カラオケボックスから出た後、2人に家まで送ることを提案した僕ですが
「嫌よ。今日は家に帰りたくないわ」
「嫌です。鏡護君と離れたくありません」
優子に瑞希、2人してその申し出を断るのですから驚きました。
「でも僕の家は今は他に誰もいないし……」
そうなんです。今まで言ってませんでしたが、現在我が天水家(木造2階建て、築30年)に暮らしているのは僕1人なのです。
さすがに年頃の女の子を、同じく年頃の男が1人暮らしをしている家にあげるのはマズいと思った僕は2人の説得をしてみます。
しかし――
「そんな事は知ってるわ。それでも自分の家には帰らないわよ?」
「私も別に気にしません。鏡護君は私達と一緒なのは嫌ですか?」
それでも2人は折れる気はないようです。
「そ、それに2人のご両親が反対するんじゃ……」
僕も最後の抵抗を試みますが、
「「……あ、もしもしアタシ(私)だけど(です)、今晩なんだけど(ですが)……」」
突然携帯を取り出して何処かへ電話する2人。
「「許可取ったわよ(りました)」」
あっという間に親の許可を貰ってしまったようです。
.....ご両家の親御さん方、本当にそれでいいんですか?
「あはははは……ハァ」
僕はというと、なんとしても僕の家に来ようとする2人の執念にもう諦めるしかないことを悟りました。
「わかった。今日は家に泊まってくれて構わないよ。ただし家には2人の着替えはないから、それくらいは取りに行こう?」
「「わかったわ(りました)」」
そこだけはこちらも譲れない一線だったので、何とか2人に了承してもらうと僕達は3人で帰路につきました。
* * *
「ただいま~」
「「お邪魔しま~す♪」」
2人の着替えを取りにそれぞれの家に寄ってから、我が家へ帰宅しました。
「鏡護の家に来るのは久しぶりね~」
「私なんかほぼ10年振りですよ。でも、変わってませんね~」
それぞれにそんな事を口にする2人。
「それじゃ、2人は1階の客間を使ってね。僕は2階の部屋で着替えてくるから」
「「は~い!」」
.....まったく。こういう時は素直なんですから.....
着替えを終えた僕は、今日の夕飯を作り始めました。
幸いな事に冷蔵庫には充分な食料が入っていたので、改めて買い出しに行く必要もありませんでした。
2人には手伝いを申し出られましたが、丁重にお断りしました。(特に瑞希は)
料理でもすれば気が紛れるかもしれないとも考えましたが、それ以上に自分の命が惜しいですからね.....
その後3人で夕食をとりましたが、2人には好評のようで何よりでした。
食事の後は、3人で昔話や今の学校生活について色々な話に華を咲かせました。
特に優子と瑞希がお互いにそれぞれ僕との思い出を語り合っては、互いに羨ましがっていたのが印象的でした。
交代(と言っても僕1人と瑞希&優子という形)でお風呂に入った後、いよいよ後は寝るだけとなったその時、事件は起こりました。
「「鏡護(君)」」
2階の部屋へ帰ろうとした僕の服の裾を2人が掴んで放さないんです。
「?どうしたのさ瑞希、優子?」
訳がわからない僕は、とりあえず2人に理由を求めました。
「「アタシ(私)と一緒に寝てください」」
「ブハッ!?」
まさかの爆弾発言でした。
「ちょ、ちょっと待って!2人とも自分が何を言ってるかわかってるの?」
「もちろんよ」
「はい」
即答されてしまいました。
「……でも、一体どうして?」
2人がそれを言い出した理由が知りたい僕はそう聞きました。
すると――
「「それは……」」
2人して口を噤んでしまいます。何か言いにくいことだったんでしょうか?
「あ、ごめん。話しにくいことだったら無理には聞かないけど……」
咄嗟にフォローを入れます。しかし、
「……今日、アタシ達誘拐事件に巻き込まれたじゃない?」
「……うん」
少し間を取って、優子が話し始めました。
.....しまった。その事だったんですね.....。2人が言い淀んだ理由が分かり、若干後悔の念を覚えます。
「その時に思ったんです。もしこのまま誰も――鏡護君も助けに来なかったら、私達はどうなるんだろうって」
それでも瑞希が続きを話し始めたので、口を挟むのは憚られました。
「結局は鏡護達が助けに来てくれた。でも、やっぱりあの時身体が感じた恐怖は消えてくれないのよ……」
やはり気丈な態度を取っていても、内心では怯えていたんでしょう。2人とも自分の身体を抱いて震えています。
「だからお願いです!私達に鏡護君の温もりをください。私達はもう大丈夫なんだって、その証をください……」
「お願いよ、鏡護……」
今にも泣き出しそうな顔をした2人をそれ以上見ていたくなくて、僕は2人を抱き寄せるとこう言いました。
「ごめん。2人には本当に怖い思いをさせちゃったね。……わかった。これからは何があっても僕が必ず2人を守る。その誓いの証を2人にあげるよ。いいかい?」
その言葉に2人は小さく頷くと、僕にしな垂れかかってきました.....
翌朝。
いつも通りの時間に目が覚めた僕は、習慣って偉大だなぁなどと考えながら両隣でまだ眠っている2人を起こさないようにそっと起き出すと、静かに2階の部屋に着替えに行きます。
布団を抜け出す時に、2人の幸せそうな寝顔を見ながらその髪を指で軽く梳かすのも忘れません。自然と頬が緩むのが自分でもわかります。
そうして、着替えと簡単な身支度を済ませた僕はキッチンで朝食の準備をします。
簡単にサラダとスープを用意しようと料理をしている途中で、客間から人の動く気配が。どうやら2人も目を覚ましたようです。
しばらくすると客間から下着姿の2人が――って、えぇぇっ!?
「ちょ、ちょっと2人とも!お願いだから服を着て!」
慌てて視線を明後日の方角へ逸らしながらそう言います。
「あら。鏡護ったら照れてるの?昨夜はあんなに……」
「ゆ、優子っ!」
「ふふっ。でも真っ赤になってる鏡護君、可愛いです」
「み、瑞希までっ!?」
どうやらここに僕の味方はいないようです.....
「と、とにかく早く服を着てよっ!」
「えぇ~、どうしよっかな~?」
優子が面白がってそんなことを言ってきます。
「あ、でしたら鏡護君が私達に『おはようのキス』をしてくれたら許してあげます!」
瑞希までそんなことを.....これは条件を呑むしかなさそうですね.....
「わ、わかったよ!します、させていただきます!」
「「やったぁー♪」」
.....もう僕は金輪際この2人には勝てる気がしません。
「それじゃ、アタシから。おはよう、鏡護♪」チュッ
「あ、優子ちゃんズルいです!次は私ですよ。おはようございます、鏡護君♪」チュッ
「おはよう、2人とも。よく眠れたようで何よりだよ」
そうして3人で笑い合います。
何があっても僕が必ず2人を守る。その誓いをもう一度深く心に刻み付けながら。
その後の朝食の席で、2人には今回のこれまでの事の顛末を全て話しました。
瑞希の転校の件では、僕が知っていたことに瑞希が驚いたり、話してくれなかったことに対して僕と優子が怒ったりしました。
誘拐事件の事は、僕と明久達が受けた学園長からの依頼の件から全てを話しました。2人からは、
「まったく、鏡護は相変わらずアタシの知らないところで危ない橋を渡ってるんだから」
「本当です。何でも自分1人で抱え込もうとしちゃダメですよっ!」
などと呆れられたり怒られたりしてしまいました。
それから、2人にはもしもの時の為にスタンガン(20万ボルト)を渡しました。
それらの話が全て済んだ後は今日の学園祭を一緒に回る約束をして、3人で登校しました。
清涼祭2日目は特に妨害もなく、割と平穏に時間が過ぎていきました。
さすがに明久達に召喚大会の決勝まで進まれてしまった以上、小細工は無駄だと思ったのでしょう。
おかげで今日は朝から中華喫茶も大賑わいで、ひっきりなしにお客さんが入ってきます。
そして――
「いらっしゃいませ~!『ヨーロピアン』へようこそ!」
何故か僕は今日もチャイナドレスを着せられて、ウェイトレスとして働いています.....涙
今日の営業が始まる直前、秀吉共々強制的に着替えさせられました。
「すいませ~ん!注文良いですか?」
「は~い!ただ今伺います!」
『あの娘、可愛いな』
『ああ。だが、他の娘達もなかなか……』
『いやー、どの娘もレベルが高いな!』
『料理も美味いし、こりゃ当たりだな!』
『ホントそうだな!』
若干納得がいきませんが、概ね好評のようですから文句も言えません。
その後、休憩時間を利用して瑞希、優子の2人と学園祭を回りましたが、その時も何故か2人は僕が着替えることを許してくれませんでした。
.....神様。僕、何か悪いことしましたか?
そして午後1時からは本日のメインイベント、召喚大会決勝戦が行われました。
明久と雄二の相手は、なんと僕達を幾度となく妨害してくれたあの常夏コンビでした。
さらに場内アナウンスによって、彼らの所属が3-Aだとわかった時は「ああ、世も末だな」などと思ってしまいました。
あんなのがこの学園の最高学年の、しかも最上位クラスの生徒だなんて信じられませんからね。
4人がそれぞれ召喚獣を召喚し、会場の大型ビジョンに4人の点数が表示されました。
『Aクラス 常村勇作&夏川俊平 VS Fクラス 坂本雄二&吉井明久
日本史 209点&197点 VS 215点&166点 』
.....驚きました。
雄二は元神童と呼ばれた男ですから、やればできるとは思ってましたが、あの明久があれだけの点数を取るとは。
一体どれだけ勉強をしたのか。普段の彼を知る僕としては、それが血の滲むような努力だったことは想像に難くありません。
結果はもちろん雄二&明久ペアの勝利。
手に汗を握る素晴らしい試合を見せてくれた2人には、本当に惜しみない拍手を送りたいと思います。
『ただ今の時刻をもって、清涼祭の一般公開を終了しました。各生徒は速やかに撤収作業を開始してください』
「お、終わった……」
「さすがに疲れたのう……」
「…………(コクコク)」
放送を聞いた途端、皆して床にへたり込みました。
明久達の大会優勝が決まった後から怒涛の勢いでお客さんが雪崩れ込み、中華喫茶はホールも厨房も上へ下へと大忙しでした。
「そう言えば、姫路さんのお父さんはどうしたんだろう?」
「ああ。それなら後夜祭の後に話をしに行くって言ってたよ。まあ結果は大体予想できるけどね」
「そうじゃな。明久達があれだけの活躍を見せたのじゃから、きっと姫路本人にとって良い結果になるじゃろう」
「うん。そうだよね!」
実際にはどうなるか、まだ決まっているわけではありません。しかし、明久達の努力が報われない結果になることはきっとないでしょう。
「じゃ、ウチらは着替えてくるわね」
「えぇっ!?どうして!?」
島田さんの言葉に明久が過剰に反応します。
「どうして……って言われても、恥ずかしいからに決まってるでしょ?」
「すいません。すぐ戻りますので」
「待って!2人とも考え直すんだ!カームバァーック!」
明久は必死に引き止めようとしましたが、2人は構わず教室を出て行ってしまいました。
.....確かに僕ももう少し瑞希のチャイナ姿を見ていたかったです。また今度個人的に頼んでみましょうか?
ちなみに今日も手伝いに来てくれた葉月ちゃんは、あの格好のままで帰宅しました。.....末恐ろしい子です。
「ふむ。ならばワシも――」
「させるかっ!せめて秀吉と鏡護だけは着替えさせないぞ!」
「…………!(コクコク)」
やはりそうきますか!しかし僕もそれを予想してなかったわけではありませんよ!
「残念だったね明久、康太!僕は着替えさせてもらうよ!」
「あっ、しまった!?」
「…………!?」
追っ手が掛かる前に早々に教室から駆け去ります。
「おい明久。遊んでないで学園長室に行くぞ――って鏡護、どこへ行く!」
「ごめ~ん。話はそっちで済ませちゃって!」
雄二に呼び止められましたが、今の僕には一刻も早くこの服から解放されることの方が重要なんです!
学園長とは後日改めて話をさせてもらいましょう。
そんなこんなで着替えとシャワーを終えた僕が更衣室を出ると、
――ドォンッ!パラパラパラ
凄まじい轟音と共に、何かが炸裂したような音が聞こえてきました。
「な、何事っ!?」
慌てて近くの窓から見てみると、校庭の一角からこの更衣室がある新校舎の屋上目掛けて何かが飛んできました。
――ドォンッ!パラパラパラ
今度はその飛んできた何かの正体がはっきりとわかりました。
「これは……花火?」
そう、炸裂した瞬間に色とりどりの綺麗な光を放つそれは、間違いなく打ち上げ花火です。
しかし、誰がこんなことを――
『貴様らぁっ!何をやっているかぁっ!』
『うわぁっ!』
.....なんとなくそうじゃないかとは思いましたが、やっぱり明久達だったんですね。
――ドォンッ!ガラガラガラ
.....た、大変です!最後に飛んできた1発が校舎にブチ当たりましたよ!?
ですが、今花火が当たった場所にあるのは確か教頭室だったはずです。
.....偶々とはいえ、これは良かったんじゃないでしょうか?
『吉井に坂本ぉっ!貴様ら無事に帰ることができると思うなよ!』
『鉄人だ!逃げるぞ明久!』
『おうともさっ!』
『逃がすかっ!今日は絶対に帰らせんぞ!』
最後に聞こえてきたそんな声に2人の無事を祈りながら、僕は学校を後にして打ち上げ会場の公園へと向かいました。
あとがき
作者 「清涼祭終了~!」
鏡護 「やっと終わったよ~!」
作者 「いやぁ、お疲れさん!」
鏡護 「ありがとう!色々と事件もあったけど、楽しかったよ!」
作者 「……大人の階段も上っちゃ――」
鏡護 「うわぁぁっ!」
作者 「なんだよ。うるさいな。途中で遮るなよ」
鏡護 「そりゃ止めたくもなるよ!何言っちゃってるのさ!?」
作者 「何って今回の冒頭で――」
鏡護 「ストップ!その先は言わなくていいから!」
作者 「当事者の方々にインタビューしてきましたので、こちらをお聞きください!」
作者 『彼との初夜はいかがでしたか?』
Y.K. 『彼ったら意外と激しくって……ポッ////』
M.H. 『でも、とっても優かったです……ポッ////』
鏡護 「わぁぁっ!なんてことをしてくれたんだ!」
作者 「いいじゃないか別に」
鏡護 「僕は良くないよ!?」
作者 「2人の幸せに水を差すのか?」
鏡護 「うっ……。そういうわけじゃないけど……」
作者 「ならいいだろう?幸せいっぱい大いに結構じゃないか」
鏡護 「そ、それはそうだけど……」
作者 「……まあ、これでまた多くの男達を敵に回しただろうがな」
鏡護 「やっぱり良くない!」
作者 「……もう諦めろ」
鏡護 「諦められないよっ!」
作者 「話は変わりますが、なんとPV75,000、ユニーク5,000を突破いたしました!」
鏡護 「……ほんとに唐突だね。でもやったね!」
作者 「ああ。これも全ては拙作を読んでくださっている読者の皆様のおかげです!ありがとうございます!」
鏡護 「ありがとうございます!」
作者 「これからもどうぞよろしくお願い致します!」
鏡護 「よろしくお願いします!」
作者 「次回で清涼祭編(原作第2巻)が終了です。それでは、
次回、第19問『アルコールで性格が変わる人は大抵面倒くさい(仮)』
を、」
作・鏡 「「お楽しみに~!」」