また提督がバカやってる」といった目で見ている。

「提督、お仕事しないでなにしてるです?」

 すれ違った超着込んだ越冬モードろーちゃんに尋ねられる。

「したいんだけどね、その前に片付けなきゃいけないお仕事があるの…」

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