バカと天眼の賢者と召喚獣 ※凍結   作:天御柱

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補習第2問 『デートでわかる男の甲斐性』

―Side 明久

 

 

 

試召戦争を終えた僕は、鉄人の姦計(?)によって美波と一緒に映画館に来ている。

 

美波は僕の意見は全て無視して、週末には駅前の喫茶店でクレープをおごる事も決められてしまった。

 

どうしてこうなったんだ.....

 

僕の食費が.....(涙)

 

僕の少し前を歩く美波を見てみると、凄い上機嫌だ。

 

まあ彼女の嬉しそうな顔を見ていると少しくらいの出費は我慢しようか、なんて思ってしまう。

 

だけど......

 

 

『一般1800円、大学・高校生1500円、小・中学生1000円、幼児(3歳以上)900円、大金持ち75890円、酔っぱらいお断り、団地妻OK、未亡人OK、ご用の方は劇場スタッフまで……』

 

 

映画館の受付前に掲げられている料金案内を見て愕然とした。

 

さらに視線を併設されている売店に向けると――

 

 

『コーラMサイズ300円、ポップコーンSサイズ400円……』

 

 

なんて恐ろしい場所なんだ、映画館!

学割が効くとはいえ、チケット1枚1500円、飲み物と食べ物で700円の合計2200円を2人分だって!?

 

ダ、ダメだ.....

 

僕は思わずその場に膝をついてしまった。

 

「う~ん……ねえ、アキはどれが見たい?……って何してるのよ」

 

後ろを振り返った美波が僕を見てそう言ってきた。

 

「ははは……ちょっと映画館という場所に絶望してただけさ……」

 

 

「……諦めろ明久」

 

 

あれ?この声は――

 

「男とは……無力だ」

 

後ろを振り向くと、そこには鎖でグルグル巻きにされて転がっている雄二とその鎖の端を両手で握り締める霧島さんの姿が。

 

 

.....それ、なんてプレイ?

 

 

「ゆ、雄二……」

 

何故雄二がそんな格好をしているかわからなくて動揺する僕を置いて、2人は何を見るか話し出す。

 

「……雄二、どれが観たい?」

 

「早く自由になりたい」

 

「……じゃあ、『地獄の黙示録:完全版』」

 

「おい待て!それ3時間23分もあるぞ!?」

 

「……2回観る」

 

「1日の授業より長いじゃねぇか!?」

 

「……授業の間、雄二に会えない分の埋め合わせ(ポッ)」

 

「やっぱ帰る」

 

雄二は鎖で巻かれた姿をしたまま、転がりながら逃走しようとするけど――

 

「……今日は帰さない」

 

霧島さんがどこからともなく取り出したスタンガン(20万ボルト)を手に雄二に襲いかかる。

 

 

バチバチバチバチ……

 

 

「な、なんだ翔子!?な、それは、や、ちょ、ヤバ……」

 

避ける間もなく、スタンガンをくらって黒コゲになり、気を失う雄二。

 

そんな雄二を霧島さんは受付まで引き摺って行き―

 

「……学生2枚、2回分」

 

「はい学生1枚、黒コゲ鎖巻きの学生1枚、無駄に2回分ですね」

 

チケットを購入した。

 

えっ!?それでいいの!?

 

鎖にスタンガンだよっ!?

 

いくらなんでもそこまで営業スマイルを守らなくてもいいんじゃない!?

 

「憧れるよねぇ」

 

その様子を見た美波は、目をキラキラさせながら羨ましそうに2人を見送る。

 

 

……皆、何か間違ってると思うよ。

 

 

それにしても、霧島さんってあんなにも過激だったんだ。すごい意外だ。

 

 

「へぇ。霧島さんって、なんていうかアグレッシブだね」

 

 

そこへまた知っている顔が現れた。

 

.....鏡護と姫路さんに秀吉のお姉さん?

 

.....どうしてこの3人が一緒にいるんだろう?

 

それが気になった僕は、素直に本人に聞いてみることにした。

 

「ねえ鏡護。どうして鏡護達は3人でこんなところに来たの?」

 

「あれ、明久?僕たちはね、付き合い始めた記念に『デート』しに来たんだ」

 

.....イマ、コイツハナンテイッタ?

 

「ごめん。よく聞こえなかったよ。……それで、何をしに来たって?」

 

「だから、『デート』しに来たんだって」

 

「へぇ……誰と?」

 

「もちろん、瑞希と優子の2人とだけど?」

 

.....ほう、そうか。この野郎は姫路さんと秀吉のお姉さんと『デート』か.....

 

「殺してやるっ!」

 

「うわぁっ!?」

 

チッ、初撃はかわされたか。

 

「あ、明久?いきなりどうしたのさ!?」

 

「うるさい!鏡護は1人楽しく『デート』だとっ!?誰が許してもこの僕は許さないぞ!」

 

「メ、メチャクチャだよっ!それに、明久だって島田さんと『デート』に来てたんじゃないの?」

 

.....な、なんだって!?

 

「えっ!?僕が美波と『デート』だって!?」

 

「そ、そうだよ!世間一般では男女が2人で映画館に出掛けることは『デート』と同義だと思うよ?」

 

.....そ、そうだったのか

 

僕は衝撃の事実に思わずその場に崩れ落ちてしまった。

 

「あ、あれ?明久、大丈夫?」

 

今度は逆に僕が心配になったのか、鏡護が声を掛けてくれる。

 

「う、うん……大丈夫……ちょっと思わぬ事実に気が抜けちゃっただけだから」

 

「そう?それならいいんだけど……」

 

まだ心配そうにしている鏡護に改めて大丈夫だと言って、僕は立ち上がった。

 

「そういえばさっき“付き合い始めた記念”って言ってたけど、いつからなの?」

 

とりあえず落ち着く為に何か話をしようと思って、もう1つ気になった事を聞いた。

 

「えっと……ついさっき、学校の視聴覚室で告白されて……」

 

.....やっぱりコイツは後日異端審問会の裁判にかけてやろう。

 

僕は心の中でそう決めると、鏡護と一緒に来ていた2人にも声を掛けた。

 

「そうなんだ。よかったね、2人とも」

 

「はいっ!」

 

「ええ、ありがとう」

 

.....フッフッフ。鏡護、君にはたっぷりと地獄を見せてあげるよ。

 

2人の笑顔を見て、さらに決意を固める僕。

 

「そういえば、3人は何を見るの?」

 

ここでようやく美波が話に入ってきた。

 

「僕達は『Sing for You~或る愛の詩~』を観ようと思ってるんだ(明久との『デート』、楽しんでね)」

 

「――っ////」

 

あれ?突然美波の顔が赤くなったけど、どうしたんだろう?

鏡護が耳元で何か言ったからみたいだけど、僕には聞こえなかったしな。

 

「へぇ。それってどんな映画なの?」

 

「う~ん。僕も詳しくは知らないんだけど、瑞希がどうしても観たいって言ってね」

 

「そうなの?」

 

「はいっ!とっても感動的なラブストーリーで、前から楽しみにしてたんです!」

 

姫路さんがここまで言うくらいなんだから、良い作品なんだろう。

 

「もし2人が決まってないようなら、一緒にどうかな?」

 

鏡護から思わぬ提案が。

 

「……いいの?だって3人で見ようとしてたんでしょ?」

 

「まあね。でもせっかくだからWデートってことにしようよ。2人はどうかな?」

 

鏡護が姫路さんと秀吉のお姉さんにお伺いを立てる。

 

「私は構いませんよ」

 

「私もいいわよ。美波とはまた話したかったし」

 

「そっか、ありがとう。……というわけだから、どうかな明久?」

 

「鏡護達がそう言ってくれるなら……」

 

正直美波と2人きりでっていうのは僕も避けたかったからね。(主に僕の身の安全の為に)

 

「(それに半分くらいなら出してあげるよ。どうせ今月もピンチなんでしょ?)」

 

「き、鏡護……」

 

ありがたい。正直僕の財布ではギリギリの出費だったのだから。

 

.....今回はこれに免じて、異端審問会への報告は止めてあげようかな。

 

さすがに命の恩人を売るのは気が引けたので、僕はそうすることにした。

 

「じゃあ僕がチケットを買ってくるから、皆はちょっと待っててね」

 

そう言って鏡護はチケット売り場へ行ってしまった。

 

.....う~ん、鏡護ってこういう時は男らしいんだなぁ。

 

なんて素直に感心してしまう僕だった。

 

 

 

―Side Out

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~、評判以上の名作だったね」

 

映画館から出てきた僕は開口一番、そう言いました。

瑞希からなんとなくストーリーは聞いていましたが、実際に観るとやはり違いますね。

 

物語中盤でヒロインが喉を潰して歌えなくなり、恋人と別れてしまった時はどうなることかと思いましたが、ラストは無事に彼女は声を取り戻し、彼も帰ってきてハッピーエンドで終わったので本当に良かったです。

 

不覚にもちょっと泣いてしまいましたしね。皆には気付かれなかったようで、良かったです。

 

「さて、これからどうしようか?」

 

「う~ん、そうね……せっかくだから喫茶店でも行ってもう少しお喋りしたいわ」

 

「そうですね。なんだかまだまだ話し足りない感じがします」

 

僕の問いかけに2人がそう応えました。

 

「明久と島田さんは?」

 

「ウチは別にそれでいいわ」

 

「僕はどうしようかな……」

 

島田さんは快諾してくれましたが、明久は迷っているようです。

おそらく出費が.....などと考えているのでしょう。

 

.....仕方ありませんね。

 

「(明久、今日は僕の奢りでいいよ。でも、特別だからね?)」

 

「(き、鏡護……)僕も行くよ」

 

そう言って僕を見た明久の目が何故かキラキラ輝いていたのですが、何かあったんでしょうか?

 

 

そうしてこの日は喫茶店に寄って皆でまったりと過ごした後、明久&島田さんと別れた僕は瑞希と優子をそれぞれ家まで送ってから帰宅しました。

 

 

 

 

 

――翌日

 

 

『号外、号外だよ~!』

 

 

校門を入って直ぐのところで、そんなことを言いながら登校してくる生徒達の上に紙切れをばら撒いている人達がいました。

 

「ねえ、あれってうちの新聞部よね?」

 

「そうですね。何をしているんでしょう?」

 

「号外ってことは新聞を撒いてるんじゃないかな」

 

それにしても、どこぞの時代劇で見るように空に撒くというのはいかがなものでしょう。

 

ところで、今僕は優子と瑞希にそれぞれ腕を取られた状態で登校しています。

どうしてそんな事になっているかというと、

 

・朝家を出ようとしたら2人がドアの前に立っていて、

・事情を聞いたら、2人曰く付き合いだした最初の朝は一緒に登校したかったからとのことで、

・そういう事ならと僕が快諾したから、

 

というわけです。

 

周りの生徒達からビシビシと嫉妬と殺意の篭った視線を向けられていますが、僕は気にしないことにしています。

僕の両隣を歩く彼女達は、それだけ生徒達に人気があったということであり、そんな2人と付き合っている僕は幸せ者なのですから。それくらいは甘んじて受けるつもりです。

 

そうこうしていると、僕達のところにもその号外とやらが降って来ました。

僕はそれを掴み取ると、その中身を確認してみました。

 

――こ、これはっ!

 

「なになに、どうしたのよ?」

 

「何が書いてあったんですか?」

 

急に動きを止めた僕を不審に思った2人が僕の手に握られた新聞を覗き込んできました。そして――

 

「「――っ////」」

 

2人して顔を真っ赤にして、僕と同じようにその場で固まってしまいました。

 

 

.....号外の見出しにはこう書いてあったんです。

 

 

『「お付き合いしたい2年生女子ランキング」のトップ3に熱愛スクープ!』

 

 

そして、記事には次のような文章が。

 

 

『「お付き合いしたい2年生女子ランキング」のトップ3、霧島翔子さん、姫路瑞希さん、木下優子さんに彼氏ができたという事実が発覚しました。霧島さんは2-Fの坂本雄二さんと、姫路瑞希さんと木下優子さんは同じく2-Fの天水鏡護さんと恋仲になったそうです。詳しい情報は確認が取れ次第追ってご報告いたしますので、続報をお待ち下さい』

 

 

 

こうして僕達の関係は全校生徒の知るところとなってしまいましたとさ。どっとはらい。




あとがき

作者 「すみません。今回はいきなり次回予告です!

   次回、補習第3問『僕と明久の恋文騒動(仮)』

   を、お楽しみに~!」
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