バカと天眼の賢者と召喚獣 ※凍結   作:天御柱

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―Side ??


「……雄二」
「なんだ?」
「……『如月ハイランド』って知ってる?」
「ああ。今建設中の巨大テーマパークだろ?もうすぐプレオープンっていう話の」
「……とても怖い幽霊屋敷があるらしい」
「廃病院を改造したっていうアレか?面白そうだよな」
「……日本一の観覧車とか」
「おお、相当デカいみたいだな。聞いた話だけでも凄そうだ」
「……世界で三番目に速いジェットコースターも」
「速い上に色々な方向を向いたり、ぐるぐる回ったりするっていうヤツか。どんなモンなのかわからんが、考えるだけでもワクワクしてくるな」
「……他にも面白いものが沢山ある」
「それは凄いな。きっと楽しいぞ」
「……それで、今度そこがオープンしたら、私と」
「ああ、お前の言いたいことはよくわかった。そこまで行きたいなら――」
「……うん」
「今度友達と行ってこいよ」
「……握力には自信がある」
「ぐああぁっ!アイアンクローはよせっ!」
「……私と雄二、2人で一緒に行く」
「オープン直後は混みあってるから嫌ぐぎゃぁっ!」
「……それなら、プレオープンのチケットがあったら行ってくれる?」
「プ、プレオープンチケット?ケホッ、あれは相当入手が困難らしいぞ?」
「……行ってくれる?」
「んー、そうだなー、手に入ったらなー」
「……本当?」
「あーあー。本当本当」
「……それなら、約束。もし破ったら――」
「大丈夫だっての。この俺が約束を破るようなヤツに見えるか?」
「……この婚姻届に判を押してもらう」
「命に代えても約束を守ろう」


―Side Out



第12問 『出し物決めって結局無難なトコに落ち着くよね』

桜の花びらが徐々に坂道から姿を消し、代わりに新緑が芽吹き始めたこの季節。

僕達の通う文月学園では、新学年になって最初の行事である『清涼祭』の準備が始まりつつありました。

 

お化け屋敷の為に教室を改造し始めるクラス。焼きそばの為に調理器具を手配するクラス。この学校ならではの『試験召喚システム』について展示を行うクラス。学園祭準備のためのLHRの時間は、どのクラスも熱気を帯びています。

 

そして我らがFクラスはというと――

 

「清涼祭、何やろうか?」

 

「私は鏡護君と一緒にできれば何でもいいです!」

 

「フフッ。まったく瑞希ったら。ウチは喫茶店みたいな定番がいいと思うけど」

 

「それならワシはクラスで演劇をしてみたいのう」

 

 

――ガラガラッ

 

 

「お~い、お前達。話し合いは進んでいるか?」

 

「あ、西村先生。どうもです」

 

「……天水。お前達以外のヤツらはどこへ行った」

 

「ああ、それでしたら」

 

そう言って僕は窓の外を指差しました。

すると――

 

『吉井!こいっ!』

『勝負だ、須川君!』

『お前の球なんか、場外まで飛ばしてやる!』

 

校庭の方からそんな声が聞こえてきました。

 

「……アイツらは」

 

おおっ!一瞬にして西村先生が修羅の表情に変わりました。

 

「お前達はこのまま教室で待っていろ。俺はあのバカどもを連れ戻してくる」

 

そう言うと、西村先生は教室を出て行きました。

 

 

 

 

 

「さて。そろそろ春の学園祭、『清涼祭』の出し物を決めなくちゃならない時期が来たんだが――」

 

西村先生によって野球を中断された男子達が戻ってきて、早速クラス代表の雄二が話を始めています。

ですが.....

 

「とりあえず、議事進行ならびに実行委員として誰かを任命する。そいつに全権を預けるので、後は任せた」

 

心の底からどうでもよさそうな顔の雄二。

まったく.....相変わらず自分が興味ないことには全力で無気力なんですね。全てを誰かに押し付けて、自分はサボって寝る気なのでしょう。

 

「鏡護君。坂本君って学園祭はあまり好きじゃないんですか?」

 

試召戦争以来、僕の隣に席を移した瑞希が周囲の邪魔にならない程度に小声で話しかけてきました。

今日も可愛い笑顔が僕の目に眩しく映ります。

 

「直接本人に聞いたわけじゃないけど、とりあえず楽しみにしてるって事はなさそうだね。興味があればもっと積極的に動くはずだから」

 

「そうなんですか……。寂しいですね……」

 

おや?いつも明るい笑顔の彼女の表情の中に、一瞬ですが翳りが差したように思います。

.....気のせいでしょうか?

 

「鏡護君は興味ありますよね?」

 

少しだけ上目遣いで僕を覗き込んでくる瑞希。そ、それは反則です.....

 

「もちろんだよ。瑞希や優子と付き合い始めて最初の学校行事だからね。たくさん思い出を作りたいな」

 

「はいっ!私も鏡護君や優子ちゃんといっぱい思い出を作りたいです!」

 

「ははっ。瑞希はそんなに学園祭が楽しみなんだ」

 

「当然です!だって――ケホケホッ」

 

と、瑞希が急に口に手を当てて咳き込みだしました。顔も赤いようですし、まさか風邪でしょうか?

 

「大丈夫?」

 

「は、はい。すいません……」

 

ちょっと苦しかったのか、瑞希の目が少し潤んでいます。そういえば最近瑞希が咳をするのをよく見る気がします。

 

試召戦争に負けたおかげで、現在僕達の教室の設備は腐った畳と卓袱台から更にランクダウンして傷んだござとみかん箱になっています。普通の机と椅子に比べると格段に疲れますし、明らかに不衛生です。身体の弱い彼女が体調を崩してしまうことも当然考えられます。

 

「とりあえず、この状況は何とかしないとな……」

 

衛生的な環境と、身体に負担のかからない学習設備。この2つを用意しないと、近い将来瑞希は必ず倒れてしまうでしょう。試召戦争が再び解禁されるまではまだ2ヶ月程あります。できればそれまでに何とかしたいですね。

 

「んじゃ、実行委員は島田ということでいいか?」

 

不意に聞こえた雄二の言葉で沈みかけていた思考を引き戻されました。そういえば今は学園祭に向けた話し合いの最中でしたね。

 

「え?ウチがやるの?う~ん……、ウチは召喚大会に出るから、ちょっと困るかな」

 

突然の指名に難色を示す島田さん。

 

「雄二。実行委員なら、美波より姫路さんの方が適任なんじゃないの?」

 

「え?私ですか?」

 

突然明久に水を向けられて、瑞希が首を傾げています。まったく、いちいち仕草が可愛くて困りますね。

 

「姫路には無理だな。多分全員の意見を丁寧に聞いているうちに時間切れになるだろう」

 

この場合は雄二の意見が正しいと僕も思います。瑞希は優しすぎる娘ですから、少数を切り捨てることができないでしょう。

 

「それにね、アキ。瑞希も召喚大会に出るのよ」

 

「あれ?そうなの?」

 

初耳だった僕は思わず彼女に聞きました。

 

「はい。美波ちゃんと組んで出場するつもりなんです」

 

小さな手をぎゅっと握り締める瑞希。ああっ、だからいちいち仕草が(ry

 

「あれって確か学校の宣伝みたいなイベントなのに。2人とも物好きだなぁ」

 

僕らの通うこの文月学園には、世界中から注目を集めている『試験召喚システム』があります。なんでも今年はそのシステムを世界に公開する場として、清涼祭期間中に『試験召喚大会』なるイベントを企画しているそうです。

 

「ウチは瑞希に誘われてなんだけどね。瑞希ってばお父さんを見返すんだって言ってきかないんだから」

 

「お父さんを見返す?」

 

「うん。家で色々言われたんだって。『Fクラスのことをバカにされたんです!許せません!』って怒ってるの」

 

「ふ~ん。瑞希が怒るなんて珍しいね」

 

「だって、皆の事を何もわかっていないくせに、ただFクラスだって理由だけでバカにするんですよ?……それにFクラスには鏡護君もいるのに(ボソッ)。許せません!」

 

「…………」

 

多分今聞こえた小声の部分が理由の大部分を占めてるんじゃないかと思うのは僕の自意識過剰ではないと思います。

 

「だからFクラスのウチと組んで、召喚大会で優勝してお父さんの鼻をあかそうってワケ」

 

なるほど。確かに学年次席の実力を持つ瑞希と問題さえ読めればそれなりの点が取れる島田さんが組めば、優勝も不可能ではないでしょう。

 

「4人とも。こっちの話を続けていいか?」

 

「あ、ごめん雄二。島田さんが実行委員になるって話だったよね」

 

「だからウチは召喚大会に出るって言ってるのに」

 

「なら、サポートとして副実行委員を選出しよう。それなら良いだろ?」

 

「ん~……。そうね、その副実行委員次第でやってもいいけど……」

 

「そうか。では、まず皆に副実行委員の候補を挙げてもらう。その中から島田が2人を選んで決選投票をしたらいいだろう」

 

皆もいいな、と雄二がクラスメイト達に確認します。すると教室内からちらほらと推薦の声が聞こえてきました。

 

『吉井が適任だと思う』

『やはり坂本がやるべきじゃないか?』

『いや木下はどうだ?』

『天水がいいと思うんだが』

『姫路さんと結婚したい』

『ここは須川にやってもらった方が』

 

.....最後から2人目。顔は覚えましたよ。僕の瑞希に手を出そうとはいい度胸です。後で地獄を見せてあげましょう。

 

「ワシは明久が適任じゃと思うがの」

 

そうして秀吉が明久に1票を投じました。僕も便乗しましょう。

 

「僕も副実行委員は明久がいいと思うよ」

 

「ちょっと秀吉に鏡護。僕だってそういう面倒な役はできればパスしたいんだけど」

 

「それは皆も同じ意見じゃ。ならば適任の者にやってもらうのが良いじゃろう?」

 

「そうだよ。僕達は明久が適任だと思ったからこそ推薦したんだから」

 

明久が若干不満そうな顔をしていますが、正直言ってこれは雄二によって仕組まれた予定調和です。始めから明久には選択肢など存在しないんですよ。

 

「よし。じゃあ島田。今挙がった連中の中から2人を選んでくれ」

 

「そうね~。それじゃ……」

 

ある程度候補者が挙がったところで、島田さんがボロボロの黒板に決選投票候補者の名前を書き連ねました。

 

 

『候補①……吉井』

 

 

『候補②……明久』

 

 

ふむ。やはり予定調和ですね。島田さんもよくわかっています。

 

「さて。この2人のどちらがいいか、選んでくれ」

 

「ねぇ雄二。美波の候補の挙げ方はどう考えてもおかしいと思わない?」

 

『どうする?どっちがいいと思う?』

『そうだなぁ……。どちらもクズには違いないんだが……』

 

「こらぁっ!まじめに悩んでるフリをするんじゃない!あと、クラスメイトを平然とクズ呼ばわりするなんて、君らは人間のクズだ!」

 

明久、君もクラスメイトをクズ呼ばわりしたことに気付いてますか?

 

「ほらほら、アキってば。そんなことより、ウチとアンタでやることに決まったんだから、前に出て議事をやらないと」

 

「なんだか僕はいつもこんな貧乏くじを引かされている気がするよ……」

 

ええ。全くもってその通りです。

 

「んじゃ、後は任せたぞ。ふあぁ~……」

 

そして雄二はというと、2人にバトンを引き継ぐと大あくびをして席へと戻ってしまいました。

 

 

 

 

 

しばらく皆から意見を募ったところ、次のような案が挙がりました。

 

 

【候補①写真館『秘密の覗き部屋』】

 

【候補②ウェディング喫茶『人生の墓場』】

 

【候補③中華喫茶『ヨーロピアン』】

 

 

.....明久の斬新過ぎるネーミングセンスには脱帽です。

 

「皆、清涼祭の出し物は決まったか?」

 

そこへ西村先生がやってきて、黒板を見て深くため息を吐くと一言。

 

「……補習の時間を倍にしたほうがいいかもしれないな」

 

その気持ち、お察しいたします。しかしクラスメイト達はというと、

 

『せ、先生!それは違うんです!』

『そうです!それは吉井が勝手に書いたんです!』

『僕らがバカなわけじゃありません!』

 

.....必死で言い訳をしていますね。というか自分達の保身の為に明久を簡単に売るとはさすがFクラスです。

 

「馬鹿者!みっともない言い訳をするな!」

 

西村先生の一喝で静まりかえる教室。

さすがは西村先生。Fクラスの皆の態度が気に入らなかったんですね。

 

「先生は、馬鹿な吉井を選んだ事自体が頭が悪い行動だと言ってるんだ!」

 

.....一瞬でも感動してしまった僕が馬鹿でした。西村先生もだいぶ思考がFクラスに染まってきています。

 

「まったくお前たちは……。少しは真面目にやったらどうだ。稼ぎを出してクラスの設備を向上させようとか、そういった気持ちすらないのか?」

 

ため息まじりの鉄人の台詞を聞き、皆が目を輝かせる。

 

『そうか!その手があったか!』

『なにも試召戦争だけが設備向上のチャンスじゃないよな!』

『いい加減この設備にも我慢の限界だ!』

 

一気に活気づく皆。設備への不満を理由に試召戦争を起こした僕達ですから、当時よりも更にランクの低い設備など我慢できるわけがありません。

しかし今更そこに気がつくとは、つくづくバカの集まりと言いますか.....

 

「み、皆さんっ!頑張りましょう!」

 

すると瑞希が立ち上がり、胸の前で小さくガッツポーズを作りながら声をあげました。

彼女がここまで積極的に動こうとするとは珍しいですね。何か特別な理由でもあるのでしょうか?

 

そして彼女の言葉をきっかけに、再び教室内で活発な議論が繰り広げられます。

しかし始めこそ良かったものの、次第に脱線し始めると島田さんが静止を呼びかけても効果なし。

 

ちょっとコレは良くないですね.....こういう時に頼みの雄二は使い物になりませんし。

仕方ありません。僕が何とかしましょう。

そうして僕はコンタクトを外して、壇上に上がると――

 

 

――バンッ!

 

 

思い切り黒板を叩いて注目を集めるとクラスメイト達に向かって脅迫(おはなし)を始める。

 

「いい加減にしろ、お前達!やる気があるのは構わんがこのままでは埒が明かないから、出し物は今挙がっている3つから決めることにする。文句のあるヤツは俺が相手してやるからかかってこい」

 

『ヤバい。蒼氷の銀狼(フェンリル)が起きたぞ』

『触らぬ狼に祟りなし、だな』

『ああ。アレには逆らわない方がいい』

 

なんだか余計な呼び名がつけられた気がするが今は静かになったことを良しとしよう。

 

「……いないようだな。島田、先に進めてくれ」

 

「う、うん。ありがとう天水。それじゃ、写真館に賛成の人!――はい、次はウェディング喫茶!――最後に、中華喫茶!」

 

島田が声をあげる度にクラスメイト達が手を挙げる。

 

結局最終的には僅差だったが、Fクラスの出し物は中華喫茶に決まった。

 

「それなら、お茶と飲茶は俺が引き受けるよ」

 

須川、料理出来たのか

 

「…………(スクッ)」

 

おや、康太?

 

「康太、料理出来るのか?」

 

「…………紳士の嗜み」

 

そんな嗜みは聞いたことがないぞ。

しかしどうせ康太の事だ。チャイナ服見たさに通い詰めているうちに覚えたんだろう。

 

「まずは厨房班とホール班に分かれてもらうからね。厨房班は須川と土屋の所、ホール班はアキの所に集まって!」

 

.....明久が勝手にホール班のトップにされているんだが、そこはスルーなのか?

 

「それじゃ、私は厨房班に――」

 

瑞希が客の命の危険(NGワード)を口にしようとするが、そうはさせん!

 

「ダメだ、瑞希。君の料理にはまだ合格を出すわけにはいかないからな。これは師匠命令だ」

 

瑞希の料理の危険性に気付いた俺は彼女と付き合い始めてからというもの、時々料理を教えていた。

最近になってようやくおにぎりと卵焼きをまともに作れるようになったくらいなのだ。

今の彼女のレベルでは、学園祭の喫茶店でお客さんを相手にすることはまだまだ許されることではない。

 

『鏡護、ナイス!』

『鏡護、グッジョブじゃ』

『…………(コクコク)』

 

見ると彼女の料理の威力を知る皆が俺に向かって親指を立てていた。

ふと雄二を見てみると、寝ているはずなのに小刻みに身体が震えていた。瑞希の料理を夢にでも見たか、雄二?

 

「うぅ……。さすがに鏡護君にそう言われては仕方ありませんね」

 

目に見えて落ち込む瑞希。.....少しキツく言い過ぎてしまったな。

 

「だ、大丈夫だ瑞希。君は可愛いから、むしろホールに出てお客さんをもてなしてくれた方がお店としても利益になるんだ」

 

「か、可愛いだなんて……////わかりました!鏡護君がそう言うなら、私はホールで頑張ります!」

 

「そうそう。姫路さんは可愛いんだからそれが1番痛ぁっ!み、美波!僕の背中はサンドバッグじゃないよ!?」

 

「アキ。ウチは厨房にしようかな~?」

 

「うん。適任だと思う」

 

明久よ、お前は自分の命が余程惜しくないと見えるな。

 

「鏡護はどっちにするのじゃ?」

 

「俺か?俺は料理ができるからな。当然厨房に入るつもりだ」

 

「そうか。ワシも厨房にしようかの」

 

「何を馬鹿なことを言っているのさ、2人とも。秀吉は可愛いし、鏡護も試召戦争の時みたいに女装すれば綺麗なんだからホールに決まってみぎゃあぁ!み、美波様!折れます!腰骨が!命に関わる大事な骨が!」

 

自ら更に墓穴を掘るとは、やはり明久はさすがだな。

 

「明久はああ言うとるが、どうするのじゃ鏡護?」

 

「まあ女装するかどうかは別として、少しくらいなら接客もするか」

 

「ならばワシもそうするとしよう」

 

 

「……ウチもホールにするわ」

 

「そ、そう、ですね……。それが、いいと、思います……」

 

こんな幕開けで果たして大丈夫なのだろうか。かなり不安だ.....

 

 

 

 

 

そして放課後。

 

「アキ、ちょっといい?それとできれば天水も」

 

明久と僕は島田さんに声を掛けられていました。

 

「どうしたの、美波?」

 

「島田さん、何かあったの?」

 

「えっと、ちょっと相談したいことがあってね……」

 

深刻そうな顔をする島田さんを見ると、どうやらあまり良い話ではなさそうです。

 

「相談?僕達で良ければ聞かせてもらうけど」

 

「そうだね。で、どんなこと?」

 

「2人ともありがとう。多分2人に言うのが一番だと思うんだけど――その、やっぱり坂本をなんとか学園祭に引っ張り出せないかな?」

 

.....雄二ですか。どうでしょう。話し合いの最中ずっと寝ていたくらいですから、本当にやる気はないんでしょうし。

 

「う~ん、それは難しいかなぁ。雄二は自分が興味ないことには驚くほど冷たいからね」

 

「でも、アキが頼めば動いてくれるんじゃない?だって……アンタ達は愛し合ってるんでしょう?」

 

わかります。明久が受けで、雄二が攻めですよね。

 

「もう僕お婿にいけない!」

 

島田さんも真顔でそんなことを言ってはいけませんよ。

そんなだから――

 

「どうして僕が雄二なんかと!だったら僕は、断然秀吉や鏡護の方がいいよ!」

 

ほら、明久がバカなことを叫ぶことになったじゃありませんか。

 

.....というか秀吉はともかく、どうして僕の名前が出るんでしょうね?

 

「あ、明久!?」

 

そこへ偶然近くを通りかかった秀吉の動きが止まります。

なんていうかお約束ですね。

 

「そ、その、お主の気持ちは嬉しいが、そんなことを言われても、ワシらには色々と障害があると思うのじゃ。その、ほら、歳の差とか……」

 

秀吉、そこで顔を赤らめて俯かないでください!それに君と明久の間にある障害は歳の差ではないでしょう?

 

それに明久!君も万更でない顔をするんじゃありません!

 

「……それじゃ、坂本は動いてくれないってこと?」

 

島田さんも平然と話を流さないでください!

 

「え?あ、うん。そういうことになるかな」

 

「天水はどうにかできないの?このままじゃ……」

 

目を伏せ、沈んだ面持ちになる島田さん。

 

「ところで、おぬしらは何の話をしているのじゃ?何やら随分と深刻な話をしておるようじゃが?」

 

「深刻って程の話じゃないんだけど、喫茶店の経営と設備の改善の話で――」

 

「アキ、そうじゃないの。本当に深刻な話なのよ……」

 

「え?どういうこと?」

 

「そういえばまだ理由を聞いてなかったね。話してくれる?」

 

「うん……本人には誰にも言わないで欲しいって言われてたんだけど、事情が事情だから一応秘密の話ってことにしてよね?」

 

「う、うん。わかった」

 

「「了解|(じゃ)」」

 

「実は瑞希なんだけど……あの子、転校するかもしれないの」

 

.....なるほど。朝から瑞希に感じてた違和感の正体はコレだったんですね。それにしても僕には話して欲しかったですね.....

 

「み、美波!ひ、姫路さんが転校って、どういうことさ!!」

 

島田さんに詰め寄る明久。

 

「どうもこうも、そのままの意味よ。このままだと瑞希は転校しちゃうかもしれないの」

 

「転校の原因はやっぱり『Fクラスの環境』かな?」

 

「えっ!?どういうことさ鏡護!」

 

今度は僕に詰め寄ってきます。

 

「簡単な話だよ。明久、Fクラスの設備は不衛生で快適とはとても言えず、クラスメイトはこう言っては何だけどバカばっかり。親からすれば、体が弱くて成績優秀な娘をそんな場所で勉強させたいとは思わないよ」

 

「うっ、確かに……」

 

「うん、天水の言う通りなのよ。だから試召戦争の時みたいに、坂本にFクラスを引っ張ってもらって喫茶店を成功させたい。そしてFクラスの設備を向上させたいの!」

 

「なるほどのう。それならば確かに雄二の力が必要じゃな」

 

「瑞希も両親に抵抗して『召喚大会で優勝して両親にFクラスを見直してもらう』とか考えてるんだけど、やっぱり健康の事を考えると設備をどうにかしないと。アキはその……瑞希が転校したりとか、嫌だよね……?」

 

島田さんが明久を探るような目で見ます。

 

明久はその意味に気付いている.....わけがないですね。

 

「もちろん嫌に決まってるさ!姫路さんに限らず、それが美波や秀吉、鏡護であっても!」

 

そんな明久の言葉には満点をあげたいと思います。

 

「そっか……うん、アンタはそうだよね!」

 

島田さんは本当に嬉しそうに頷いています。

 

「わかった。そういうことなら、何としても雄二を焚きつけてやるさ!」

 

「うん。自分の恋人の事も守れないようじゃ、男として失格だからね」

 

「そうじゃな。ワシもクラスメイトの転校と聞いては、黙っておれん」

 

「それじゃ、まずは雄二に連絡を取らないと」

 

明久が携帯を取り出して、雄二に連絡を取ります。

数コールした後.....

 

「あ、雄二?ちょっと話が……え?雄二、今何してるの?……雄二!?もしもし!もしもーし!」

 

と、何やら意味不明の会話が行われたらしく、通話が切られました。

 

「坂本はなんて言ってた?」

 

「えっと、『見つかっちまった』とか『鞄を頼む』とか言ってた」

 

「……何それ?」

 

「多分また霧島さんから逃げ回ってるんじゃないかな」

 

「そうじゃな。あれはああ見えて、異性には滅法弱いからの」

 

「そうすると、坂本と連絡を取るのは難しいわね」

 

「いや、これはチャンスだ」

 

「え?どういうこと?」

 

明久の言葉の意味がわからない、といった様子で島田さんが首を傾げます。

僕は明久とアイコンタクトを交わして頷き合います。

 

「雄二を喫茶店に引っ張り出すには丁度いい状況ってことだよ。島田さんと秀吉にも協力して欲しいんだけど」

 

「それは良いけど……坂本の居場所はわかってるの?」

 

「大丈夫だよ、美波。相手の考えを読めるのは、雄二だけじゃないからね」

 

「じゃあ、明久は雄二を頼むよ。タイミングもそっちに任せる」

 

「了解」

 

 

 

 

 

それからしばらくして、何故か優子と西村先生の声が聞こえたような気がしましたが、なにかあったんでしょうか?

.....2人が戻ってきたら聞いてみましょうか。

 

 

更にそれから数分後。

僕の携帯に明久から着信が来ました。

 

「じゃあ2人とも。作戦通りによろしく」

 

「本当にこんなことで坂本を引っ張り出せるの?」

 

「大丈夫大丈夫。さあ、電話に出て」

 

「わかったわ。……もしもし坂本?……ちょっと待って、今代わるから」

 

「(頼むぞ秀吉)」

 

「(了解じゃ)……雄二、今どこ?」

 

秀吉がそう言った途端、携帯の通話が切れたようです。

 

「さすが秀吉。相変わらず素晴らしい声真似だったよ」

 

「そうね。ほんと凄かったわ」

 

「そう手放しにほめられると、なにやらむず痒いのう」

 

 

 

少しして、雄二を連れた明久が教室に戻ってきました。

2人に途中で優子に会わなかったかと聞いてみたら、雄二が隠れていた女子更衣室で鉢合わせしたという返事が。

 

.....もちろん2人にはたっぷりと制裁(おしおき)をプレゼントしてあげましたが、なにか?




あとがき


作者 「今日はいきなり次回予告です!

   次回、第13問『目上の人にはきちんと敬語で話しましょう(仮)』

   を、」

作・鏡 「「お楽しみに~!」」
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