バカと天眼の賢者と召喚獣 ※凍結   作:天御柱

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第13問 『目上の人と話す時は正しく敬語を使いましょう』

「そうか。姫路の転校か……」

 

戻ってきた明久達に制裁(おしおき)をした後で、雄二には早速事情を説明しました。

 

「そうなると、喫茶店の成功だけでは不十分だな」

 

オンボロの教室を見回して雄二がそう口にします。

 

「不十分?どうして?」

 

明久。君はもう少し自分で考えることを覚えましょうね。

 

「姫路の父親が転校を勧めた要因はおそらく3つ」

 

そう言って雄二は3本の指を立てました。

 

「まず1つ目。ござとみかん箱という貧相な設備。快適な学習環境ではない、という面だな。これは喫茶店が成功したらその利益でなんとかできるだろう」

 

「2つ目は老朽化した教室。これは健康に害のある学習環境という面だ」

 

「1つ目は道具で、2つ目は教室自体ってこと?」

 

「そうだ。これに関しては喫茶店の利益程度じゃ改善は難しい。教室自体の改修となると、学校側の協力が不可欠だ」

 

その通りです。教室の改善など、生徒がお金を貯めたところでどうなるものではありません。

 

「そして最後の3つ目。レベルの低いクラスメイト。つまり姫路の成長を促すことが難しい学習環境ということだ。現在Fクラスで姫路と同等の学力を持っているのは、偶然Fクラス(ここ)に迷い込んだ鏡護だけだからな」

 

迷い込んだとは言い得て妙です。確かに僕は本来ならここにいるはずのない、いわばイレギュラーですからね。

 

「参ったね。随分と問題だらけだ」

 

「そうじゃな。1つ目だけならともかく、2つ目と3つ目は難しいのう」

 

「そうでもないさ。3つ目の方は姫路と島田で手を打ってあるんだろう?」

 

そうです。先程2人は召喚大会に出場すると言っていました。もし大会で優勝することができれば、Fクラスでも問題ないと思ってもらえることでしょう。

 

「この前、瑞希に頼まれちゃったからね。『どうしても転校したくないから協力して下さい』って。召喚大会なんて見世物にされるみたいで嫌だったけど、あそこまで必死に頼まれたら、ね?」

 

そう言う島田さんの表情はいつになく優しい感じに見えます。まるで面倒見の良いお姉さんですね。もしかして、歳の離れた弟か妹でもいるのでしょうか?

 

「翔子が参加するようだと優勝は厳しいが、アイツはこういった行事には無関心だしな。姫路と島田の優勝は充分ありえるだろう」

 

「そうだね。2人ならきっと何とかなるよ」

 

確かにもし霧島さんが出てくるようだと、当然ペアの人もAクラスでしょうから、優勝は相当苦しくなるはずです。彼女が召還大会に無関心で助かりました。

 

「本当なら姫路抜きでFクラスの生徒が優勝するのが望ましいけどな」

 

「それはまあ……仕方ないんじゃない?」

 

「……いや。鏡護、お前ならできるんじゃないか?」

 

「!そういえばそうだよっ!鏡護も出てみない?」

 

「えっ!?……確かに瑞希の転校が懸かってるんだもんね。わかった、大会に出るよ。」

 

「ならばワシが鏡護と一緒に出るとするかの」

 

僕も召喚大会のようなイベントはあまり好きではありませんでしたが、今回は恋人の転校が懸かっているので、僕個人の好き嫌いなど言っていられませんよね。

するとすかさず秀吉が協力を申し出てくれました。ありがたいです。

 

「そうだね。お願いできるかな、秀吉」

 

「もちろんじゃ」

 

「で、坂本。それはそうと、2つ目の問題はどうするの?」

 

島田さんの疑問に、雄二は至極あっさりと答えました。

 

「どうするも何も学園長に直訴したらいいだけだろ?」

 

「それだけ?僕らが学園長に言ったくらいで何とかしてくれるかな?」

 

「あのな。ここは曲がりなりにも教育機関だぞ?いくら方針とは言え、生徒の健康に害を及ぼすような状態であるなら、改善要求は当然の権利だ」

 

確かに雄二の言う通りここは一応教育機関ですから、交渉が上手くいけば3つの問題点が一気に解決する可能性もあります。

 

「それなら、早く学園長に会いに行こう」

 

思い立ったが吉日、ですね。

 

「そうだな。学園長室に乗り込むか。秀吉と島田は学園祭の準備計画でも考えておいてくれ」

 

「あ、秀吉は僕達の召喚大会へのエントリーもしておいてね」

 

「わかったわ。そっちは任せたわよ」

 

「了解じゃ」

 

そうして僕と雄二と明久は学園長室に向かいました。

 

 

     *     *     *

 

 

『……賞品の……として隠し……』

 

『……こそ……勝手に……如月ハイランドに……』

 

新校舎の一角にある学園長室まで来ると、扉の向こう側から誰かが言い争っている声が聞こえてきました。

かろうじて『賞品』、『如月ハイランド』という単語が聞こえてきましたが、何のことでしょう?

 

「どうした、明久、鏡護」

 

「いや、中で何か話をしてるみたいなんだけど」

 

「学園長は中にいるみたいだよ。良かったね、無駄足にならなくて」

 

「そうか。なら、さっさと中に入るぞ」

 

「失礼しまーす」

 

「あ、ちょっと2人とも!」

 

早速学園長室をノックするや否や、雄二と明久は中へ入っていってしまいます。.....せめて返事があるまで待ちましょうよ。そうは思いましたが、遅れてはいけないので2人の後に続きます。

 

「本当に失礼なガキどもだねぇ。普通は返事を待つもんだよ」

 

雄二達もそうですが、この人も大概ですね.....

そう言って僕達を出迎えたのは、長い白髪が特徴の藤堂カヲル学園長です。彼女は試験召喚システム開発の中心人物でもあります。研究者寄りの思考の持ち主なので、随分と規格外な所が多い人物です。

 

「やれやれ。取り込み中だと言うのに、とんだ来客ですね。これでは話を続ける事も出来ません。……まさか、貴女の差し金ですか?」

 

それに相対していたのは、鋭い目つきとクールな態度で一部の女子生徒に人気が高い、竹原教頭でした。

メガネをいじりながら、学園長を睨みつけています。

 

「バカを言わないでおくれ。どうしてこのアタシがそんなせこい手を使わなきゃいけないのさ? 負い目があると言う訳でもないのに」

 

「それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようですから」

 

「さっきから言っているように、隠し事なんてないね。アンタの見当違いだよ」

 

「……そうですか。そこまで否定されるなら、この場はそういう事にしておきましょう。……それでは失礼させて頂きます」

 

そう告げると、竹原教頭は部屋の隅に一瞬視線を送ってから部屋を出て行きました。

 

.....ふむ。これは何かありそうですね。

 

竹原教頭には実は陰であまりよろしくない噂もついて回っているのです。

曰く、学園長を今の座から失墜させようとしているとか、そのために他校の経営者達と密談の場を持っているとか。

 

「んで、ガキども。アンタらは何の用だい?」

 

「今日は学園長にお話があってきました」

 

「私は今それどころじゃないんでね。学園の経営に関することなら、教頭の竹原に言いな。それと、まずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってモンだ。覚えておきな」

 

.....いくら学園長とはいえ、貴女のような人に礼節を説かれるとは思いませんでしたよ。

 

「失礼しました。俺は2年F組代表の坂本雄二」

 

「同じく2年F組の天水鏡護です」

 

「それでこっちが――」

 

まず雄二と僕が名乗り、そのまま雄二が明久を示し、紹介します。

 

 

「――二年生を代表するバカです」

 

 

「ほぅ……。そうかい。アンタたちがFクラスの坂本と天水と吉井かい」

 

「ちょっと待って学園長! 僕はまだ名前を言ってませんよね!?」

 

まさか先程の紹介で明久の名前が即座に連想されるとは、さすがにちょっと明久に同情してしまいます。

 

「気が変わったよ。話を聞いてやろうじゃないか」

 

まるで映画の悪役のように口元を歪める学園長。これがこの学園で一番偉い人だと思うと、何となく嫌ですね。

 

「ありがとうございます」

 

「礼なんか言う暇があったらさっさと話しな、ウスノロ」

 

「わかりました」

 

相変わらず挑発的な学園長の物言い。

それにもかかわらず、雄二の態度や言動が未だに落ち着いたままであることに僕は驚いていました。雄二も意外と大人だったんですね。

 

「Fクラスの設備について、改善を要求しにきました」

 

「そうかい。それは暇そうで羨ましい限りさね」

 

「今のFクラスの教室は、学園長の脳みそのように穴だらけで、隙間風が吹き込んでくるような酷い状態です」

 

あ、言動に綻びが出始めました。

 

「学園長のように戦国時代から生きている老いぼれならともかく、今の普通の高校生にこの状態は危険です。健康に害を及ぼす可能性が高いと思われます」

 

丁寧な言葉の中に、所々からトゲが覗いています。これは相当キレてますね。

 

「要するに、隙間風の吹き込んでくる教室のせいで体調を崩す生徒が出てくるから、さっさと直せクソババァ、というワケです」

 

はい。もう完全にいつもの雄二に戻ってしまいました。

そんな慇懃無礼な雄二の説明を受けて、学園長が何やら思案顔になって黙りこみました。

 

「あの、学園長……?」

 

沈黙に耐えかねた明久が学園長に問い掛けます。

 

「……ふむ、ちょうどいいタイミングさね……(ボソッ)」

 

タイミング?.....一体何のことでしょう?

 

「よしよし。お前達の言いたいことはよくわかった」

 

「え?それじゃ、直してもらえるんですね!」

 

事態が解決するのでは、と期待を持った明久が喜びの声を上げます。ですが、この流れだと――

 

「却下だね」

 

ほら、やっぱり。

 

「雄二、鏡護。このババァをコンクリに詰めて捨ててこよう」

 

「……明久。本音が漏れてるよ」

 

「ハッ!しまったぁっ!」

 

「まったく、このバカが失礼しました。どうか理由をお聞かせ願えますか、ババァ」

 

「そうですね。聞かせてください、ババァ」

 

「……2人とも、それで本当に話してくれると思ってる?」

 

学園長も呆れ顔で2人を見ています。

 

「理由も何も、設備に差をつけるのはこの学園の教育方針だからね。ガタガタ抜かすんじゃないよ、なまっちょろいガキどもが」

 

「お言葉ですが学園長。このままでは本当に体の弱い子はいつか倒れてしまいます。それに学園としても教室設備のせいで生徒が倒れた、なんて話が外に出るのは好ましくないんじゃありませんか?」

 

「……まったく無駄に頭の働くガキだね。……いつもならバッサリ斬り捨てるところだけど、今回は特別にこちらの頼みも聞くなら話に乗ってやろうじゃないか」

 

「ありがとうございます」

 

.....しかし交換条件ですか。何やらキナ臭いものを感じますね。

 

「…………」

 

隣の雄二を見ると、口元に手を当てて考え込んでいます。やはり何か思うところがあるのでしょう。

 

「その条件って何ですか?」

 

僕達2人が黙り込んでしまったので、代わりに明久が質問しました。

 

「清涼祭で行われる召喚大会は知ってるかい?」

 

「ええ、まぁ」

 

「じゃ、その優勝賞品は知ってるかい?」

 

「え?優勝賞品?」

 

なるほど.....。あの大会には優勝賞品なんてものがあったんですね。

 

「学校から贈られる正賞には、賞状とトロフィーと『白金の腕輪』、副賞には『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』が用意してあるのさ」

 

ペアチケット、と聞いて雄二がピクッと反応しましたが、どうしたんでしょう?

 

「はぁ……。それと交換条件に何の関係が」

 

「話は最後まで聞きな。慌てるナントカは貰いが少ないって言葉を知らないのかい?」

 

「知りません」

 

「明久……。正解は『乞食』だよ」

 

「へぇ~。さすがは鏡護」

 

「……それでこの副賞のペアチケットなんだけど、ちょっと良からぬ噂を聞いてね。できれば回収したいのさ」

 

「回収?それなら、賞品に出さなければいいじゃないですか」

 

「そうできるならしているさ。けどね、この話は教頭が進めたとは言え、文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。今更覆すわけにはいかないんだよ」

 

本当に学校経営は竹原教頭に一任しているんですね。召喚システムの方に時間を取られているのは知ってましたが。

 

「契約する前に気付いて下さいよ。学園長なんだから」

 

「うるさいガキだね。白金の腕輪の開発で手一杯だったんだよ。それに、悪い噂を聞いたのはつい最近だしね」

 

学園長が苦々しげに眉をしかめました。口調とは裏腹に、少しは責任を感じているようです。

 

「悪い噂っていうのはどういうことですか?」

 

つまらない内容なんだけどね、と学園長は前置きして話を続けました。

 

「如月グループは如月ハイランドに1つのジンクスを作ろうとしているのさ。『ここを訪れたカップルは幸せになれる』っていうジンクスをね」

 

「?それのどこが悪い噂なんです?良い話じゃないですか」

 

「そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやってきたカップルを結婚までコーディネートするつもりらしい。企業として、多少強引な手段を用いてもね」

 

「な、なんだと!?」

 

すると今の話を聞いた雄二が突然大声を上げました。

 

「どうしたのさ、雄二。そんなに慌てて」

 

「慌てるに決まっているだろう!今ババァが言ったことは、『プレオープンプレミアムペアチケットでやってきたカップルを如月グループの力で強引に結婚させる』ってことだぞ!?」

 

「う、うん。言い直さなくても分かるけど」

 

こんなに動揺している雄二を見るのは初めてですね。ちょっと新鮮です。

 

「そのカップルを出す候補が、我が文月学園ってわけさ」

 

「くそっ。うちの学校は何故か美人揃いだし、試験召喚システムという話題性もたっぷりだからな……」

 

「え?どういうこと?」

 

「明久、つまりはこういうことさ。そんな風に話題性溢れる文月学園の生徒が学生から結婚までいけばジンクスとしては申し分ないし、如月グループが目をつけるのも当然ってことだよ」

 

雄二は悔しげに唇を噛んでいます。君も大変そうですね。

 

「ふむ。流石は神童や《天眼の賢者》と呼ばれているだけはあるね。頭の回転はまあまあじゃないか」

 

学園長の言葉に、僕はちょっと引っ掛かりを覚えました。

 

「おや。雄二のはともかく、僕のその名前まで学園長がご存じだとは知りませんでしたね」

 

「いや、アタシも今さっき思い出したんだけどね。やっぱりアンタがそうだったのかい」

 

「ええ、まぁ。しかし、あまりあちこちに言いふらさないでくださいね。僕は日々を平穏無事に過ごしていたいんですから」

 

「そうかい。そういうことなら他言はしないよ」

 

「雄二、とりあえず落ち着きなよ。如月グループの計画は別にそこまで悪いことでもないし、第一僕らはその話を知っているんだから、行かなければ済む話じゃないか」

 

明久、その考えは甘いですよ。“あの”霧島さんがそんなことを許すはずがありません。

 

「……絶対にアイツは参加して、優勝を狙ってくる……。行けば結婚、行かなくても『約束を破ったから』と結婚……。俺の、将来は……!」

 

雄二の目が虚ろになっています。大方、霧島さんに『チケットが手に入ったら一緒に行く』などと安請け合いでもしたのでしょう。

 

「雄二、もしかしてペナルティは『霧島さんとの婚姻届に判を押す』とか?」

 

軽い冗談のつもりで雄二にかまをかけてみました。

 

「……鏡護、笑えない冗談はよしてくれ……」

 

.....どうやら当たりだったようです。

 

「ま、そんなワケで、本人の意志を無視して、うちの可愛い生徒の将来を決定しようって計画が気に入らないのさ」

 

果たしてこの人が本当に生徒を可愛いと思っているかは甚だ疑問ですが。

 

「つまり交換条件ってのは――」

 

「そうさね。『召喚大会の賞品』と交換。それができるなら、教室の改修くらいしてやろうじゃないか。無論、優勝者から強奪なんて真似はするんじゃないよ。譲ってもらうのも不可だ。私はお前達に召喚大会で優勝しろ、と言ってるんだからね」

 

「……僕たちが優勝したら、教室の改修と設備の向上を約束してくれるんですね?」

 

明久。今返事に間が空いたということは、そういう手段を考えていましたね?

 

「何を言ってるんだい。やってやるのは教室の改修だけ。設備についてはうちの教育方針だ。変える気はないよ」

 

両方をお願いするのは高望みが過ぎる、ということですね。

 

「ただし、清涼祭で得た利益でなんとかしようっていうなら話は別だよ。特別に今回だけは勝手に設備を変更することに目を瞑ってやってもいい」

 

「そこをなんとかオマケして設備の向上をお願いできませんか?僕らにとっては教室の改修と同じくらい設備の向上も重要なんです」

 

「それで?」

 

「もしも喫茶店がうまくいかずに設備の向上が危うかったら、そっちが気になって大会に集中できずに僕らも学園長も困ったことに……」

 

「なんだ、それだけかい。ダメだね。そこは譲れないよ」

 

「でも!設備の向上を約束してくれたら大会だけに――」

 

「明久、無駄だ。ババァに譲る気が無いのは明白だ。この取引に応じるしか方法はない」

 

「雄二の言う通りだよ、明久。これ以上は時間の無駄だ」

 

納得がいかない、という顔をした明久をなんとか宥めます。

 

「わかりました。この話、引き受けます」

 

「そうかい。それなら交渉成立だね」

 

学園長は『計画通り』といった顔をしてニヤリと笑いました。

 

「ただし、こちらからも提案がある」

 

雄二がいきなり学園長に話しかけました。

 

「なんだい?言ってみな」

 

「召喚大会は二対二のタッグマッチ。形式はトーナメント制で、一回戦が数学だと二回戦は化学、といった具合に進めていくと聞いている」

 

召喚大会は試合の派手さを出すためにも、毎試合科目を変えて戦うことになっているそうです。もちろん科目は全員共通です。

 

「それがどうかしたのかい?」

 

「対戦表が決まったら、その科目の指定を俺にやらせてもらいたい」

 

まるで学園長を試すかのように雄二の目つきが鋭くなりました。

 

「ふむ……。いいだろう。点数の水増しとかだったら一蹴していたけど、それくらいなら協力しようじゃないか」

 

「……ありがとうございます」

 

雄二の目つきが更に鋭くなります。

 

「さて。そこまで協力するんだ。当然、召喚大会で優勝できるんだろうね?」

 

学園長が念を押してきます。

 

「無論だ。俺たちを誰だと思っている?」

 

雄二の表情がやる気全開のそれになっていました。

 

「絶対に優勝して見せます。そっちこそ、約束を忘れないように!」

 

明久もすっかりやる気モードですね。

 

「そっちのアンタはどうするんだい?」

 

学園長が僕に話を振ってきました。

 

「一応僕も大会にはエントリーしてるので、やるだけやりますよ」

 

「そうかい。それじゃ、ボウズども。任せたよ」

 

「「「了解っ!」」」

 

こうして、今ここに文月学園最低コンビが誕生しました。

 

 

 

 

 

――コンコン

 

 

「入んな」

 

「失礼します」

 

「おや、どうしてアンタがまた来るんだい?話はさっき終わっただろうに」

 

「学園長にちょっとしたお話がありまして」

 

「アタシに話だって?」

 

「ええ」

 

あの後一度学園長室を後にしてから、僕は再びここに戻ってきました。

 

「まずはこの部屋にある『邪魔なもの』をどかしてしまいますので、ちょっと待っててください」

 

そう言って僕はコンタクトを外すと――

 

「『解析(アナリシス)』、起動(アウェイクン)

 

『眼』の力を発動しました。

 

「……ほぅ。それが噂の『天眼』かい」

 

学園長が何か言っていますが、解析作業に集中している僕の耳には入りません。

 

「…………『解析(アナリシス)』、終了(オーバー)

 

たっぷり10分程室内を見回して、僕はコンタクトを着け直しました。

そしてグルリと室内を回って、『解析』で見つけた『ある物』を回収します。

 

「お待たせしました」

 

 

――ガシャ

 

 

「これは……」

 

「ええ、そうです。これらはこの部屋に仕掛けられていた盗聴器及び盗撮用のカメラですよ。もちろん、既に動作はしていません」

 

「わかっちゃいたけど、これ程とはねぇ……」

 

「安心していいですよ。とりあえず今あった分はこれで全部ですから」

 

「そうかい。……それにしても、なかなか恐ろしい力だねぇ」

 

「……まあ昔はコレのせいで周りから避けられたりもしましたからね」

 

ちょっと昔を思い出してブルーな気分になってしまいます。

 

「……で、これらを取り除いてまでする話ってのはなんだい?」

 

僕の雰囲気の変化を気にしてくれたのか、学園長が話を進めます。

 

「先程の話の続き、ですよ」

 

「続き?はて、何のことだかね」

 

「シラを切っても無駄です。学園長がまだ僕達に今回の依頼の本当の理由を話していないということはわかっているんです」

 

そう。僕が雄二達と別れてここに戻った理由はこれです。先程の学園長の話には引っ掛かる部分が多かったですからね。

 

「……その根拠は」

 

「そうですね……挙げようと思えば幾つか出せますが、一番の根拠は僕達に取引を持ち掛けたことですね。単にチケットを回収するだけなら、わざわざ僕達に頼む必要なんてありません。もっと高得点を取ることができて、確実に勝てる優勝候補を使えばいいんですから。それに優勝者に後で事情を話して譲ってもらうこともできたはずですしね。……つまりそこから導き出される答えは1つ。学園長の本当の目的はチケットではなくて、おそらく――」

 

「ああ、アンタの想像通りだよ。アタシはもう1つの賞品、『白金の腕輪』をあの2人に勝ち取って欲しかったのさ」

 

「理由をお聞きしても?」

 

「はぁ……。アタシの無能を晒すような話だから、できれば伏せておきたかったんだけどね。……実はその腕輪には欠陥があって、入出力が一定水準を超えると暴走しちまうのさ。」

 

「……なるほど。だから新技術をデモンストレーションする際に、暴走を起こす心配のない『優勝する可能性を持つ低得点者』の存在が必要だったワケですね?」

 

「……本当に頭の良く回るガキだよ。2つの腕輪のうち片方の召喚フィールド作製用はある程度まで耐えられるんだけどねぇ……。もう片方の同時召喚用は、現状のままだと平均点程度で暴走する可能性があるのさ」

 

「もしかして後者は明久専用にするつもりですか?」

 

「まあそうなるだろうね」

 

「となると、その腕輪の暴走をわざと起こして学園長を失脚させようとする動きがあるはずです。そうすることで利益を得る連中――他校の経営者とその密通者による、ね」

 

「ああ。アタシもそれがわかってるから今回の取引を持ち出したのさ」

 

「ちなみに、その密通者っていうのは竹原教頭ですね?」

 

「まあ、『こんな物』をこの部屋に仕掛けられるのはアイツくらいだからね」

 

そう言って学園長は盗聴器とカメラの山を指し示します。

 

「わかりました。それではこちらにはあらゆる妨害があるものと思って準備をさせていただきます」

 

「任せたよ。ついでにこの話はアタシら2人だけの内密な話ってことにしといておくれ」

 

「了解です。あの2人には話しません」

 

 

そうして話を終えた僕は今後必要と思われる色々な事を頭に浮かべながら、帰宅の途につきました。




あとがき

鏡護 「……なんか物騒な話になってきたね」

作者 「まあ、これも今後への伏線の1つだな」

鏡護 「今から先が不安になってきたよ……」

作者 「こらこら。暗くなってばかりじゃ仕方ないだろう?」

鏡護 「でもやっぱり気になるよ」

作者 「大丈夫だって。次回はまだそう大した騒ぎは起きないから」

鏡護 「まだってことはこれから先には起きるんだよね?」

作者 「いい加減ネガティブ思考はやめい!」

鏡護 「……わかったよ。じゃあ次回の内容は?」

作者 「清涼祭初日、中華喫茶の営業風景と召喚大会1回戦の模様をお送りします」

鏡護 「よかった。とりあえず平和そうだね」

作者 「よ~し!それじゃ次回予告、いってみよ~!

   次回、第14問『清涼祭スタート!中華喫茶と召喚大会1回戦!』

   を、」

作・鏡 「「よろしくお願いしま~す!」」
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