翌朝
「ぐおおおおおおおおおお」
「…何だ朝から騒々しい」
昨晩の提督の叫び声に似た声を今度は秋雲が出している。その声で目を覚ます提督、目がまだ半開き。
「き、記憶がないぃぃぃ……」
頭を抱える秋雲。別に二日酔いというわけではないらしいが、深酒がたたり完全に昨晩の飲み始めてからの記憶がない。その間自分が一体何をしでかしたのか、不安でたまらなくなりこうなっている。
「安心しろ、何もしていない。見てみろその服装、昨日出かけた時のまんまだろう?」
やかましいのを黙らせるため、提督がさっさと指摘する。
「…あっ、本当だ」
自身の格好を見て我に返る秋雲。それで最悪の事態にはなっていないことを悟りホッと一息つく。
「…」
「どうした?」
動きが怪しい。体中に手を回したりスカート越しに何かを確かめる秋雲。
「よし、下着もちゃんと履いている。ブラのホックも外れてない」
「だからなにもしてねぇっての!」
「やーごめんごめん。久しぶりに羽を伸ばせたもんだからつい調子にノっちゃって」
「二度とおまえとはサシで酒は飲まねぇぞ」
「ホントゴメンってば。あー、メイクそのまんまで寝たから肌ガッサガサ」
鏡を見て今の最悪な自身の顔を見て呟く。
「シャワー浴びろ。あぁ、流石に女子はあのスペースじゃ着替えや化粧は無理か。ちょっと待ってろ、先に浴びるだけ浴びて下行って飯食ってくるから。その間に入っとけ」
「ご、ごめんよ…、気ぃ遣わせて」
「気にすんな」
秋雲とのやり取りをさっさと済ませ、着替えをもってバスルームに消える提督。5分ほどでシャワーを済ませ着替えた状態で出てくる。
「じゃ、オレ下行ってるから。もし来るならキー忘れんなよ。来ないなら部屋戻ってもいいか連絡だけよこせ」
そういって部屋を後にする提督。
「はい、提督」
鎮守府にいるかのような敬礼で提督を見送る秋雲。扉が閉まり敬礼していた手を下ろす。
「紳士だねぇ」
そう一言呟いて、スーツケースから着替えを漁りバスルームへと向かう。
「あぁ、バイキングか。ありがたいな」
下層階のレストランに着いた提督。まだ少々時間は早いが、このイベント目的の宿泊客が多いせいか結構ある席の大半が埋まっている。秋雲が来ることを一応考慮に入れて、途中確保したトレイを置いて何とか二人分の席を確保する。
「さてと…」
自分の分のトレイを持ち、料理の並ぶカウンターへと向かう。
45分後
「アイツくんのか? 来ねぇのか?」
随分と待たされている提督。さすがに人も多くなってきたので、これ以上席をキープし続けるのも気まずい。スマホを手に取り秋雲にメッセージを打とうとしたところ、声を掛けられる。
「お待たせ」
「ん、やっと来た…」
当然その声の主は秋雲だろうと、振り向いて確認する。するとそこには見慣れぬ美少女が一人立っていた。
「…誰?」
正直にその女性に問う提督。
「秋雲だよ! あんたんところのあ・き・ぐ・も!」
叫び声がちょっとだけ食堂内に響く。何事かとそれを見る他の客。しかしその視線はその声に反応して向けられたものはわずかで、ほとんどはそこにいる美少女に向けられる羨望のまなざしだった。提督が気づかないのも無理はない。昨晩までの秋雲とは打って変わって、まずそもそも髪を下ろしている。そして完璧なメイクと一張羅、艦娘時の制服姿からは想像もつかない変貌ぶりである。
「…」
声が出ない提督。
「なんだよ?」
いつもの顔、ジト目に戻って返事をする秋雲。
「い、イヤ…。化けるなって思って」
「でしょ? どう、秋雲さん見直した?」
怒るどころか気をよくした秋雲は、くるりと一回転、スカートを翻してみせる。その姿はまさに姫、ギャラリーもうっとりしている。
「今ならマジ抱ける」
真顔で応える提督。そしてその回転の勢いそのまま、提督の頭をひっぱたく秋雲。