こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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第11話:提督、車買うってよ
その1


 ガタピシ

 

「ありゃ、止まっちまった」

 買い出しという名のパシリから戻った提督。駐車スペースに車を持っていこうとしていたところ、車が変な音を発して止まってしまった。車から降りてボンネットを開けると、そこからはちょっとの煙と普通ではない匂いが漂ってくる。

「あー、こりゃダメか」

 専門ではない提督、車はそのまま小走りで明石を呼びに行く。そして明石を引き連れて戻ってくる。そして状況を確認させる。

「どうだ?」

「んー、さすがにもう駄目でしょうね。相当古い車でしたし寿命でしょうね」

 専門の明石の見解を聞いてその車の寿命を悟る。

「ダメかー。まぁよく頑張ってくれたかな」

「ですねー。ちょこちょこ整備してればもう少しは何とかなったかもしれませんが、諦めたほうがよさそうです」

 開けていたボンネットを閉じる明石。そして二人でハンドルを操作しながらもとあった駐車スペースまで戻す。荷物を取り出して扉を閉め車の前に立つ提督。

「なんだかんだで役に立ったし、無いと困ったもんだな」

 腰に手を当てて感謝の視線をその車に向ける。

「代わりとかどうします? 必要なら経理に掛け合ってみましょうか?」

「んー、落ちるとは思えんな。ただでさえミサイルのせいで赤字なんだ」

 ミサイルとは例のアレである。無駄にぶっ放すもんだからどんどん年間予算が削られている鎮守府。車を買う余裕なんぞ恐らくないことは提督が一番知っている。

「んー、どうすっかな」

「どうしましょ」

 しばらく立ちすくむ二人。そしてしばらくして提督が答えを出す。

「よし、買うか」

「え?」

 その言葉に驚く明石。

「でも、予算はないって」

「俺が買う。自分の車をだ」

「えぇ!?」

 

 翌日

 

「しれー、車買うんでしょ!? コレにしようぜコレに!」

 車が壊れたことと提督がマイカーを買うことはすでに鎮守府内に広まっており、一部艦娘がカタログやらスマホをもって提督までねだりに来る。

「ん、どれどれ…。 !! 買えるかバカモン」

「えぇー、かっこいいじゃーん」

 外車のホームページをスマホで開いて見せてくる朝霜。当然そんなものを買うわけもなく即座に却下される。

「じゃあこれは?」

 次は清霜。

「ん…。これはクルーザーだろう清霜…」

 車ではなくクルーザーを勧めてくる清霜。当然却下。

「えー、せっかく船に『むさし』って名前つけようと思ったのにー」

「武蔵ならいるでしょう…。勝手に2隻目作ったらダメだっての。それに君たち艦娘でしょ? 船いらないじゃん」

 グウの音もでない、引き下がる清霜。

「提督、これなんてどうかな?」

 松風がカタログを持ってきて提督の前で開く。

「…ミツオカって。渋いね松風」

「この独特なフォルムとネーミングがいいんじゃないか。どうだい?」

 結構な変化球で来られてしまい答えに困る提督。

「か、考えとく…」

 次から次へと自分の好みとわがままを伝えに来る艦娘。仕事にならない。

「言っとくけど、鎮守府用じゃなくてあくまで俺の買い物だからな。それを一時的に鎮守府で使うだけであって、あんま無茶なことはできないの。ローンだし…」

「えー、ケチくさーい」

 ブーブーと文句が出る。

「公僕なめんじゃないよ」

 身も蓋もない回答。しかしシャラップよりよっぽど効果がある。とりあえず艦娘たちが持ってきたカタログは全て受け取り人払いをする。一応まだ業務時間中、部屋に静けさが戻る。

「ふぅ…。さて」

 誰もいなくなったところで提督もちょっとおサボリ。置いていったカタログに目を通す。

「しかし、マジどうすっかな」

 パラパラとカタログを眺める提督。今まで自家用車など持ったこともなく、まったく見当がつかない。ディーラーに行って相談するのが吉だろう。そう思いカタログを閉じると部屋をノックする音が聞こえる。

「はい?」

「あの、司令…」

 そこにいたのは浜波だった。

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