その1
「しーごーとーゴトゴト~♪」
朝の鎮守府、執務棟の廊下に明るい歌声が響いている。腕に何かを大事そうに抱えて足取りも軽くある部屋に向かっている。鎮守府唯一のスウェーデン艦のゴトランドであることは言うまでも無かろう。目的の部屋へ到着したゴトランドは、空いている片手でネクタイをキュッと締め直し扉をノックする。
「コンコン、提督、いる?」
言わなくてもいいだろうに、可愛く自分の口でもノックしているように中にいるであろう提督に呼び掛ける。
「あぁ、どうぞ」
「はぁい」
ガラリピシャン、一気に開けて一気に閉め小走りで提督の元へと駆け寄るゴトランド。
「おはよう提督。はいこれ」
そういって抱えていたものを提督に手渡す。
「あ、これ。無いと思ってたワイシャツだ。ゴトが持ってたの?」
ゴトランドが持っていたものは、汚れ一つなく真っ白でアイロンまでピッチリかけられた提督のワイシャツだった。
「うん、前部屋に行った時に脱ぎ散らかされてたから、勝手に持ち帰って洗濯しちゃった。ゴメンね?」
「テヘ」と字幕が付きそうな表情でそう答えるゴトランド。完全に彼女ヅラである。
「提督は提督なんだから、ちゃんとした格好しないとみんなにバカにされちゃうよ? わたしそんな提督、見たくないし…」
籍を入れた覚えもなければ告白した覚えもされた覚えもない。それなのになぜかここまで尽くしてくれるゴトランド。最初のうちは少し「悪くない」と思っていた提督だったが、最近ちょっと不安が芽生え始めている。
「あ、ありがとう」
若干ひきながらもワイシャツを受け取る提督。しかしそれを提督自身ゴトランドに頼んだわけでもなく、しかも自分が部屋にいるときにゴトが訪ねてきた、シャツを持ち帰ったという記憶はなく、勝手に忍び込んで勝手に持ち去ったということに気づいてしまう。
「じゃあ提督、あたし仕事に戻るね。お昼は…、また呼びに来るね?」
「う、うん…」
そういうとまた小走りで駆けていき、ガラピシャンと勢いよく扉を閉めて部屋を後にするゴトランド。廊下からはまた「しーごーとーゴトゴト~」と機嫌の良さそうな歌が聞こえてくる。それを見届ける提督、嵐が一瞬で通り抜けたような感覚に襲われる。同時に萩風に怒られながら逃げている嵐の声が外から聞こえてくる。
「おかしいな、部屋出るときは鍵かけてるはずなんだけど…」
「あらしー! あたしの大切なシュークリーム食べたでしょー!!」
「賞味期限近かったんだからいいだろう、もー!」
この話は、ゴトランドがいかに提督に対して彼女ヅラして、そして提督に勘違いをさせているかを観察するドキュメンタリーである。