こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その3

 なんだかんだ仕事が片付かないので、結局提督執務室横の仮眠室で寝ることを覚悟する。以前の提督が鎮守府にこさえた檜の風呂に入りながら、部屋から持ってきたビールを傾けつつ疲れを癒して執務室に戻る。天然温泉を引いているので贅沢。仮眠室には先日ゴトランドが持ち込んだ新しいベッドが備え付けられていた。最初は使うのに抵抗があったが、すこぶる快適で毎日でもここでいいと思っちゃっているので完全にゴトランドの術中にはまっている提督。ウトウトし始めてそろそろ夢の中に突入する深夜0時。提督の耳には届いていないが廊下を踏みしめる音が近づいてくる。そして執務室前でその音は止まる。

 

 コンコン

 

「…ん?」

 

 コンコン

 

「ん? 気のせいじゃない? なんだこんな時間に…。また巻雲のトイレか」

 眠い目をこすりながら扉のほうへ向かう。扉越しに誰か尋ねることもせず扉を開く。

「提督」

「うおっ!!」

 そこには懐中電灯で自分の顔を照らすアレをやっている加賀が立っていた。完全にホラー、ちょっとチビりそうになる。そして完全に目は覚める。

「ど、どうしたのこんな時間に?」

「はい、メンテナンスが延びたのでご報告に」

「だからそのメンテナンスってなんなのか教えてよ…」

「今晩お呼び立てすることはなくなりましたので、一応ご報告に」

「あ、そう。そりゃどうも…」

 一応お礼だけはしておく。

「毎度トラブル続きで申し訳ないですが、ご容赦ください」

「はぁ…。ところで赤城は?」

 念のため確認する。

「食べるだけ食べて、今晩実装がないとわかったら寝ました、早々に」

「あ、そう…」

「ですので今晩はごゆっくりおやすみください」

「うん、ありがとう。寝てたんだけどね…」

 毎度おなじみ『なにも解決しない定期』である。報告を終えた加賀はそのままの格好で去っていく。こんな時間に誰もいないだろうが、あれに出遭って叫び声をあげない、気絶しない、撃ったりしない、変なトラウマにならないことを願う提督。扉を閉めて今度こそ寝るため再びベッドに入る。

 

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 闇夜を切り裂く大きな叫び声が聞こえてくる。ベッドの中でビクッとなるが起き上がることはしない提督。確認はしなかったが、あの声は恐らく巻雲。あぁ、出遭ってしまったのだろう、一番出遭ってはいけない者がアレに。冷静に考えればこんな時間に巻雲は何をしているのだろう、徘徊癖でもあるのだろうか、そっちのほうが心配になる。そしてなぜ加賀はずっとあのまま顔を照らし続けているのだろうか、そっちもそっちで非常に心配になる。そして夜は更けていく…。

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