こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その12:終

 提督が辿りついたのはコスプレ広場だった。この寒空の中色とりどりの衣装を着たコスプレイヤーがそこかしこではしゃぎ写真を撮ったり撮られたり、良い匂いのする空間なのかと思い来てみたが、現実は少し違った。

「なんだあの人だかりは…」

 一人の女性コスプレイヤーに対して数十人のカメラマンが、シャチが追い込み漁をするかの如く周りを取り囲んでひっきりなしにシャッターを切っている。少しは恐怖を感じてもよさそうなものだが囲まれている女性は露ほども嫌な表情をせずにリクエストに応え写真を撮られている。

「…なんだよ、アレは」

 その囲みの一つ一つを見ていると、その中に明らかにアングルの異なる箇所から撮影している者がいる。そう、俗にいう『ローアングラー』である。気づいて制するコスプレイヤーもいるが、狡猾に撮影している不届きものもいて、撮影を許してしまっている人もいる。そんなのを見てしまった日にはさすが正義の味方の鎮守府の長、わざと足を引っかけるなどしてその撮影を妨害する提督。転げたローアングラーは気付かれたコスプレイヤーとその取り巻きなのか、親衛隊のような存在に連行されスタッフに突き出されている。

「天罰じゃ」

 物見遊山で来てみたが、そんな正義にもとる行為を見てしまったがために、臨時ローアングラー専用駆逐スタッフになっている提督であった。

「なんかすげぇ世界だな。オレにゃ遠い存在ばっかりだわ。ま、今年限りって考えれば社会勉強にはなったな」

 一通り会場内を見て回った提督。さて戻ろうと思ったところ、一際大きい囲みを見つける。そんなにきれいな人でもいるのだろうか。どうせ最後だと思い、ちらっと覗きに行く。

「どれどれ」

 数十人が取り囲むため近づくことは叶わないが、十分に顔を視認することのできる距離まで近づく。そしてその円の中心にいるコスプレイヤーにピントを合わせる。

「あぁ、確かに綺麗な人だな。にしても結構な衣装着てるな」

 やたらと装飾の多い豪華な衣装。それでいて際どい部分は結構際どく、オタクを引き寄せるにはこれ以上にないような衣装。なんであるかは当然提督にはわからないが、これだけ人を集める理由は何となく理解できた。

「確かにスタイルもいいし、それを見事に強調する衣装だし、それにどこかで…、どこかで!?」

 冷静にそのコスプレイヤーを品評していたが、急に何かに気づく提督。

「…あ”」

 変なところから声が出る提督。

「すいませーん、目線お願いします」

 それと同時に提督の目の前でかがんでいるカメラマンがそのコスプレイヤーに声を掛ける。

「はーい」

 そのリクエストに応えるコスプレイヤー。そして視線がそのカメラマンのほう、高さにすると立っている提督とほぼ同一、偶然にも視線がぶつかる。

「あ……………」

「…」

 双方固まる。しかしそんなものおかまいなくシャッターは切られ続ける。見事なまでのポージング、瞬き一つせず撮影され続けるコスプレイヤー。

「…か し ま さん?」

「…」

「すいません、カウント取らせていただきまーす。10…9…」

 唐突に始まるカウントダウン。それがなんであるかは提督にはわからない。二人にとって永遠とも思える長い長いテンカウント、提督と鹿島は同じ表情同じ格好のままそのカウントダウンを終わりまで聞き届ける。

 

 

 

 

 ―ガーンターン―

 

 年明けて鎮守府提督執務室内

 

「あのね、プライベートなことだから多くは言わないけど。もうちょっと節度をもってというかなんというか…、鎮守府には絶対にばれないようにしてね? あと、過激すぎるのはやめてね? 提督ちょっとビックリしちゃった、夢に出ちゃったよ…」

「…はい、すみません」

『通販専売』という鹿島のコスプレロムを見ながら、説教というかちょっとした注意をしている提督。聞くところ秋雲の本の売り上げよりよっぽどいいらしい。本気で鎮守府公認コスプレ写真集を考える提督だったが…

「職失うかもしれないし、止めとこ」

 

 

※艦娘は商売道具ではありません

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