あの後、瑞希を家まで送っていった僕は、家に帰るとすぐにベッドに潜り込み、そのまま深い眠りにつきました。
翌日は起きようとすると全身に激痛が走って一歩も動けなかった為、学校を欠席しました。反動の筋肉痛が出たのです。
そして補給テストも終わった3日後の朝。
いよいよ残るはAクラス戦のみとなった僕達は、もうじきお別れになるだろうFクラスの教室で最後の作戦会議をしています。
「まずは皆に礼を言いたい。周りの連中には不可能だと言われていたにも関わらずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」
雄二が人に素直に頭を下げるなんて珍しいですね。
「ゆ、雄二、どうしたのさ。らしくないよ?」
「ああ。自分でもそう思う。だが、これは偽らざる俺の気持ちだ」
ですがこういう風に振舞えるからこそ、リーダーとしては一流なんですよね。
「ここまで来た以上、絶対にAクラスに勝つ!勝って、生き残るには勉強すればいいってもんじゃないという現実を教師どもに突き付けるんだ!」
『『おおーっ!』』
『『そうだーっ!』』
『『勉強だけじゃねぇんだーっ!』』
今やFクラスの心は1つになっています。これこそが僕達の強さの源です。
「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎打ちで決着を着けたいと考えている」
僕を含めたいつものメンバーは先日話を聞いていたから驚きませんでしたが、そうでない皆は当然の如く驚いています。
『どういうことだ?』
『誰と誰が一騎打ちするんだ?』
『それで本当に勝てるのか?』
「落ち着いてくれ。それを今から説明する」
雄二がパンパンと手を叩いて皆を落ち着かせます。
「やるのは当然、俺と翔子だ」
Aクラス代表霧島翔子さんと、Fクラス代表坂本雄二。クラス間の戦争を代理で行うのですから、代表同士が戦うのは当然です。
「そんなっ!バカの雄二が勝てるわけなぁぁっ!?」
口には出しませんでしたが、正直僕も明久と同意見です。雄二には何か秘策でもあるんでしょうか?そこら辺は僕達も聞いてないのでわかりません。
.....というかですね、雄二。冗談にしても友人に向かってカッターを投げるのは止めてください。
「次は耳だ」
.....どうやら本気だったようです。
「まぁ、明久の言うとおり確かに翔子は強い。まともにやりあえば勝ち目はないかもしれない」
あれ?そこを認めてしまうんですか?
「だが、それはDクラス戦もBクラス戦も同じだっただろう?まともにやりあえば俺達に勝ち目はなかった」
確かにそうでした。ですが実際には、僕達はこうして勝ち進んできていますね。
「今回だって同じだ。俺は翔子に勝ち、FクラスはAクラスを手に入れる。俺達の勝ちは揺るがない」
最初は誰もが勝てないと思っていた試召戦争を勝利に導いてきた雄二の言葉。
例え無理に思えても、その言葉を否定する人はもうこのクラスにはいません。
「俺を信じて任せてくれ。過去に神童とまで言われた力を、今こそ皆に見せてやる」
『おぉぉーーーっ!!』
1つになったクラスの声。それは皆が雄二を信頼している証です。
「さて、具体的なやり方だが……一騎討ちではフィールドを限定するつもりだ」
「フィールド?何の教科でやるつもりじゃ?」
「日本史だ」
.....日本史?
霧島さんが日本史が苦手と言う話は聞いたことがありませんし、雄二が得意だと言うのも聞いたことがありませんが、どうしてでしょう?
「ただし、内容は限定する。レベルは小学生程度、方式は100点満点の上限あり、召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする」
小学生レベルで上限あり?ますます雄二の考えがわかりません。
「でも、同点だったら、きっと延長戦だよ?そうなったら問題のレベルも上げられちゃうだろうし、ブランクのある雄二に厳しくない?」
「確かに明久の言う通りじゃ」
明久の言う通りです。
今のところ、雄二が霧島さんに勝利するイメージは全く想像できません。
「おいおい、あまり俺を舐めるなよ?いくらなんでも、そこまで運に頼り切ったやり方を作戦などと言うものか」
「??それなら、霧島さんの集中を乱す方法を知っているとか?」
「いいや。アイツなら集中なんてしていなくても、小学生レベルのテスト程度なら何の問題もないだろう」
確かに、霧島さんなら教師の監視の目がある中での妨害程度で集中力を乱すことなどないでしょう。
「雄二。あまりもったいぶるでない。そろそろタネを明かしてもいいじゃろう?」
クラスの皆も、そしてもちろん僕も秀吉の言葉に頷きます。
「ああ、すまない。つい前置きが長くなった。今回俺がこの方法を採った理由はただ1つ。ある問題が出れば、アイツは確実に間違えると俺が知っているからだ」
ある問題、ですか。何でしょう?
「その問題は――――『大化の改新』」
「大化の改新?誰が何をしたのか説明しろ、とか?そんなの小学生レベルの問題で出てくるかな?」
「いや、そんな掘り下げた問題じゃない。もっと単純な問いだ」
「単純というと―――――何年に起きた、とかかな?」
「ビンゴだ鏡護。その年号を問う問題が出たら、俺たちの勝ちだ」
なるほど。ちなみに大化の改新が起きたのは645年ですね。
「大化の改新が起きたのは、645年。こんな簡単な問題は明久ですら間違えない」
.....雄二、その明久が思いっきり顔を明後日の方角に向けてますよ?
「だが、翔子は間違える。これは確実だ。そうしたら俺達の勝ち。晴れてこの教室とはおさらばって寸法だ」
雄二の作戦は理解しました。
しかし、件の問題が出なかったら前提から崩れてしまいます。そこは運頼みですか.....
ところで、さっきからずっと気になっていたんですが――
「あの、坂本君」
「ん?なんだ姫路?」
「霧島さんとは、その……仲が良いんですか?」
そうなんです。さっきから雄二は霧島さんのことを『翔子』とか『アイツ』とか呼んでいます。余程親しい間柄でなければ、そんな呼び方はしません。
「ああ。アイツとは幼馴染だ」
「総員、狙えぇっ!」
「なっ!?なぜ明久の号令で皆が急に上履きを構える!?」
「黙れ、男の敵!Aクラスの前にキサマを殺す!」
「俺が一体何をしたと!?」
男子生徒全員が一斉に両手に上履きを抱えて投擲の構えを取ります。
なんて無駄な団結力なんでしょうか。
「遺言はそれだけか?……待つんだ須川君。靴下はまだ早い。それは押さえつけた後で口に押し込むものだ」
「了解です隊長」
しかもいつの間にか明久が隊長になっています。
「くそっ、なら道連れを増やしてやる!おい皆、鏡護は姫路、木下姉弟と幼馴染だぞ!」
『『なにぃーっ!?』』
瞬間、クラス全員が驚愕の声を上げました。
「攻撃部隊を半分に分けて鏡護にも攻撃用意!!」
『『サー、イエッサー!』』
途端にこちらにも向けられる殺気。
「ちょっ!?雄二、なんてことしてくれたんだ!」
「うるさい!俺だけがやられてたまるか!」
もう雄二はただの八つ当たりですね。酷いです。
「あの……鏡護君?」
「瑞希?どうかした?」
「鏡護君は霧島さんが好みなんですか?」
「うーん。確かに美人だとは思うけど……」
「…………」
「えっと、瑞希サン?どうして君は僕に向かって攻撃態勢を取るのかな!?ってか島田さんもなんで明久に向かって教卓なんてものを投げようとしてるのさ!?」
あれはどう見てもオーバーキルです。
「まぁまぁ。落ち着くんじゃ、皆の衆」
パンパンと手を叩いて、秀吉が仲裁に入ってくれました。ありがとう、秀吉。持つべきものは理解ある幼馴染ですね。
「む。秀吉は雄二と鏡護が憎くないの?」
「冷静になって考えてみるが良い。相手はあの霧島翔子じゃぞ?男である雄二に興味があるとは思えんじゃろうが」
.....ああ、確かに。
「むしろ、興味があるとすれば……」
「……そうだね」
僕達の視線が一人に集中します。
「な、なんですか?もしかして私、何かしましたか?」
慌てている瑞希。大丈夫です、あなたは何もしていません。何もしていませんが、何かされる可能性が高いだけです。
「とにかく、俺と翔子は幼馴染で、小さい頃に間違えて嘘を教えていたんだ」
昔は《神童》などと呼ばれていた雄二が間違えるとは、珍しいこともあったんですね。
「アイツは一度教えたことは忘れない。だから今、学年トップの座にいる」
なるほど。しかし今回はそれを逆手に取るというわけですね。
「俺はそれを利用してアイツに勝つ。そうしたら俺達の机は――」
『『システムデスクだ!』』
* * *
「一騎討ち?」
「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎打ちを申し込む」
ただ今、Aクラスで宣戦布告中です。ちなみにこちらのメンバーはいつもの仲間達です。
「うーん、何が狙いなの?」
現在雄二との交渉のテーブルに着いているのは、秀吉の姉で僕の幼馴染の優子です。
そう、何故かクラス代表の霧島さんではなく、優子なんです。
「もちろん、俺達Fクラスの勝利が目的だ。」
まあ優子が疑うのも当然です。最下位クラスである僕達が、一騎討ちで学年主席の霧島さんに挑もうと言うのですから。何か裏があると考えないはずがありません。
「面倒な試召戦争を手軽に終わらせることができるのはありがたいけどね、だからといってわざわざリスクを犯す必要もないかな」
「賢明だな」
しかし、ここまでの進行は予定通り。ここからが交渉の始まりです。
「それよりCクラスはどうだった?」
「時間は取られたけど、それだけだったわよ?ああ、一つ面白い話が聞けたわね」
ゾクッ!
マズいです。頭の中で警鐘がガンガン鳴っています。
「あー、その、優子サン?その件について後でお時間をいただいても?」
戦争なんかより自分の命の方が大切です。
「鏡護、何を言ってるんだ?」
不思議そうに雄二が首を傾げています。
「ごめん。これは僕の命に関わるんだ。説明は後でするから」
「そ、そうか……」
さあ、優子の返答は?
「いいわ。それじゃあ後でじっくり話し合いましょう?」
それを聞いて、僕はホッとしました。とりあえず釈明する機会はくれるようです。
「それなら、Bクラスとやりあう気はあるか?」
「Bクラスって……、昨日来ていたあの……」
「ああ。アレが代表をやっているクラスだ。幸い宣戦布告はまだされていないようだが、さてさて。どうなることやら」
意地悪く雄二が笑います。
「でも、BクラスはFクラスと戦争したから、3ヶ月の準備期間を取らない限り試召戦争はできないはずだよね?」
試召戦争の決まりの一つ、準備期間。
戦争に敗北したクラスは3ヶ月の準備期間を経ない限り自ら戦争を申し込むことができません。
これは負けたクラスがすぐさま再選を申し込んで、試召戦争が泥沼化しない為の取り決めです。
「知っているだろ?実情はどうであれ、対外的にはあの戦争は『和平交渉にて終結』となっていることを。規約には何にも問題もない。……ああ、Bクラスだけじゃなくて、Dクラスもな」
そう、これは設備を入れ替えなかったからこそできる方法です。
「……それって脅迫?」
「人聞きが悪い。ただのお願いだよ」
まあこの交渉の仕方は、どう見ても
「うーん……わかったよ。何を企んでいるのか知らないけど、代表が負けるなんてありえないからね。その提案受けるよ」
「え?本当?」
優子の返事を聞いて明久が声を上げてしまいます。
折角の交渉がふいになったら、明久のせいですよ?
「だって、あんな恰好をした代表のいるクラスと戦争なんて嫌だもん……」
なんとも多分に私情の入った理由でした。
僕もそっちの立場なら絶対に嫌ですけど。
「でも、こちらからも提案。代表同士の一騎討ちじゃなくて、そうだね、お互い5人ずつ選んで、一騎討ち5回で3回勝った方が勝ち、っていうのなら受けてもいいよ」
「う……」
流石は優子。そのあたりは抜け目がありません。
「なるほど。こっちから姫路や鏡護が出てくる可能性を警戒しているんだな?」
「うん。多分大丈夫だと思うけど、代表が調子悪くて瑞希や鏡護が絶好調だったら問題次第では万が一があるかもしれないし」
そう言ってこちらに視線を向ける優子。
幼馴染なんですから、当然僕のことも知っています。
「安心してくれ。うちからは俺が出る」
「無理だよ。その言葉を鵜呑みには出来ないよ」
これは競争じゃなくて戦争だからね、と付け足す優子。
「そうか。それなら、その条件を呑んでも良い」
と雄二のあっさりとした返事が。
とりあえず妥協点、といったところですね。
「ホント?嬉しいな♪」
「けど、勝負する内容はこちらで決めさせて貰う。そのくらいのハンデはあってもいいはずだ」
こちらにしてみれば当然の主張です。
このままではこちらにとって少し不利でしたからね。
「え?うーん……」
またもや悩む優子。
クラスを代表して交渉のテーブルに着いたのですから、慎重になってますね。
「……受けてもいい」
「ぅわぁ!」
明久が突然大きな声を出しました。な、何事ですか!?
「……雄二の提案を受けてもいい」
突如現れた静かで、聞き覚えのある凛とした声。
いつの間にか霧島さんが近くに来ていました。
まさか、気配を消すことが出来るとは驚きです。
「あれ?代表。いいの?」
「……その代わり、条件がある」
「条件?」
「……うん」
明久の返事に頷く霧島さん。
そのまま無言で雄二を見た後に姫路さんを値踏みするかのようにじっくりと観察します。
そして、雄二に顔を向けて言い放ちます。
「……負けた方は何でも1つ言うことを聞く」
.....これは、色々と問題があるんじゃないでしょうか?主に瑞希に、ですが。
「…………(カチャカチャ)」
「ムッツリーニ、まだ撮影の準備は早いよ!というか、負ける気満々じゃないか!」
何故かものすごい勢いでカメラの用意を始める康太。
それを見た明久が止めに入ります。
.....というか、康太がカメラを準備する=僕達の負け、というのはいつ決まったんでしょうか。
「じゃ、こうしよう?勝負内容は5つのうち3つをそっちに決めさせてあげる。その代わり2つはうちで決めさせて」
まあ、無難な妥協案でしょう。
(姫路さん、いいの?)
(え?何がですか?)
(何が、って。もし僕達が負けちゃったら姫路さんは……)
(何の事だかわからないですけど、きっと大丈夫ですよ)
(でも、もし負けたら、姫路さんは霧島さんに――)
明久が瑞希と小声で話しています。確かに僕もちょっと心配です。
「交渉成立だな」
「ゆ、雄二!何を勝手に!まだ姫路さんが了承してないじゃないか!」
雄二があっさりと決めてしまいました。本当に大丈夫ですか?
「心配すんな。絶対に姫路に迷惑はかけない。」
自信満々のようですが、そこまで勝利を確信しているのでしょうか。
「……勝負はいつ?」
「そうだな。10時からでいいか?」
「……わかった」
「よし。交渉は成立だ。教室に戻るぞ」
「そうだね。皆に報告もしなくちゃいけないし」
そうして優子に話がある僕を残して、雄二達は先にAクラスを去ろうとします。そこへ.....
「瑞希。悪いんだけど、あなたとも話したいことがあるから少し残ってくれる?」
はて?何故か優子が瑞希を呼び止めました。
「優子ちゃん?……わかりました」
多少疑問に思いながらも、瑞希はその場に留まります。
「どうした優子。瑞希も関係があるのか?」
とりあえず疑問をぶつけてみることにします。
「いいえ。瑞希にはアンタの話とは別件で用があるの」
僕とは別の用事?.....よくわかりません。
「じゃあ、とりあえず僕からでいいかな?」
「ええ。どうぞ」
わかりませんが、そういうことなら自分の用件をさっさと済ませてしまおうと思って優子から許可を取ります。
「まずはごめんなさい。Cクラスの件は作戦だったとはいえ、優子には不快な思いをさせちゃっただろうし」
「そうよ。どうしてか私がCクラスを豚呼ばわりした高慢女ってことになってたんだからね」
「うん。ごめん。秀吉と一緒になって煽った僕にも責任はあるよね」
「本当ならこの場で全身の関節を逆に曲げてあげてもいいんだけど、条件付きで許してあげないこともないわ」
さらりと恐ろしいことを言われましたが、なんと優子から救いの手が。
「……条件を聞かせてください」
僕には選択肢など存在しません。迷うことなく命が助かる道を選びます。
「試召戦争で私と戦いなさい」
「へっ?」
「だから、この後の試召戦争で私と戦って」
「えっ、それだけ?」
驚きました。まさかそんな軽い条件でいいなんて。
「もちろんまだあるわよ?私と戦って、鏡護が勝てたらこの件は不問にしてあげる。その代わり私に負けたら1つ言うことを聞きなさい」
.....ですよね~。まあそんなことだろうとは思いましたが。
「わかった。その条件を呑むよ」
「決まりね。じゃあアタシは瑞希との話があるから、アンタは帰りなさい」
「わかった。それじゃ、また後で」
そうして優子と別れ、僕はFクラスへ戻りました。
―Side 瑞希
「……さて、瑞希。待たせて悪かったわね」
鏡護君を見送った優子ちゃんが私の方に向き直ると、そう切り出しました。
「大丈夫ですよ。それより、私に話って何ですか?」
私には思い当たる節がなかったので、素直に優子ちゃんに聞いてみます。
「話っていうのはね、瑞希。鏡護のことよ」
「鏡護君のこと、ですか?」
「ええ、そうよ」
まだ彼女の言いたいことがわかりません。
「それって――」
「単刀直入に聞くわ」
私の言葉を遮って優子ちゃんが“それ”を口にしました。
「瑞希。あなた――鏡護のことが好きなんでしょ?」
「ふぇっ!?そ、それは――」
「ちなみに誤魔化しても無駄よ。この間の昼食会の時に確信したから」
「うぅ……」
咄嗟に誤魔化そうとした私は、彼女に機先を制されて何も言えなくなります。
「さあ。正直に話して頂戴」
そう言って、優子ちゃんは私に『答え』を求めてきます。
私は優子ちゃんの真意を知ろうと思い、彼女の目を見ました。
――彼女の目は真剣そのものでした。その目は私に一切の言い逃れなど許さないと言っているようです。
そして、私は彼女のそんな瞳を見ているうちに、“あること”に気が付きました。
そうか、優子ちゃんも“そう”なんですね.....
それがわかってしまった私は、彼女には自分の素直な気持ちを打ち明けなければダメだと思いました。
「……そうです。私は鏡護君のことが大好きです」
「……やっぱりね」
「でも、それは優子ちゃんも同じですよね?」
「っ!?……はぁ、そりゃわかっちゃうわよね」
「はい」
やっぱり私の考えは当たっていました。同時に、彼女の考えていることもわかりました。
「先程の鏡護君とのお話、優子ちゃんは自分が勝ったら鏡護君に告白するつもりですね?」
「っ!?……驚いた。それもバレちゃうんだ」
「はい。もしかしたら、くらいのつもりだったんですが」
「うん。それも正解。それで瑞希。それを知ったあなたはどうする?いえ、どうしたい?」
「……私は――鏡護君のことは諦めたくありません。……実は私も、今回の試召戦争が終わったら鏡護君に告白するつもりでした」
「……そうだったんだ」
「はい。……だから、優子ちゃんが告白する時は私も鏡護君に告白しますっ!」
「そう……って瑞希、それ本気!?」
「はい!私は本気です!」
「……なんか瑞希には驚かされっぱなしね。……だったらいっそのこと、2人して鏡護に面倒見てもらっちゃいましょうか♪」
「えっ!?……いいんですか?」
「そりゃ、私もちょっとは不満だけどね。でも私も瑞希もお互いに譲る気はなさそうだし、私は瑞希だったら許せちゃうわ」
優子ちゃんの提案した未来を想像してみた私は、確かにそれもいいかも、なんて考えてしまいました。
「……そうですね。私も優子ちゃんだったら許しちゃうと思います」
「ふふっ」
「ははっ」
そうして私達はお互いに顔を見合わせると、どちらからともなく笑い出しました。
ひとしきり2人で笑った後、私は優子ちゃんに言いました。
「それじゃあ鏡護君と戦う時だけ、こっそり優子ちゃんを応援しますね」
「ありがとう。瑞希の応援があれば百人力よ」
「はいっ!お互い頑張りましょうね!」
「ええ」
最後に優子ちゃんと固く握手を交わして、私はAクラスを後にしました。
―Side Out
あとがき
作者 「は~い、今回もスペシャルゲストをお呼びしてます!正ヒロインのお2人です!」
瑞希 「よろしくお願いします」
優子 「よろしく」
作者 「え~、早速ですがお2人にはお聞きしたいことがあります」
2人 「「何でしょう(かしら)?」」
作者 「ぶっちゃけ主人公ハーレムルートってどうよ?」
瑞希 「えーっと、私としては2人で決めたことだから特に気にしてませんけど」
優子 「私もよ。瑞希とお互いに納得しあったんだから、それでいいの」
作者 「え~?もっと2人でドロドロの愛憎劇を期待したんだけど」
瑞希 「私達に限ってそれはないですよ。……というか昼ドラの見過ぎじゃないですか?」
優子 「そうね。私達は互いに互いの幸せをちゃんと願っているもの」
作者 「なんか信じられん。……では次にお2人が鏡護を好きになったきっかけは?」
瑞希 「私は小学生の時にクラスで苛められてたところを助けてもらって……////」
優子 「私は……そうね。『素の自分』を好きだって言ってくれたから、かしら////」
作者 「おおーっ!なんかいかにも青春、って感じですね!」
瑞希 「ち、茶化さないでくださいよぅ」
優子 「そ、そうよ」
作者 「はいはい、ご馳走様でした。それでは次回の内容ですが」
瑞希 「Aクラス戦スタート、ですね」
優子 「私と鏡護のバトルがあるわね」
作者 「台詞盗られた……グスン」
瑞希 「……あれっ?作者さんが落ち込んじゃいましたよ?」
優子 「いいのよ、そんな奴放っとけば。それより次回予告、やりましょう?」
瑞希 「わかりました。それでは……」
2人 「「次回、第10問『Aクラス戦開幕!因縁に終止符を!(仮)』
を、よろしくお願いしま~す♪」」