こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

85 / 109
その3

 昼下がり、12時を回ったところ…

 

「はい、あーん」

「あ、あーん…」

 昼休み、間宮での一コマ。宣言通り12時ピッタリに提督を呼びに来たゴトランド。そのまま間宮へと直行して昼食を二人でとっている。

「どお? 美味しい?」

「う、うん…」

 視線が痛い、陰口が辛い、空気が嫌だ、なにより間宮さんに申し訳ない。ここは『間宮』なので当然「間宮さんが作った料理」が並んでいるわけだが、それをさも「自分が作りました」と言わんばかりに口へ運んでくるゴトランド。勢いよくどんぶりからかきこみたい提督だったが、一口分ずつゆっくりと噛み締めさせられているので、なんか食った気にならない。隣の席ではいつ飛び掛かってやろうかと凄い目で二人を睨んでいる金剛がザル蕎麦をすすっている。

「んとねベッドなんだけどー、週末には間に合うと思うから、土日どっちかで運び入れるの手伝ってね?」

「え、あの…、なぜ?」

「なぜってヤダもー!」

 提督としては当然のことを聞いたつもりだったのだが、当のゴトランドは「何をとぼけていらっしゃる御屋形様」と言わんばかりに、テレながら左手で提督の右頬を思い切りひっぱたく、床に飛び散る米粒。

「それ以上女の子の口から言わせるのは、ヤボだぞ?」

 今全力で叩いたばかりの左手の人差し指で、今度は提督の鼻をツンとつつく。

「はい、なんかすみません。自分間違ってました…」

 首がねじ切れる、そんな危険を感じたのでそれ以上ツッコむのはよすことにした提督。

「後は、お部屋に合うカーテン探したいんだけど。こればっかりは私も作れないから…、探しにいこっか?」

 頬杖を突き上目遣いでデートといって差し支えないであろう買い物を提案してくるゴトランド。隣の金剛が「二人っきりなんて許しませーン!」と飛び掛かってくるが、これ以上この食堂を修羅場にすることはまかりならんと、艦娘で唯一制し方を心得ている金剛の額を指で押さえ制止させる提督。止めることはできたが代わりに蕎麦湯をぶっかけられる。なぜ、自分は悪くないのに。

「う、うん。とりあえず業務時間の空きがあったらね。ダメなら通販でもいいよね?」

「提督が忙しいなら仕方が無いわよね。そのときはそうしましょ」

 なんとかその場をやり過ごすことに成功する提督。金剛はまだ腕をグルングルン回して頑張っている。

「あ、ごめん。ちょっとやらなきゃいけないことがあるんだ。先に行くね」

 そういうとゴトランドは席を立ち店を後にする。しれっと伝票はそのまま、会計は提督が済ますことになる。

「クズ、邪魔、足どけて」

 間宮お手伝いの曙がモップをガシガシと提督の足にぶつけながらつぶやく。先ほど噴出した米を掃除してくれている。

「あ、すみませんぼのたん」

 その呼び方に「〇すぞ?」といわんばかりの殺気と共に提督をにらみつける曙。提督のMがざわつく。

「あーんテイトクー! あんな北欧のアバズレなんかになびかないでくださーイ。して欲しいことがあるんだったら私がなんでもなーんでもしてあげるデース!」

「金剛、言い方」

 拘束の解かれた金剛が勢いよく提督に抱き着いてくる。それを見る他の艦娘の視線のなんと冷たいことか。憩いの場であるはずの間宮だが、提督の努力虚しくこの時ばかりは修羅場と化す。

「ゆっくり食事したい…」

 昼休みが終わる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。