こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その6

 訝しんでいるろーちゃんを言いくるめその場を後にし、逃げた神風を追うことを再開する提督。今回の場面だけ切り取ってみれば完全に「提督が神風を執拗に追い回している、被害者は神風加害者は提督」という構図が浮かび上がる。そんな誤解が生まれる前に何としてでも受け取るものを受け取って日常に戻らねば。決意も新たに雪面を踏みしめ歩き出す提督。ろーちゃんにかまっていた間旗風は既に神風を追いかけており一歩先を行っている。恐らく一番楽しんでいるのは旗風、雪がこんもりと積もった植え込みに隠れたふりをして、その視線の先にある神風を捉えている。

「あ、司令。ご無事でしたか?」

「うん、死にゃしないけど風邪はひきそう…」

 押っ取り刀で追いかけたものだからコートも着ず、さらに雪山に突き刺さって雪まみれの提督。氷点下の刺さるような空気が身に染みているのは言うまでもない。旗風もいつもの格好に見えはするが、インナーはしっかりと着込んでいるらしい。先ほど提督が寒くないかと尋ねたら「ヒートテック着てますので」だそうで。

「司令、姉さんはあそこです」

「どれ…、え?」

 旗風の指さすその先、そこには提督がどう頑張っても立ち入ることのできない建物があった。そう『女子更衣室』だ。そもそも鎮守府に男性が提督しかいないので、男子更衣室なるものは存在しないため『更衣室=全て艦娘のもの』ということにはなるのだが。

「卑怯者め…」

「どうします司令?」

「いや、どうするもなにもオレじゃ入っていけないし。入った時点でもうこの鎮守府にいられなくなるけど、それでもいいなら入る」

「それでは仕方がないですね。では私があそこから姉さんを追い出しますので、出てきたところを司令が捕まえてください」

「なに、神風って屏風の中の虎なの?」

 割りとキレのあるいいツッコミをしたと思った提督だが、旗風はそれ完全にスルーして更衣室へと向かう。少し悲しい。テクテクと歩いて更衣室へと入っていく旗風。何を声に出すわけでもなく無言で扉を開きピシャリと閉める。しばしの沈黙、何も聞こえてこないことが少し不思議になる提督。数分が経過する…。

「あっ! こら姉さん大人しくしなさい! いい加減お縄につきなさい、外で司令がお待ちかねですよ! あっ、しまった!」

 ドタバタと物音がする、ガタガタと何か物が崩れる音がする、ビシバシと誰かが何かで何かを叩く音がする。

「最後、なんの音?」

 中の様子をうかがっていた提督、するはずのないというよりは「なぜ?」と言いたくなる物音を聞いた次の瞬間、更衣室の扉が開いて飛び出してくる神風の姿を捉える。

「邪魔しないで、はたかぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「あっ、こらまて神風!」

 まさしく神風の如き速さで逃げていく神風。港のほうへまっしぐら、当社比三倍のスピードで消えていく。しかし旗風はどうしたのだろう。神風を追いかけたいがそっちも気になる。すると更衣室の中から何かごろりと転がり出てくる。

「し、司令。旗風不覚を取りました、申し訳ありません」

 なぜか縛り上げられた旗風がそこにいる。そうか、あの音は縄を打つ音だったのか、今合点がいった提督。胸を強調される縛り方で妙にエロい。ちょっとそのまま見ていた気もしたが、ことを収拾することを優先する提督。ここで旗風脱落。この勝負いよいよ提督と神風のタイマンに持ち込まれる。

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