「言い訳を聞こうか……」
午後のテストも終了した放課後。
Bクラスへ宣戦布告に行って、案の定ボロボロにされた明久が雄二に詰め寄っています。
ブレザーの袖が片方千切れかかっているのを見るに、今回はなかなか派手にやられているようです。
「予想通りだ」
そんな明久に、雄二が事も無げに答えます。
「くきぃー!殺す!殺し切るーっ!」
逆上した明久が雄二に飛びかかろうとしています。助けに入ってあげますか。
「「落ち着け(こうね)明久」」
「ぐふぉぁっ!」
あ、2人して同時に拳を鳩尾に叩き込んでしまいました.....大丈夫でしょうか?
「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」
爽やかにそう言い残して、雄二はさっさと教室を出て行ってしまいます。仕方ありません、フォローは僕がしておきましょう。
「ごめん明久。大丈夫?」
「大丈夫じゃないよ……。うぅ……お腹が……」
さすがに少しばかりやりすぎてしまったようです。
「じゃあ、昼の件はこれでチャラにしてあげるから」
「うぅ……まあ、それなら……」
明久からお許しをもらったところで、肩を貸してとりあえず立ち上がらせます。
「とりあえず保健室に運ぶってことでいいかな?それともこのまま帰る?」
「……保健室で少し休んでくよ」
「了解」
教室にはもうほとんど人が残っていない状態でしたが、ふと視界の端に瑞希の姿が映りました。鞄を抱え込んでキョロキョロと周囲を見回しています。かなり挙動不審ですが、何かを警戒しているようにも見えます。
.....ああ、そういえば昨日手紙を書いていましたね。もしかして、アレをどこに置こうか考えているのでしょうか。だとしたら彼女が気付いていないとはいえ、いつまでもここにいてはいけませんね。
「よし、それじゃ行くよ明久」
「よ、よろしく~」
そうして、僕は明久を連れて教室を後にしました。
「さて皆、総合科目テストご苦労だった」
教壇に立った雄二が机に手を置いて皆を見回しています。
今日も午前中はテストで、ついさっき全ての教科のテストが終わって昼食を取ったところです。一昨日のDクラス戦では総合科目勝負をしたらしく、皆は少々お疲れのようです。
かく言う僕はといいますと、そのDクラス戦には参加していなかったこともあって皆より受けたテストが少なかった分、点数は元より、気力も充実しています。
「午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」
『『おおーっ!』』
前回から全く衰えることのないモチベーション。僕達Fクラスの唯一の武器(笑)と言ってもいいでしょう。
「今回の戦闘は敵を教室内に押し込むことが重要になる。その為、開戦直後の渡り廊下戦は絶対に負けるわけにはいかない」
『『おおーっ!』』
「そこで前線部隊の指揮は姫路瑞希、天水鏡護の両名に取ってもらう。野郎共、きっちり死んで来い!」
「が、頑張りますっ」
『『うおおーっ!』』
男子のノリについていけないのでしょう。瑞希が若干引き気味ながらも一歩前に出ます。
さあ、いよいよ僕も試召戦争デビューですね。張り切っていきますよ!
「さあ、Bクラスに目に物見せてやろうぞ!諸君、合言葉は?」
『『サーチ&デスっ!!』』
「上等だっ!出るぞっ!」
『『おうっ!』』
キーンコーンカーンコーン
昼休み終了のチャイムが鳴り響きます。Bクラス戦、戦闘開始です。
「よし、言ってこい!目指すはシステムデスクだ!」
『『サー、イエッサー!』』
敵を教室に押し込むのが目的なので、とにかく勢いが重要になります。
僕達は全速力でBクラスへと向かう廊下を駆け出しました。
今回の廊下戦は絶対に負けられないということで、Fクラスの全戦力である50人のうち40人を注ぎ込んでいます。そこには学年次席の強さを誇る瑞希と、敵方には何の情報もない僕も入っています。これならまず負けはないでしょう。
今回のこちらの主武器は数学。Bクラスは比較的文系が多いのと、なぜか長谷川先生の召喚可能範囲が広いというのが理由です。一気に勝負をかけたい時には非常にありがたい先生ですね。他にも英語のライディングの山田先生と物理の木村先生もいます。立会いの教師を多くして一気に駆け抜けます!
『いたぞ、Bクラスだ!』
『高橋先生を連れているぞ!』
正面を見ると向こうからゆっくりとした足取りで歩いてくるBクラスの先遣隊が姿を現しました。人数は10人程度です。まずは様子見、といったところでしょうか。
「生かして帰すなーっ!」
なんとも物騒な台詞を皮切りに、Bクラス戦が開始されました。
『Bクラス 野中長男 VS Fクラス 近藤吉宗
総合 1943点 VS 764点 』
くっ、流石はBクラス!Dクラスとは桁が違います!
『Bクラス 金田一祐子 VS Fクラス 武藤啓太
数学 159点 VS 69点 』
『Bクラス 里井真由子 VS Fクラス 君島博
物理 152点 VS 77点 』
「Fクラスの皆は絶対に1対1で戦わないように!人数はこっちの方が多いから、とにかく多対1で確実に殺すんだ!」
とにかく被害を最小限に抑えようとして、急いで指示を出します。
「お、遅れ、まし、た……。ごめ、んな、さい……」
息を切らせて瑞希がやってきました。さすがに男子の全力疾走にはついて来られませんよね。瑞希は元々あまり体力もありませんし。
『来たぞ!姫路瑞希だ!』
Bクラスの誰かが叫びます。
やはりBクラスにはもうバレていますね……。入念に下調べをしていたのでしょう。
声を聞いたBクラスの生徒の目が変わりました。明らかに瑞希を警戒しています。
「瑞希、来たばかりで悪いんだけど……」
「は、はい。行って、きます」
そのままトタトタと戦場に紛れ込んでいく瑞希。こんな些細な動作すら可愛く見えてしまうのも、ある種の才能でしょうね。
「長谷川先生、Bクラス岩下律子です。Fクラス姫路瑞希さんに数学勝負を申し込みます!」
「あ、長谷川先生。姫路瑞希です。よろしくお願いします」
早速勝負を挑まれる瑞希。当然、向こうとしては早く潰しておきたい相手なんでしょう。
「律子、私も手伝う!」
その後ろから、さらにもう一人Bクラスの女子が召喚を開始しました。Bクラスは10人しかいないのに2人がかりとは、向こうも必死ですね.....
『
喚声に応えて3人の足下に魔法陣が展開して、おなじみの試験召喚獣が顔を出します。
Bクラスの2人の召喚獣はそれぞれ剣と槍を構え、瑞希の方は身の丈の倍程の大剣を軽々と持っています。
瑞希の召喚獣を初めて見ましたが、やはり強そうですね.....
そんな3人そっくりの召喚獣ですが、
「あれ?姫路さんの召喚獣ってアクセサリーなんてしてるんだね?」
「流石は瑞希。やっぱり腕輪持ちなんだね」
「あ、はい。数学は結構解けたので……」
明久の指摘通りデフォルメされた瑞希には、大剣の他に左手首に綺麗な腕輪をしていました。
「そ、それって!?」
「私たちで勝てるわけないじゃない!」
向こうの2人がそれを見て顔色を変えます。
あー、なんと言いますか、ご愁傷様?(補習室行き的な意味で)
腕輪をしているということはつまり――
「じゃ、いきますね」
瑞希が小さな手をギュッと握り込みます。その動きに合わせるように、瑞希の召喚獣が左腕を敵の方に向けました。
「ちょっと待ってよ!?」
「律子!とにかく避けないと!」
大袈裟なくらいに慌てて横に跳ぶ2人の召喚獣。その直後、瑞希の召喚獣の腕輪が眩い光を発しました。
キュボッ!
「きゃあぁぁーっ!」
「り、律子!」
左腕からまるでレーザーのような一筋の光線がほとばしった瞬間、逃げ遅れた召喚獣の1体が炎に包まれました。
『Fクラス 姫路瑞希 VS Bクラス 岩下律子&菊入真由美
数学 412点 VS 189点 & 151点 』
ここでワンポイント・レッスン!
テストで400点以上を取った人の召喚獣は、特殊能力を使える腕輪を装備して出てくるというルールがあるのです。ちなみに、そのような生徒のことを《腕輪持ち》などと呼んだりします。
召喚獣が腕輪をしているということはつまり、特殊能力を持っているということです。
また、腕輪の特殊能力は個人個人で全く異なるものなのですが、瑞希の能力は何でしょう?先程の戦闘を見るに、『光線』でしょうか。
「ご、ごめんなさい。これも勝負ですのでっ」
そして、先程大きく避けてバランスを崩した敵に肉薄して大剣を振り下ろす瑞希の召喚獣。防ごうとした相手の武器ごと一刀両断して、勝負は一瞬でカタがつきました。
『い、岩下と菊入が戦死したぞ!』
『なっ!そんな馬鹿な!?』
『姫路瑞希、噂以上に危険な相手だ!』
Bクラスの残り8人に衝撃が走ります。まあ目の前であんなのを見せられたら無理もありません。
というか、瑞希が強すぎます。
「皆さん、頑張ってくださいっ!」
『やったるでぇーっ!』
『姫路さんサイコーッ!』
『姫路さん愛してますーっ!』
瑞希の激励で、Fクラスの士気は大幅にアップします。
それより最後の人、何ドサクサに紛れて告白してるんですか。シバきますよ?
「瑞希、お疲れ様。とりあえず下がってていいよ」
「あ、はい。ありがとう、鏡護君」
敵の戦意を大幅に削ぐことができたので、瑞希には一旦下がってもらうことにしました。腕輪の特殊能力は、その絶大な威力故に消耗もまた激しいのです。
既に瑞希を抜きにしても、敵の前線部隊が崩壊するのは時間の問題でしょうからね。
「中堅部隊と入れ替わりながら後退!戦死だけはするな!」
Bクラス側からそんな声が聞こえました。とりあえず狙いは成功ですね。相手を徐々に下がらせて、目的のBクラスに釘付けにするくらいで今日の戦闘は終了するでしょう。これも瑞希のおかげですね。感謝感謝。
「鏡護、明久、ワシらは教室に戻るぞ」
「ん?なんで?」
戦況を眺めていた僕と明久のところに秀吉がやってきました。
教室の方で何かあったのでしょうか?
「Bクラスの代表のことなんじゃが……」
「うん」
「誰なんだ?」
「あの根本らしい」
「なっ!それは本当か!?」
「根本って、あの根本恭二?」
「うむ」
根本恭二という男は、とにかく評判の悪い男です。
噂ではカンニングの常連だそうです。目的の為には手段を選ばないらしく、『球技大会で相手チームに一服盛った』とか『喧嘩には刃物は
その根本がBクラス代表ということは、当然何か仕掛けてくるでしょう。用心に越したことはありませんね。
「なるほど。確かに戻っておいた方がいいね」
「雄二に何かがあるとは思えんが、念のためにの」
瑞希に一言報告して、僕と明久と秀吉は何人かを連れて教室へと引き返しました。
―Side 明久
「……うわ、こりゃ酷い」
「まさかこうくるとはのう」
「まさしく《卑怯者》、だな」
教室に引き返した僕らを迎えたのは、穴だらけになった卓袱台とヘシ折られたシャープや消しゴムだった。
「酷いね。これじゃ補給がままならない」
「うむ。地味じゃが、点数に影響の出る嫌がらせじゃな」
それにしても、なんか、根本君って器小さいなぁ.....
「あまり気にするな。修復に時間はかかるが、作戦に大きな支障はない」
「雄二がそう言うならいいけど」
なんか微妙に気になる。
「それはそうと、どうして雄二は教室がこんなになっているのに気付かなかったんだ?」
鏡護が雄二を問い詰めている。
確かに昼休みまでは見慣れた教室だったはずだから、戦闘開始から今までの間にやられたんだろう。
でも、それなら教室にいたはずの雄二が気付かないわけがない。
「協定を結びたいという申し出があってな。調印の為に教室を空にしていた」
「協定じゃと?」
「ああ。4時までに決着がつかなかったら戦況をそのままにして続きは明日午前9時に持ち越し。その間は試召戦争に関わる一切の行為を禁止する。ってな」
「それ、承諾したの?」
「そうだ」
「でも、体力勝負に持ち込んだ方がウチとしては有利なんじゃないの?」
「明久、僕達には瑞希がいるだろう?」
あ、そっか。
「あいつ等を教室に押し込んだら今日の戦闘は終了になるだろう。そうすると、作戦の本番は明日ということになる」
「そうだね。この調子だと本丸は落とせそうにないね」
「その時はクラス全体の戦闘力よりも姫路個人の戦闘力の方が重要になる」
局所的な戦闘になるってことだろうか。それとも、Dクラス戦みたいに姫路さんが止めを刺すとか。
「だから受けたの? 姫路さんが万全の態勢で勝負できるように」
「そういうことだ。この協定は俺達にとってかなり都合が良い。
「いや、これはマズいよ……」
これまで沈黙を貫いていた鏡護が、雄二の言葉を途中で遮った。
「何!?」
「どういうことじゃ鏡護?」
「確かに普通に考えたらその協定は僕達に都合の良い内容だよ。雄二の判断も正しいと思う。でも、今回の相手は“あの”根本なんだ……普通なわけがない」
「何が言いたい鏡護?」
「まず、条文の後半。試召戦争に関わる一切の行為についてだけど、その具体的内容は話した?」
「そういえば何も決めてないな」
「……やっぱり。なら、今から言うことを4時過ぎてやったら全部協定違反だよ。教室の修繕、作戦会議、他クラスへの接触、勉強……」
「いやいや、いくらなんでもそれは大袈裟だろ」
「じゃが、相手は根本じゃぞ?」
「やりそうで否定できないね……」
なんと言っても、根本君だからなぁ.....
「それにこれだけ協定違反になる要素が多いってことは、それを利用した罠を仕掛けてくることも充分予測できる」
「「「罠っ!?」」」
「ああ。根本のことだから、ただそれらの行動を起こしただけで協定違反を持ち出してはこないと思うんだ。……僕らが言い逃れもできないような状況にならない限りは、ね」
「つまり、根本はその状況を作り出す罠を用意していると?」
「多分」
「ふむ、なら対策を考えないとマズいな。鏡護、付き合え」
「元からそのつもりだよ」
「それと明久と秀吉は前線に戻ってくれ。向こうでも何かされているかもしれん」
確かに教室がこの調子なら、戦場の方でも何かやられている可能性は充分に有り得る。
「わかった。行こう秀吉!雄二、鏡護、あとはよろしく」
「おう。とりあえずシャープや消しゴムの手配をしておこう」
手を挙げる雄二に背を向けて、秀吉と一緒に教室を飛び出す。
次はどんな姑息な手で来るんだろう。とにかく気を引き締めよう。
「吉井! 戻ってきたか!」
僕らを出迎えてくれたのは須川君。あれ? 部隊は副官の島田さんが指揮をとっているんじゃないんだ。
「待たせたね! 戦況は?」
「かなりマズイことになっている」
「え!? どうして!?」
向こうから本隊が出てきた様子もないし、戦力的には負けるはずがないのにどうして。
「島田が人質にとられた」
「な!?」
今度は人質か! 卑怯な手段の王道じゃないか!
「おかげで相手は残り二人なのに攻めあぐんでいる。どうする?」
現在、僕の部隊はそのせいで敵と睨み合いになっているらしい。
「……そうだね。とりあえず状況が見たい」
「それなら前に行こう。そこで敵は道を塞いでいる」
須川君が前を歩き、僕が後に続く。
僕の部隊の人垣を抜けると、そこには須川君の言うとおり二人のBクラス生徒と捕らえられた島田さん及びその召喚獣の姿があった。
そして、そばには補習担当の教師もいる。
「島田さん!」
「よ、吉井!」
なんだかドラマみたいだ。
「そこで止まれ! それ以上近寄るなら、召喚獣に止めを刺して、この女を補習室送りにしてやるぞ!」
島田さんを捕らえている敵の一人が僕を牽制してくる。
そうか。数少ないウチの女子をただ戦死させるんじゃなく、人質にとって補習室送りをちらつかせ、こちらの士気を挫く作戦か。上手いやり方だ。
このまま攻め込めば、僕らが相手を倒す前に島田さんに止めを刺され、補習室送りにされて辛い思いをさせてしまう。
…………問題ないな。
「総員突撃用意ぃーっ!」
「隊長それでいいのか!?」
「須川君、仕方ないよ。戦争に犠牲はつきものなんだ!決して日頃痛めつけられている仕返しなんかじゃない!」
思わず本音を熱弁してしまった僕。そうだ、これは指揮官として必要な判断なんだ!
「ま、待て、吉井!」
あまりの出来事に敵からもちょっと待ったコールがかかる。往生際が悪いな。
「コイツがどうして俺達に捕まったと思っている?」
「バカだから」
「吉井……殺すわよ」
え?何?どうして人質にされているはずの島田さんから強烈なプレッシャーを感じるの?
「コイツ、お前が怪我したって偽情報を流したら、部隊を離れて1人で保健室に向かったんだよ」
なんだってっ!?
「島田さん……」
「な、なによ」
島田さんの顔がほんのり赤くなってる。
「怪我をした僕に止めを刺しに行くなんて、アンタは鬼か!」
「違うわよ!」
恐ろしい。これじゃオチオチ保健室で昼寝もしていられない。
「……ウチがアンタの様子を見に行っちゃ悪いっての!?これでも心配したんだからね!」
「島田さん。それ、本当?」
「そ、そうよ。悪い?」
ぷいっと顔を背ける島田さん。
普通ならここは感動する場面なのかもしれない。だけど.....
「へっ、やっとわかったか。それじゃ、おとなしく―」
「総員突撃ぃーっ!」
「どうしてよ!?」
「あの島田さんは偽者だ!変装している敵だぞ!」
誰だか知らないけど、変装するべき相手を間違えたね!島田さんが僕を心配するはずがない!むしろ嬉々として僕を殺りにくるに決まってるじゃないか!
「おい待てって!コイツは本当に本物の島田だ!」
狼狽するBクラスの生徒。
「黙れ!見破られた作戦にいつまでも固執するなんて見苦しいぞ!」
「だから本当に――!」
とりあえず、突撃の号令で動いた須川君達が死にかけ2人を撃破!召喚獣に止めを刺す!
「ぎゃぁぁぁー……!」
「たすけてぇー……!」
近くにいた補習講師に連行されていく2人。良い気味だ。
さて、残りは――
「皆、気をつけろ!変装を解いて襲い掛かってくるぞ!」
この島田さんモドキだ。
「よ、吉井、酷い……ウチ、本当に心配したのに……」
「まだ白々しい演技を続けるのか!この大根役者め!」
本物の島田さんがそんな台詞を吐くわけがない!
「皆で取り囲むんだ!いくらBクラスでもこの人数でなら勝てるから」
「本当に、『吉井が瑞希のパンツ見て鼻血が止まらなくなった』って聞いて心配したんだから!」
「包囲中止!コレ本物の島田さんだ!」
こんな嘘に騙されるのは彼女以外有り得ない。
「島田さん、大丈夫だった?くそっ、Bクラスめ、なんて卑怯な真似を」
床に座り込む彼女に手を差し伸べる。
「…………」
素直に僕の手に掴まり、立ち上がる島田さん。珍しい。
「無事で良かったよ。心配したんだからね」
「…………」
「教室に戻って休憩するといいよ。疲れているでしょう?」
「…………」
「それにしても、卑怯な連中だね。人として恥ずかしくないのかな?」
「…………」
島田さんの反応がない。なんかやりにくいな。
「あー、島田さん。実はね」
「……なによ」
やっと反応を返してくれた島田さん。
こちらを向いてくれた島田さんに対してお礼の気持ちを込めて、僕の出来る最高の笑顔を作る。
「僕、本物の島田さんだって最初から気付いていたんだよ?」
殺されかけた。
―Side Out
午後4時を過ぎて本日の戦闘が終了した後、教室に戻ってきた皆の中に血だるまになった明久の姿がありました。
「明久に何があったっ!?」
「わかりません。気づいたら、廊下に倒れてまして……」
「おいおい、まるで散々殴られたあげくに頭から廊下に叩きつけられたような怪我じゃないか!?すぐに手当てをしないと!瑞希、悪いがハンカチか何かを濡らして持ってきてくれ!」
「はっ、はい!」
とにかく何とかしないと。そう思って僕はすぐに瑞希に指示を出しました。
「うっ……」
と、どうやら明久が気が付いたようです。
「……ここはどこ?」
「気が付いたようだな。大丈夫か明久」
「いくら試召『戦争』じゃからといって、本当に怪我をする必要はないんじゃぞ?」
雄二と秀吉が近くに寄ってきます。
「ちょっと色々あってね。それで試召戦争の方はどうなったの?」
ちょっと何かあった程度であのレベルの怪我を負うことはないと思います。
「4時を過ぎたから協定どおり休戦中だ。続きは明日だな」
「戦況は?」
「一応計画通りじゃ。教室前に攻め込んだのじゃが、こちらの被害も少なくはないのう」
まあ、それでも予想の範囲内だからなんとかなるでしょう。
「ハプニングはあったけど、今のところ順調って訳だね」
「うん。ただ、それだけにこれからが本番だろうね」
そう、相手はあの根本なのです。絶対に何か企んでいることでしょう。
「…………(トントン)」
ふと気が付けば、康太がそばに来ていました。
今日の康太には情報収集の任務が当てられていた為、戦闘には直接参加せずにいたのです。
「ふむ、Cクラスの様子が怪しいだと?」
「…………(コクリ)」
雄二に報告する康太の話によると、どうやらCクラスが試召戦争の準備を始めているとのことです。
「鏡護、どう思う?」
そうですね.....
「まず、Aクラスと戦うのが目的ではないはず」
「すると、漁夫の利を狙うつもりか?」
確かにその可能性はあります。疲弊した相手なら戦いやすいですからね。
「ふむ。それならCクラスと協定でも結ぶか。連中も俺達が勝つとは思っていないだろうし、Dクラスをけしかけるとでも言えば難しくないだろう」
「いや。雄二、今Cクラスに行っちゃダメだ」
「なんだ鏡護。どういう意味だ?」
「Cクラスの代表は小山さんなんだよ」
「それがどうした」
「彼女は根本と付き合ってるらしい」
「なにっ!?それは本当か?」
「間違いないと思うよ。僕のところに注文が――ゲフンゲフン」
あ、危なかったです。うっかり秘密のバイトのことをバラしてしまうところでした。
そうなんです。実はそのバイトのおかげで、この学園内の“そういう”人間関係について僕が知らないことはありません。
「?まあいい。つまりこれは根本の罠ということか?」
「ああ。まず間違いないだろうね」
「ふむ。しかし例えそうだとしても行かないとな。このままじゃ面倒なことになる」
「そうだね。早く行かないとCクラス代表が帰るかもしれないし」
いえ、おそらく根本の罠である以上それはないですよ明久。
「んじゃあ、行くか」
「うむ。行くのじゃ」
「いや、すまんが鏡護と秀吉は残ってくれ」
「ちょっと待って雄二。まさか……」
「ああ。もし本当に罠だった場合にはさっきお前と考えた作戦を実行しなきゃならんからな」
「うう……。僕はできれば遠慮したいんだけど……」
「まあそう言うな。じゃあ行ってくる」
そう言って雄二、明久、瑞希、康太の4人が教室を出て行きました。
「ハァ……他人事だと思って……」
「?鏡護は何に気落ちしておるんじゃ?」
その後しばらくして雄二、瑞希、康太の3人が、さらにその十数分後に明久と島田さんが教室に戻ってきました。
あの後教室を出たところで島田さん、須川君と鉢合わせ、一緒に連れて行ったそうです。
そしてやはりCクラスの件は根本の罠でした。須川君は雄二達を逃がすため、真っ先に盾になったとのこと。須川君、君の勇気ある行動に僕は感動しましたよ。
あと、いったい何があったのかはわかりませんが、島田さんが明久のことを『アキ』、明久が島田さんのことを『美波』と呼ぶようになっていました。2人の仲が少し進展したようで、ちょっと嬉しかったです。
あとがき
鏡護 「そういえばこの間、補習の時にしばらく更新が遅れるとか言ってたのに、
2日連続で次話投稿なんかして学校の勉強は大丈夫なの?」
作者 「……。さあ、試召戦争も2戦目!だいぶ盛り上がってるんじゃないか?」
鏡護 「(あ、スルーした。まいっか)そうだね。でもさ、作者さん……」
作者 「ん?どうした?」
鏡護 「戦場に出してくれたのはいいけど、僕まだ召喚獣を喚んでないよ!?」
作者 「ああ、そのことか」
鏡護 「そのことか、じゃないよ!どうしてなのさ?」
作者 「よく言うだろ?真打は最後に登場するって」
鏡護 「む、確かに……って納得できるかぁっ!」
作者 「チッ!……いいじゃん。次回は全編に渡って鏡護無双になる予定だから」
鏡護 「い、今舌打ちした!……えっ、それほんと?」
作者 「んー、どうしよっかな~?やっぱり止めようかな~?」ニヤニヤ
鏡護 「クッ……生意気言ってすいませんでした。どうかよろしくお願いします」
作者 「フッフッフッ。わかればいいのだよ」
鏡護 「……この下衆がっ!(ボソッ)」
作者 「おや~?何か言ったかね?」
鏡護 「……何でもありません」
作者 「(いやぁ~楽しいねぇ)さて、それでは次回予告に行きましょう!
次回、第7問『怒りの鏡護!解放される天眼の力!(仮)』
を、」
作・鏡 「「お楽しみに~!」」