こちら、椴法華鎮守府日常譚   作:汐ノ爾

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その2

 次の休日、鎮守府にタクシーを呼んで外へと繰り出す提督。なぜか連れに浜波がいる。

「ご…ごめんなさい、ついて来ちゃって…」

「いやいや気にすんなって。誰かいたほうが変にセールスに押されたりしなくていいから」

「う、うん…」

 積極的でもないしよく話すわけでもない。仕事以外で接点がそうない浜波がなぜついてきたのか、それは一つ彼女の希望にあった。話は数日前にさかのぼる。

 

コンコン

 

「はい、どうぞー」

 カタログをしまうのと同じくらいのタイミングで誰かが執務室に訪ねてくる。ゆっくりと開かれる扉、そこにいたのは浜波。接点が無いわけではないが余り積極的に話すタイプでもないし、執務室に来ること自体初めて。ちょっと驚く提督。

「浜波じゃないか。どうした?」

「あ、うん…。えっとね…」

 相変わらずもじもじと恥ずかしそう。なかなか部屋の奥へと入ってこない。そんな彼女が娘のようにかわいく思えた提督、笑顔で手招きする。

「あ、ごめんなさい…」

 悪くもないのに謝る浜波。

「おいで、なにか用があるんだろ?」

 近寄ってきて机を挟んで立つ浜波。指をいじいじしながら何か話したそうにしているがなかなか口を開かない。何となく悟った提督から口を開く。

「車のことか?」

 驚いて顔を上げる浜波。いつも髪に隠れてなかなか見えない彼女の瞳がチラと見える。とても大きく見開かれいかにも「言いたいことがなんでわかったの」と口では言わないもののその目がそう言っている。

「図星かな?」

「あ…、うん。な、なんでわかったの?」

「そりゃまぁ、こんだけ次から次へと人が押し寄せてくればね。ただ、ちょっと意外だったけどね」

「う、うん…」

 申し訳なさそうに小さく返事をする浜波。恐縮することもないのに、といっても性格なので仕方がないだろう。敢えて口には出さない。

「で、浜波はどんなのがいいんだ?」

 一度は仕舞ったカタログをまた引き出しから取り出して、一応話だけは聞くことにする。机に並べられたカタログを見る浜波、視線は確認できないが頭を少し下げたので見ていると判断する。

「…えっと、こういうのじゃないのが司令にはいいかなって」

「ほう、そりゃまたどんなのが?」

 これも意外、自己主張してくる浜波。

「パソコン、いい?」

「ん、いいぞ」

 そういうと対面にいた浜波は提督の横へとやってきて、差し出されたパソコンをコチョコチョ操作し始める。そして一つのホームページを開いてそれを提督に見せる。

「…これ」

「どれどれ…」

 パソコンを覗き込む提督。

「こりゃまた…。しかしなんで?」

 それは意外な車種だった。

 

 時は戻ってタクシーの中

 

「一応ハンコと銀行口座がわかるものは持ってきているけど、今日決めるかどうかだよな」

「うん。でも…、夏までには欲しくない?」

「ん、そりゃまたなぜ?」

 浜波が妙に購入を勧めてくる。こんな子だったっけと不思議に感じる提督だが、特に裏がある感じはしない。

「だ…だって、みんなで海水浴に行けたりお祭り行けたり…」

「うちの港でやってんじゃん、全部」

「それもそうだけど…、たまには違うところに。温泉とかも、ほら…」

「まぁ、どっちにしてもあればやれることは増えるもんな」

「うん、そうだよね」

「まー、しばらくこの鎮守府にいることにはなりそうだし。浜波がここまで積極的に勧めてくれるなら買っちまうか」

「や…やった」

 ほぼ気持ちは固まっている風の提督。目的地に向かうタクシーの中、少しおめかしした浜波を横に、休日の子連れのパパのような格好、引率してもらっているのはどっちだろうなんて考えながら外を眺めている。

「可愛いですねぇ、娘さんですか?」

「同僚です」

 誤解を生まないために即答する。この鎮守府のことを知らないのか、そんな的外れの質問を運転手からされたりしながら目的へと到着する。

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