バカと天眼の賢者と召喚獣 ※凍結   作:天御柱

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第8問 『《卑怯者》の末路と、ねぇコレなんてエロゲ?』

「明久、随分と思い切った行動に出たのう」

 

終戦後、Bクラスに入って来た秀吉が明久に声を掛けていた。

 

「うぅ……。痛いよう、痛いよう……」

 

明久の方はと言うと、血だらけになった両手を抑えて呻いている。

いくら作戦の為とはいえ、やはり少々無理をさせ過ぎてしまったようだ。

 

「なんとも……お主らしい作戦じゃったな」

 

「で、でしょ?もっと褒めていいと思うよ」

 

「後のことを何も考えず、自分の立場を追い詰める、男気溢れる素晴らしい作戦じゃな」

 

「……遠まわしに馬鹿って言ってない?」

 

明久、正解だ。

それに校舎の壁を壊してしまったのだから、問題にならないわけがない。明久の放課後の予定は先生方との生活指導面談(ハートフルコミュニケーション)で埋まってしまったことだろう。

 

「ま、それが明久の強みだからな」

 

そこへ雄二が歩み寄って、明久の肩をバンバンと叩く。

明久はバカが強みと言われてショックを受けていた。

 

「さて、それじゃ嬉し恥ずかし戦後対談と行くか。な、負け組代表?」

 

「……」

 

先程までの強気が嘘のように力なく床に座り込んでいる根本に、雄二が声を掛ける。

 

「本来なら設備を明け渡してもらい、お前らには素敵な卓袱台をプレゼントするところだが、特別に免除してやらんでもない」

 

そんな雄二の発言に周囲の生徒達がざわつき始める。

 

「落ち着け、皆。前にも言ったが、俺達の目標はAクラスだ。ここは通過点に過ぎない」

 

雄二の言葉にFクラスの面々は納得がいったのか、それぞれに頷いている。

当然だ。俺達が目指すのは頂点だけなのだから。

 

「……条件はなんだ」

 

力なく根本が問う。

 

さあ、楽しい楽しい制裁の時間(パーティータイム)の始まりだ。

 

俺が雄二の方に目線を送ると、雄二は何も言わずに首を縦に動かした。

 

「条件?それはお前さんだよ、《卑怯者》」

 

「俺だと?」

 

「お前さんには散々好き勝手やってもらったし、正直去年から目障りだったからな」

 

「チッ……」

 

「Bクラス諸君、お前達に特別チャンスをやろう」

 

俺は根本を無視してBクラスに語りかける。

 

「Aクラスに行って『試召戦争の準備が出来ている』と宣言してこい。そうすれば今回の設備については見逃してやる。ただし、宣戦布告はするな。宣戦布告すると戦争は避けられなくなるからな。あくまでも戦争の意思と準備があるとだけ伝えろ。いいな?」

 

Bクラスの連中が再び騒ぎ出すが、それも無視する。

 

「……それだけでいいのか?」

 

訝るような根本の声。

 

んなわけがあるか。世の中そんなに甘かねぇよ。

 

「ただしBクラス代表が『コレ』を着て言った通りに行動してくれたら、だがな……」

 

そうして俺は今朝自分が着せられた女子の制服を見せた。

 

「それにそうだな。せっかくだから、ついでにその恰好のまま写真撮影をしてもらおう」

 

さらに俺は追い打ちとして、笑顔で死刑宣告を言い放つ。

 

「バ、バカなことを言うな!どうしてこの俺がそんなふざけたことを……」

 

当然拒否しようとする根本。しかし――

 

『Bクラス生徒全員で、必ず実行させよう!』

『任せて! 必ずやらせるから!』

『それだけで教室を守れるなら、やらない手はないな!』

 

Bクラスの仲間達は快く協力してくれるようだ。これだけで根本が今までどのような行動を取ってきたのかがよくわかるな。

 

「んじゃ、決まりだな」

 

「くっ!よ、寄るな!変態ぐふぅっ!」

 

「とりあえず黙らせました」

 

「うむ。ご苦労」

 

Bクラスの男子の1人が根本の腹部を拳で打ち抜いて沈めた。

それを確認した俺は明久に声を掛けた。

 

「おい明久、コイツの着付けを頼んでもいいか?」

 

「うんっ!任せてよ!」

 

さっきまで落ち込んでいた明久は、ストレスの発散先が見つかったのが嬉しいようで生き生きしている。

 

「う、うぅ……」

 

ん?根本のヤツが目を覚ましそうだな.....

 

「チェストッ!」

 

ゴスッ!

 

「ぐはっ!」

 

念の為鳩尾に1発叩き込む。これでもうしばらくは動かないだろう。

 

「それじゃ、後は任せたぞ」

 

剥ぎ取られた根本の制服を手に取ると、ゴソゴソとポケットを漁る。確かこの辺だったはず.....

 

「……あったあった」

 

見覚えのある封筒を取り出し、自分のポケットに入れた。

 

さて、残った制服はどうするか?――ふむ、未練が残ってはいかんな。折角だ、根本には家に帰るまで女子制服の着心地を楽しんでもらうとしよう。

 

そうして俺は焼却炉にヤツの制服を放り込んで、Fクラスの教室へと向かった。

 

 

     *     *     *

 

 

俺は瑞希の鞄に封筒を戻す為、教室に戻ってきた。

 

「さて、落し物は持ち主に返さんと――っ!?」

 

フッ――

 

扉を開けて中に入ったところで、強烈な立ち眩みが俺を襲った。

 

クソッ、よりにもよってこんなときにっ!

 

 

Bクラス戦の最後に使った力『時間統御(クロノス)』には、その絶対的性能故に、以前少し触れたと思うが(※第2問参照)ペナルティが存在する。

――そのペナルティとは、極度の疲労と全身の筋肉痛。

使用した時間次第ではあるが、最短1時間、最長で半日の間、眠っていないと回復しない程の激しい疲労と、丸一日は安静にしていなければならない筋肉痛が残る。

しかもそれらは一様に使用直後に来るという訳でもなく、それぞれが時間差で来たりする。

今回はどうやら疲労だけが先に出たらしい。

 

 

目の前が真っ暗になり、俺はそのまま意識を手放した.....

 

 

 

 

 

――ポタ、ポタ

 

 

んっ?

 

どれくらいの時間、意識を失っていたのか。

自分の顔に何かが当たったような気がして、俺の意識は浮上していった。

 

「……ここはどこだ?」

 

自分の置かれている状況がわからず、声が漏れる。

 

「……っ!気が付いたんですか!?」

 

自分のすぐ近くから、誰かが驚く気配と声がした。

ゆっくりとそちらに顔を向けると――

 

「……っ、グスッ、よ、よかった……。もしかして起きないんじゃないかと……」

 

涙で瞳を濡らした瑞希の姿があった。

目に映った光景が理解できず、思わず慌てる。

 

「な、え、えぇっ!?なんで瑞希が泣いてるんだ!?」

 

横たわっていた体を勢いよく起こす。

そうして改めて見た瑞希は、畳にお姉さん座りという姿勢だった。

 

 

ポクポクポク.....チーン!

 

 

ハッ!?まさか俺は今の今まで瑞希に膝枕をされていたのか!?しまった、もうちょっと堪能しておけば――

 

 

ガバッ!

 

 

「ほわぁぁぁっ!」

 

なんともしょうもない欲望に染まりかける思考を遮るかのように、突然瑞希が抱きついてきた。

.....思わず変な声を出しちまった。恥ずかしい。

 

「あ、ありがとう、ございます……!わ、私、ずっと、どうしていいか、わかんなくて……!」

 

と、そんな俺に構う様子もなく瑞希が喋りだす。

 

「あ~、瑞希?とりあえず落ち着け。それとお前に泣かれると俺が困る」

 

ナデナデ.....

 

「は、はい……////」

 

とりあえず頭を撫でて落ち着かせながら、抱きついている瑞希を引き離す。

女の子特有の柔らかい(特に胸の辺り)身体といい匂いをこれ以上身近で感じていたら、俺の理性がどうにかなってしまう。

名残惜しく思わなくもないが、それはそれ、これはこれだ。

 

「いきなりすいません……」

 

そう言って涙を拭う瑞希。

 

「大丈夫だから気にするな。」

 

「はい……。あの……」

 

「ん?どした?」

 

「手紙、ありがとうございました」

 

俯きがちに小さな声で言う瑞希。

 

「別に大したことはしてないさ。たまたま根本の制服から瑞希の手紙が出てきたから戻そうとしただけだよ」

 

「それってウソ、ですよね?」

 

「……そんなことはないぞ?」

 

瑞希に図星を指されて一瞬言葉が遅れた。

 

「フフッ。やっぱり鏡護君は優しいです。昔から私が困っているときには必ず助けに来てくれましたし……」

 

「なっ!昔の話は今は関係ないだろう!」

 

恥ずかしくなって思わず大きな声が出てしまう。

 

「そんなことありません。だって鏡護君がいつも“そう”だったから私は……」

 

瑞希が何か言っていますが、後ろの方は声が小さ過ぎて聞き取れなかった。

 

.....なぜだろう。なんだか妙にむずがゆさを感じる。その空気に耐えられなくなった俺は、話題を逸らそうと試みる。

 

「そ、そうだ!その手紙、上手くいくといいな!」

 

「あ……。はいっ!頑張りますっ!」

 

そんな俺に応えたのは、瑞希の満面の笑み。その笑顔を見て思った。

瑞希は本当にその人の事が大好きなのだと。そして、やはり俺は名も知らぬその男のことを羨ましく思う。

 

「で、いつ告白するんだ?」

 

下世話だとは思ったが、聞いてみた。これくらいはいいよな?

 

「え、ええと……全部が終わったら……」

 

瑞希は真っ赤になりながらもそう答えた。

 

「そっか。それなら手紙よりも直接口で伝えた方がいいかもな」

 

「そ、そうですか?鏡護君はその方が好きですか?」

 

何故俺に聞くんだ?.....瑞希の意図がわからないが、とりあえず答える。

 

「あ、ああ。俺なら直接顔を合わせて言ってもらえた方が嬉しいな。」

 

「本当ですか?今の言葉、忘れないでくださいね?」

 

「え?あ、ああ」

 

瑞希はまるで金言を得たかのよう嬉しそうにしていた。

 

 

 

「……そういえば今何時なんだ?」

 

今更ながら時間が気になる俺。

 

「今はもう6時を過ぎたところですよ」

 

「なにっ!?」

 

だいぶ時間が経っていたようだ。見れば、外も暗くなっている。

 

「……まさか瑞希はずっと付き添っててくれたのか?」

 

「そうですよ」

 

「それは悪いことをしたな。すまない……いや、ありがとう、と言うべきかな?」

 

「はい!どういたしまして」

 

「……ふむ、そうだな。お礼といっちゃなんだが、送って帰ろう。どうだ?」

 

「へっ?……いいんですか?」

 

「ああ。遠慮なんかするなよ?」

 

「はいっ!それじゃあお願いします。」

 

「お任せください、姫」

 

ちょっと冗談めかしてそう言うと、瑞希も笑ってくれた。

やっぱり彼女には涙ではなく笑顔が似合う。そう思う俺だった。




あとがき

作者 「これで本当にBクラス戦終了~!」

鏡護 「うむ。根本はさぞ素晴らしい経験が出来ただろう」

作者 「ところで女装男子の写真なんか撮ってどうするの?」

鏡護 「無論、写真集を作る。発行部数は3部の予定だ」

作者 「3冊?その用途は?」

鏡護 「一応鑑賞用、保存用、脅迫用、だな」

作者 「誰も見たがらないと思うし、保存する意味もわからないけど、脅迫用って?」

鏡護 「次に根本が何かやった時にコレで脅す」

作者 「……根本君は本当にご愁傷様です」

鏡護 「それより作者。後半のアレはなんだ」

作者 「アレ?……ああ、アレね」

鏡護 「そうだ。……どうして瑞希とあんなことになった?」

作者 「あるぇ~?そんなこと言っちゃって、ほんとは嬉しかったんだろ?」

鏡護 「っっ////あ、あれはだな。そ、その……」

作者 「真っ赤になっちゃって。このムッツリが」

鏡護 「……。……お前を殺して俺も死ぬ……」

作者 「……って、えぇーっ!?ちょっと待て!早まるな!」

鏡護 「うるさいっ!大人しく俺に殺されろっ!」

作者 「イヤだよっ!誰がハイそうですか、なんて答えるかっ!」

鏡護 「くっ!どうすればいいんだ!?」

作者 「どうもしなくていいよ!……もう次回予告いこうかな……。コホンッ!

   次回、第9問『vsAクラス① 脅迫?いいえ交渉です(仮)』

   を、お楽しみに~!」


鏡護 「うおぉーーっ!俺はどうすれば……
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