こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その3

「シャアだとイニシャル”C”なんだけどなぁ…」

 一人の執務室でどうでもいいことをつぶやいている提督。廊下からドタバタと駆けてくる音が聞こえ、そして勢いよく提督室の扉が開かれる。

「提督、いたよ!!」

「え、いたの!?」

 午後の海上警備から戻ってきた長良達から報告を受ける提督。あまりにもあっさり見つかるものだから「ホント? ホントにホント?」と勘繰りしつこく聞き返したら、佐渡にちょっと泣かれて謝る羽目になる。飴をあげたら泣き止んだ。

「で、あのイラストの出来は?」

 まずはそこが気になる提督。

「そのまんまだったよ。ホントそのまんま、そっくり」

 提督の問いに皐月が答えてくれる。海が漁師に見せた幻ではないことが判明する。

「それはそれでちょっと見たいな…」

 イラストのままであれば確実にこの世で確認されていない生物の一種ということになる。沸々とその生物に興味が湧いてくる提督。大淀の提案するUMA祭りも悪くないとか思い出す。

「でもな司令、目撃した場所は生け簀もなかったし回りに漁船もいなかったんだぜ?」

 提督からもらった飴を舐めながら佐渡が追加情報を伝える。

「え? じゃあ偶然出遭ったってこと?」

「ってことになりますね」

「ほぼ奇跡だな…」

「それにね司令官。その生き物、私たちを見つけても逃げることもしなかったし、むしろ何か目的があって泳ぎ回ってる感じなの。そのあとすぐ一度こっちを見たかなーと思ったらそのままどこかへ行っちゃったの」

 最後に水無月がその生物の去り際の様子を伝えてくれて報告は終了する。漁師から聞いている情報とは全く異なり、海を荒らしている感じは受けない。果たしてそのけったいな生物が本当に漁場荒らしの犯人なのだろうか。提督が当初予想していた通りそれは人間の仕業で、その生き物は何か別の目的があるのでは、改めてそう考え始める。

「そうか、みんなありがとうご苦労さん。よし、次はオレも出よう。4編成くらい組んで集中捜索するぞ」

 ポンと手を叩いて決断する提督。その言葉に驚く艦娘たち。

「え、提督も海に出るんですか?」

「あぁ。ちょっと見てみた…じゃなくて、何となく嫌な予感がするから。邪魔にならないように後ろからついてくくらいにするけどね」

「絶対ジャマって言われますよ」

「上司に邪魔はその、なんというか…」

 相変わらずの扱い、それでも好奇心が勝る提督。そこはこの若さでそこそこの階級にまで上がった口八丁で艦娘を言いくるめる。人用のボートを自分で操縦し、ついでに秋津洲と偵察用に大艇ちゃんを同行させるということを口実に、翌日朝の警備任務から同行することを押し切る。引き続き文句を言われている提督、その会話を執務室外、扉の陰から聞いている者が一人いた。

 

 翌朝

 

「よーし、しゅっぱーつ!」

 珍しく声高らかに意気揚々と出撃の合図を出す提督。「めんどくせぇな、これじゃサボれねぇじゃん」という視線をほぼ全員から向けられているが気にしていない。昨日とは違い16人の大所帯とそれプラス提督の乗るボート、同乗している秋津洲、上空待機の大艇ちゃんがいる。出発する艦娘に続いて提督の乗るボートが続く。艦娘にとっては業務の一環だが今の提督にとってはちょっとした探検隊気分。秋津洲は大艇ちゃんからの連絡を待ちながら提督から「これで頼む」と買収されたたい焼きを頬張っている。大艇と直接通信が可能な秋津洲だが、そのやり取りに非常に体力と精神力を浪費するため「甘いものが欲しいかも、あたしたい焼き好きかも」とおねだり、昨晩のうちにわざわざ大量のたい焼きを買い出しにいった提督。尚、提督が運転をするということが判明して以来、外に出る際のパシリは完全に提督の役目になっていた。

「秋津洲」

「ん?」

「一個くれ」

「ヤダ」

 長丁場になる可能性をすっかり忘れいてた提督。水分こそ持ってきたが食料のことをすっかり忘れていた。秋津洲におねだりしてみたが譲ってはくれなかった。

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