こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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超特別編:ボク↓カワウソ
その1


 鎮守府提督執務室内にて 

 

「はい、最近漁場や生け簀を荒らしている何者かがいて困っていると、近くの漁師の方々からタレコミがありました」

「ふぅん、なるほど。そりゃ困ったな」

「鎮守府さんのほうで何とかしていただけないかとのご依頼なのですが、提督いかがいたしましょうか?」

「…いかがもなにも、もう引き受けちゃったんでしょう?」

「はい」

「元より断るつもりもないけどさ、お仕事だし」

「ですよね」

「でもだよ」

「でも?」

「この目撃情報信じろって言われてもなー。なにさこのトドともセイウチとも似つかない生き物は?」

 大淀とそんな会話をしている提督がその手に持っているのは、漁業関係者の目撃情報をもとに描かれた「漁場荒らし」の犯人と思われる生物のイラストだった。どう見ても「消滅しそうな地方自治体が大逆転をかけて作ってみたはいいがどう考えてもトップにはなれなさそうなゆるキャラ」という感じのイラスト。そんなものが海にいるわけもなく、目撃情報の信ぴょう性を疑っていた。

「あくまで見かけただけであって、それが犯人だと決まったわけでもありませんし。それに、そんなの見つけた日にゃこの辺りの海域UMAネタで売り出しできますよ?」

 目が輝きだす大淀。

「また副業考えてるよね?」

「はい」

 正直でよろしい。

「まぁいいや。取りあえず次警備にあたるチームにこのこと伝えて注意してもらおう。人間の仕業だと思うんだけどねぇ…。あ、お昼終わったらでいいからさ、午後の警備担当呼んでちょうだい」

 都合よく12時を告げるチャイムが鎮守府内に鳴り響く。

「提督、お昼はどうされます?」

 大淀が提督に尋ねる。

「ん? 今日はお弁当。今月前半使いすぎちゃったから節約」

 引き出しから布に包まれたものを取り出し机の上に置く。包みを開くと銀紙が目に入る、恐らくおにぎりだろう。それとタッパーに簡単なおかずが少々。伊達に料亭の子ではないので、少ないながらも綺麗な料理が並んでいる。

「提督、一口ください」

 弁当を覗き込む大淀が提督におねだりする。

「えぇ、どれさ?」

「このお魚ください」

「メインなのに、もー。一口だよ?」

 許しを得た大淀が指でその魚をつまんで口に放り込む。噛み締める大淀、そして出た言葉は。

「おいひい…」

 余りの美味しさに手を頬に当てる大淀。

「そうだろう、旬のキンキの塩焼きだ。先日鎮守府の港に寄ってくれた漁師さんからのおすそ分けだ」

 ドヤ顔で大淀に説明する提督。

「提督」

 口の中からものがなくなった大淀が提督に真剣な表情で声を掛ける。

「なに?」

「明日からあたしの分もお願いできませんか?」

「断る」

 

 昼休み終了

 

「というわけで、みんな注意しておいてね」

「はーい」

 午後警備に出る四人が提督室で例の話を聞いて、素直に了承している。

「変な生き物。こんなの普通いる?」

「だよねぇ。司令、これ本当?」

 水無月が提督に問いかける。

「んー、にわかに信じられないけど、今のところそれしか情報が無いからなぁ」

「速いんですか?」

 続けて長良が問いかける。

「そこまではわからんなぁ」

「あ、そういえば。漁師さんから聞いた話だと、一瞬目が合ったと思ったら凄い速さで逃げていったそうです。漁船じゃとても追いつけないって」

 重要な情報が大淀からもたらされる。

「それは先に言ってよ」

「えー、じゃあ長良の足でも追いつけるかどうかわからないじゃないですか」

「んー、困ったな。見つけても逃がしちゃ意味がない」

 足の速い編成で組んでいるつもりではあるが心配になってくる。さてどうしたものかと頭を抱える提督。

「あ、それだったアレ使ってみない?」

「アレ?」

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