ゴトランドは言わずもがな海外艦であり、この鎮守府において海外艦は特定の科への配属はされないルールとなっている。戦時中ならまだしもすでに戦争は終わり基本的には海の世間の安全を守る任務に就いている艦娘。海外艦もその任に当たることはあるが、自国へと行き来することが多く、その流動的な状態から配属はされず、科として正式に発足はしていないが『海外科』として、忙しい部署を手伝うなどが主な任である。ちなみにロシア組はウォッカ作りに励んでいる最中、密造ではないので御安心を。
「ふんふーん」
鼻歌を歌いながら何かしているゴトランド。そこは明石の工廠の横に建てられた小さな小屋の中。鼻歌を表現してみたはいいが、そんな小さな音はかき消すほどの爆音が部屋の中に響いている。
「ふぅ…。よし、こんなもんかな」
爆音が止まる、そして手に持っていた工具を床に置くゴトランド。音の主はチェーンソーだった、コメリで5万弱の本格派。目の前にはその犠牲となったであろう大きな木材がある。
「んーと、次のパーツは…」
設計図片手に次に切り出すパーツの目算を立てている。彼女は今提督と二人で寝ることができるダブルベッドを製作中なのだ。ここはゴトランドが自分一人で作り上げた『ゴトの家具屋さん』という名の工廠科の一部。この小屋も彼女の手作り、檜のいい香りが漂っている。スウェーデン恐るべし、イ〇アの源流ここにありと言わんばかりである。
「んー、組み立ては部屋に入れてからすればいいけど、この長さだとあの扉通らないかなぁ、うーん」
設置場所は提督執務室の横にある仮眠室のようである。すでに先日忍び込んだ際採寸は済ませてあるため、そのサイズと照らし合わせてのパーツ作成。
「うん、ベッドのサイズ小さくするわけにはいかないから、扉のサイズを大きくすればいいんだ、よし!」
斜め上の結論が出て、再度チェーンソーを手に作業に取り掛かるゴトランド。エンジンに火が入りまた爆音が轟く。顔にはしっかり防音用のヘッドホンと粉塵防止のゴーグルが装着されている。ちなみにゴトランドはことあるごとに「いい木材を探しに行く」と言って鎮守府から飛び出し、帰ってくるときには大量の木材をひっぱって帰ってくる。「紀州のいい杉の木があったの」と嬉々として提督に報告するわけだが、当然のように領収書を突き付けられて提督はハゲかけている。といっても、これも鎮守府の一商売。とてもいい値段でゴトランドの作った家具は販売されていて余裕で元は取っている。ゴトランドの「生産者は私です」という農家にありがちの写真付きというオプションがあるため、値段は常に跳ね上がっている。