僕はみんなの希望に   作:ガンマン八号

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ふぁっ!?

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日間ランキング最高3位!?

私が模試やらを受けている間に何があった!!


プレッシャー………。(これほどの評価、本当にありがとうございます。時間を見つけて、なんとか投稿できるように頑張ります。)

あと低評価(0〜5)を付ける場合は何か一言お願いします。何か直せる部分がわかるかもしれないので。



雄英高校へ

「フッ!」

 

全速力で駆け抜ける。その速さは常人ではわずかに認識することはできても、捉えることは到底不可能に近いものだ。

 

目の前に壁が迫る。しかし望にそんなことは何の関係もない。ウェブから糸を発射。体を捻りながら自身を壁に引き寄せ、足裏を壁にくっつける。

望に壁という概念はもはや無いに等しい。四方八方、あらゆる面が自分の地面である。壁が迫ると、壁を地面にし、さらに加速。無我夢中で走り続ける。

 

「ハッ!」

 

走るだけでは足りず、体を倒し、前方へ1回転、2回転、3回転………と繰り返す。その動きは体操選手のように滑らかで、そして美しい。

回転を終えたその瞬間、下半身で踏ん張りをつけ、勢いよく飛び上がる。この部屋の高さは20mはある。人間はおろか、鹿などの動物でも上までは届かない。

 

望はそんな高さをもろともしない。各方面へ飛び移り、時には糸での移動をこなす。動きに時折、パンチやキックも交じえ、空想の敵との戦いを想定したトレーニングも入れ込んでいる。とにかく動く。動き続ける。

 

「………いや、気持ちは理解するよ。僕も気がかりで足踏みが止まらないからね。もう足踏みのし過ぎでふくらはぎがシックスパックになりそうだからね。でもさ、望。そんな激しい運動続けてもう2時間が経過してること知ってる?」

「知らん!」

「もはやいつものジョークすら出なくなったか………」

 

望の全身からは大量の汗が吹き出し、動き回るたびに雨のようにあちこちに飛び散る。体力にも限界が見え始め、肩の上下運動が目立ち、息切れを起こしている。

 

それなのになぜ、望は休憩を取らずに動き続けているのか?

自分を鍛えるため?たしかにそれもある。2割といったところだ。しかし本当の理由ではない。

ではなぜか?

 

理由は明白、今日で入学試験から1週間が経過したからである。今日か明日には『試験結果』が通知されるから。

 

とどのつまり、望は緊張を紛らわせているのだ。

緊張に限らず、なにか気を紛らわせたいときはとにかくいそがしくすればいい。そういった結論から、望は入試試験のその日からこの運動量をこなしていた。

 

1日目から食事と会話の量が日頃と比例して少なくなり、2日目からは胃腸を壊し始め、3日目からは寝ても1時間後には起きてしまうようになっていた。

5日目からは表情が完全に死滅し、6日目からは目のハイライトが消え去り、そして本日7日目にはジョークすら消えた。今の望は心を持たないただの暴走機関だ。先週までの面影を微塵も残してはいない。

 

勉も最初は息子の合否にひどく緊張していたが、今は息子のイカれた運動量にある意味緊張していた。私の愛する息子はどこに行ってしまったのだろう、と。

 

「博士!望くん!ついに届きましたよ!」

「なに!?ほんと、って望!?」

 

慌ただしくドアを乱暴に開けて入ってきた石澤が持ってきたのは、『雄英高等学校』と書かれている封筒だった。それは間違いなく試験結果の通知。

勉が封筒を確認しようとする前に、天井にぶら下がっていた望が糸で封筒を奪い取る。手に取った瞬間、すぐに封筒を破ると中から小さな機械が出てくる。

 

「おっと!」

 

地面に落ちてしまわないようにしっかりとシューターから糸を発射し、キャッチする。するとその機械からスクリーンが飛び出してきた。

 

『私が投影された!!』

「えぇっ!?オールマイト」

 

そのスクリーンに映し出されたのはなんと、人気ナンバーワンヒーローの『オールマイト』だった。ヒーローというものを詳しく知るために望は世界にいるヒーローたちを調べ続けてきた。オールマイトを望は当然知っており、その人間性にとても好意を持てる。尊敬するヒーローの一人だ。

 

『おや?なにやら髪の毛が不自然な方向へ向いているみたいだが?』

「あ、あぁすみません。天井にぶら下がってたものでして。すぐにおります」

 

オールマイトに指摘され、少し頭が冷静になった望は地面へと降りる。勉と石澤は突然のオールマイトの登場に驚きを隠せずにいるが、遠くから成り行きを見守る。

 

「し、しかしなぜオールマイトが雄英高校の合格通知の発表を?」

『それについては他でもない、雄英に勤めることになったからだ』

「………それは、今年史上最高のサプライズですね。合格者に対しては」

 

オールマイトが見てる前では、せめて笑顔でいようとなんとか気持ちを明るくしようとする。しかし、それがまるでできない。胸の中は今まで以上の心音が脈打っている。その一発一発が爆発でもしてるかのようだ。

笑ってみせているが、おそらくその顔はとてもぎこちないものになっていることだろう。いつものジョークがまったく飛び出さないのが良い証拠だ。

 

『さて縄正 望くん。君は筆記に関しては文句なしだ。しかし実技の得点は32P。わずかだが合格には届かない』

「っ………!そう、ですよね」

 

オールマイトからの残酷な一言で望の顔は一気に歪む。今までの努力が、父と石澤さんのバックアップが、全てが無駄に終わってしまうこのへの悔しさが溢れ出る。

涙は流すまいとしていたが、どれだけこらえようとしても目から溢れ出す。せめてオールマイトには見られないように顔を伏せるのが精一杯だった。

 

『それだけならね!』

 

しかしオールマイトの一言に望はピクリと反応する。目は涙で滲んではいるが、顔をあげ、しっかりと画面を見つめている。

 

『先の入試!!見ていたのは敵Pのみにあらず!!人救け(正しいこと)した人間を排斥しちまうヒーロー科などあってたまるかって話だよ!!』

「人救け………あっ!?」

 

その時、入試でのあの出来事を思い出す。敵に襲われそうになった茶髪の女の子を助けるために時間をかせいだこと、その敵を倒し、落下してい少年を救い、応急処置を施したこと。

 

『あの少女が襲われそうになった時、君は真っ先に彼女の救出へと向かった!!さらにみど………ゴホンッ、負傷し動けなくなった少年への適切な救助、ならびに応急処置!!きれい事!?上等さ!!命を賭してきれい事実践するお仕事だ!!』

 

あの時、自分が咄嗟に動けたのは母の姿が浮かんだからだ。己の命を賭して少女を助けた誇り高い自分の母を。

あの時動かなかったら、自分は絶対に後悔した。ヒーローになる資格なんてないと思った。いや、母に顔向けできる息子になれるわけがないとさえ思った。

 

救助活動P(レスキューポイント)!!しかも審査制!!我々雄英が見ていたもう一つの基礎能力!!縄正 望50P、合計82Pだ!!』

 

その想いが、情熱が、母の行動が、『彼ら(ヒーロー)』にも届いていたのだ。

 

『来いよ縄正少年!雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!!』

「っ!………はいっ!」

 

そして映像は終わり、スクリーンが消える。望の体が震える。涙が溢れでる。しかしそれは悲しみの涙ではない。身体中から、喜びが湧き上がっているのだ。

 

「やっっっっっったああああああああ!!!」

「やった!!やったぞ望!!合格じゃないか!!」

「さすが望くん!ついに努力が実ったんですね!」

 

歓喜に沸きあがり、3人はお互いに走り寄り、抱き合い喜びを分かち合う。そして3人でハイタッチをする、のだったが。

 

さてここで、望の筋力、今回は腕力について説明しよう。

 

望は現在15歳。身長176cm、体重72kgとかなりガタイの良い方だ。

さらに普通の人間とは違い、蜘蛛の腕力を手にしているのだ。当然その力は凄まじく、大型トラックも簡単に引きずってしまう。なので普段はその力をセーブする必要がある。そのことを理解している望はまず最初に力の制御について覚えたのだ。

 

しかし今の状況はどうだろうか。長年の夢だったヒーローになるための最高の舞台である雄英高校に合格したのだ。その喜びは今までのもの全てと比較にならない。完全に興奮状態だ。

そんな状態でハイタッチをすれば一体どうなってしまうだろう。

 

答えは至って簡単。

 

「「ぎゃあああああああああ!?」」

 

「あ、あはははは、はは………やっちゃった」

 

一応補足しておくと、二人の命に別状はなかったとだけ伝えておこう。

 

 

 

 

****

 

 

 

春。気温は暖かく過ごしやすいものになり、桜の花が満開になるこの季節。望は新しい制服を着込み、玄関に立つ。

鏡の前で制服を着込みの確認をする。最後にネクタイをキッチリと締める。

父である勉はその様子を誇らしく思えた。自分の息子がヒーローとしての第一歩を踏み出したことへ敬意を持って送りだそうとした。

頭や足に包帯を巻き、松葉杖をついてさえいなければ完璧な父親の姿だっただろうが。

 

「ついにこの日が来たんだな」

「うん、それじゃ行ってくるよ父さん。石澤さんによろしく伝えておいてね」

「あぁ、任せろ。この松葉杖ついた足できちんと伝えに言っておいてあげるよ」

「うっ、ごめんて………」

「ハハハッ、冗談だよ冗談。ほら、初日から遅刻するぞ」

「たくっ。じゃあ、いってきます」

「いってこい、望」

 

玄関のドアを開けると、まるで望を歓迎するかのように輝かしい太陽が目の前に広がっていた。望は新たなスタートの一歩をしっかりと踏みしめたのだ。

 

 

 

どこかで聞き覚えのある、実に男らしい豪快な笑い方をする女性の笑い声が聞こえてきた気がした。

 

 

 




今回も導入のような形となってしまいました。スパイダーマンとしての活躍を期待されていた方、申し訳ありません。

今週からAO入試に向けての本格的な準備が始まるため、投稿はさらに遅くなってしまいますが、ご了承ください。もちろん、時間を見つけて少しずつ書き上げていこうと思います。

最後にあらためて、これほど多くの皆さんにご評価を頂けたこと、大変嬉しく思っています。本当にありがとうございます。

これからもこの作品をよろしくお願い致します。

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