『『かんぱ~いっ!!』』
僕が打ち上げ会場になっている近所の公園に着いた時に、ちょうどそんな声が聞こえてきました。
「よかった。ちょうど始まったところみたいだね」
会場に入ると、早速近くにいたクラスメイト達が声を掛けてくれました。
『おっ、天水!やっと来たな!』
『お疲れ~!』
『くそぉぉっ!どうして着替えちまったんだよ!』
『もったいない!何てことをしてくれたんだ!』
『頼む天水!もう1回着てくれ!』
.....このクラスは大丈夫なんでしょうか?若干心配になってきました。
「まったく、皆ちょっと冗談が過ぎるよ?」
『『俺達は
こんなところで無駄な結束力を発揮しないでください.....
「天水、ホラよ」
そう言って僕にジュースの入った紙コップを手渡してくれたのは須川君でした。
「あ、ありがと」
「今回天水はホールに厨房と正に八面六臂の大活躍だったな」
「そんなことないよ。……そういえば、須川君って料理できたんだね。初めて知ったよ」
「ああ。昔からよく母親の手伝いをしたりしてたからな」
「へぇー」
「立派じゃのう」
「…………(コクコク)」
いつの間にやら秀吉と康太が近くに来ていました。
「秀吉に康太。2人もお疲れ」
「うむ。お疲れじゃ、鏡護」
「…………(コクコク)」
3人でコップを打ち合わせて乾杯をします。
ジュースを飲んでみたら、少し苦味がしました。.....もしかして安物でしょうか?
「あっ、明久と雄二も来たね」
2人とも顔がいつもの倍くらいまで腫れています。結局西村先生に捕まったようですね。
「お疲れ~」
「先に始めておったぞ」
「…………遅い」
「ゴメンゴメン。ちょっと鉄人がしつこくてさ」
やっぱりそうでしたか。
「それにしてもお主ら、もはや学園中で知らぬ者はおらん程の有名人になってしまったのう」
「…………(コクコク)」
「そうだね。今や2人は花火で校舎を爆破したテロリストだもんね」
「……コイツと同じ扱いだとは不本意だ」
「その台詞、そっくりそのまま返すよ……」
残念ながら、どちらも五十歩百歩だと思います。
「あれだけのことやっておいて、退学どころか停学にすらならないんだもの。妙な噂が流れて当然でしょ?ウチだって気になるし」
おそらく、学園長が手を回したんでしょう。
.....それにしてもこのジュース、もしかしてアルコール入りじゃないでしょうか?
周りにいる皆の顔が一様にほんのり赤く染まっていますし、いつもの3割増しくらいテンションが高い気がします。
「そういえば、お店の売り上げってどうだったの?」
明久が島田さんに質問しました。言われてみれば、僕もまだ聞いていません。
「そうね。そんなに凄いって程じゃないけど、たった2日間の収益にしては結構な額になったんじゃないかしら」
そう言って収支の書かれたノートを見せてくれる島田さん。僕も明久の横から覗き込みます。
どれどれ.....ふむ。確かになかなかの額を稼げましたね。しかし――
「この額だと、机と椅子は厳しいな。畳と卓袱台がせいぜいだろう」
やはり喫茶店では、どんなに人気が出てもお客さんの回転に限界が出ます。学園祭のような短期間の営業ではこれくらいが限界でしょう。
「う~ん……。やっぱりあの妨害が痛かったね」
確かにそれも一理あります。常夏コンビの妨害がなければ、もう2~3割くらいは上乗せできたかもしれません。
「すいません。遅くなりました~」
と、可愛らしい声が僕達の後ろから聞こえてきました。どうやら瑞希も遅れて来たようです。
「瑞希、どうだった?」
皆を代表して、僕が瑞希に聞きました。
「はいっ!お父さんもわかってくれました!これも皆さんのおかげです!」
Vサインと共に、瑞希がそう答えました。
「よかったね」
「はいっ!」
2人で笑い合います。後で優子にも教えてあげないといけませんね。
「……ちょっと待て。今姫路は『皆さんのおかげ』と言ってたが、もしかして知っていたのか?」
雄二が僕に聞いてきました。
「ああ、実は今朝家で朝食を食べてた時に話しちゃったんだ」
知られた以上は隠しておく必要もなくなったので、僕は素直にそう答えました。
「……『今朝家で朝食を食べてた時に』、だと?」
「うん。そうだけど?」
雄二が僕に確認を取るようにそう聞いてきます。
「つまり今日、姫路はお前の家で朝食を食べたのか?」
「?そうだよ。ちなみに昨日は瑞希と優子が家に泊まって、今朝は3人一緒に登校したんだ」
「……そうか」
それだけ呟くと、雄二は黙ってしまいました。.....どうかしたんでしょうか?
そしてしばらく沈黙を保ったままだった雄二は、突然こんなことを言い出したのです。
「野郎共!今の話は聞いていたな?これより鏡護を第1級戦犯として、その抹殺を命ずる!」
『『サー、イエッサー!』』
「え、ええぇぇぇっ!?」
雄二の号令に従って、突然クラスメイト達が僕に襲い掛かってきました。
「ちょ、ちょっと皆!一体どうしたっていうのさ?」
訳がわからない僕は、皆の攻撃をかわしながらそう問いかけます。すると――
『うるせぇ!姫路さん、木下さんと付き合ってるだけでも許せなかったのに!』
『よりにもよってその2人を自分の家に泊め!』
『あまつさえ朝一緒に登校するなんて!』
『『羨ましいんだよ、コノヤロウ!』』
彼らの魂の叫びが返ってきました。
「……ってそれ、ただの八つ当たりだよね!?」
『『八つ当たりして何が悪い!』』
.....ダメですね。僕が喋る言葉は、結果として全て彼らを煽ることに繋がってしまうみたいです。
しかもアルコールが入っているせいか、彼らの攻撃には一切容赦がなく、また動作のキレが異常に鋭いです。
.....しかし、こちらも一方的にやられるわけにはいきません。
僕は懐から誘拐事件の時にも使ったスタンロッド(50万ボルト、通販?で購入)を取り出し、コンタクトを外します。
「いいだろう!掛かって来やがれ!全員返り討ちにしてやる!」
そう言い放つと、俺は逆にクラスメイト達の間に突っ込んでいった。
『ぎゃあぁぁっ!』
『し、痺れるぅぅ!』
『天水、よくも!』
『取り囲んで一気にいくぞ!』
『『うおぉぉぉっ!』』
「ハッ!無駄無駄無駄ァッ!」
俺は近づいてくるヤツは殴り、身体を掴まれたら棒を押し付けて電撃を放つなどして片っ端からクラスメイトを屠っていく。
「どうしたどうしたっ!この程度で終わりか?」
『くっ!流石は
『ダメだっ!圧倒的過ぎる!』
『ヤツは化け物か!?』
『俺達ではヤツには勝てないのか!?』
次々に地に沈められていくクラスメイトを見て、一部が怖気づく。
「「鏡護、覚悟ォォッ!」」
そんな叫びと共に、俺の両サイドから明久と雄二が殴り掛かってくる。
.....チッ!普段あれだけいがみ合っているのに、どうしてこんな時だけ息がぴったりなんだ!
2人は実に絶妙なコンビネーションで攻撃を繰り出してくる。
始めは何とかかわしていられたが、だんだん旗色が悪くなってくる。
.....こうなったら『奥の手』を使うまで!
そうして俺は“ある言葉”を雄二にぶつけた。
「そうは言うが雄二!お前だって毎朝霧島が家に迎えに来ているだろう!」
「なっ!どうして鏡護がそれを知っている!?」
フッ。やはり掛かったな。.....というか、まさか本当にそうなのか?
「聞いたか皆の衆!お前達を先導する坂本雄二こそ、真の裏切り者だったのだ!」
『『坂本を殺せェェッ!』』
「な、なにぃぃっ!」
急に皆に殺気の矛先を向けられて、雄二が慌てる。いつぞや道連れにされた恨み、今ここでそっくり返してやる!
俺に突っ掛かってきたヤツらは、明久を含めて全員が雄二の方へ流れていった。いい気味だ。
そうして気を抜きかけた俺だが、
――シュッ!
「うおわっ!」
何かが突然顔を目掛けて飛んできたので、慌てて避けた。飛んできたのは.....カッターナイフ?
「誰だっ!」
俺はカッターが飛んできたと思しき方へと向き直る。そこには――
「…………裏切り者に、死を」
「康太……っ!」
まだ手に何本かカッターを持ち、こちらへ投擲しようとする康太の姿があった。
「落ち着け、康太。お前とは交渉がしたい」
「…………交渉?」
「ああ。俺の家にあるお宝秘蔵コレクションを全て譲ってやる。だから、今後一切の不可侵条約を結んでくれないか?」
「…………交渉成立」
恐ろしい程簡単に買収に成功した。何て扱いやすいヤツなんだ。自分から言っておいてなんだが、本当にそれでいいのか?
「…………引渡しはいつ?」
「そうだな。この打ち上げの後すぐに、でどうだ?」
「…………わかった」
そう言うと、康太は引き下がってくれた。
「助かったぜ.....ん?あれっ?」
ようやく一息吐く事ができた俺は、急速に意識が闇の底に沈んでいくのを感じた。
―Side 優子
Aクラスの打ち上げを終えたアタシは、途中で鏡護から送られてきたメールに従って、Fクラスの打ち上げ会場へと来ていた。
そこには――
「一体何があったのよっ!?」
公園の至るところに黒コゲになった生徒が倒れてたり、代表の坂本君と思しき人物がボロボロになって倒れてたりと、何故かカオス空間が広がっていた。
「お~い、優子~!」
名前を呼ばれた気がしたのでそちらを向くと、
「鏡護!.....と秀吉?」
秀吉に支えられてこちらに歩いてくる鏡護の姿が。
「そっちの打ち上げはもう終わったの~?」
「随分早い終わりだったんじゃのう、姉上」
「ええ。でも楽しかったわよ。……鏡護、アンタ何か酒臭くない?」
鏡護からは、少しだけどアルコール臭がした。そういえば喋り方も、どこかいつもと違う気がする。
「うむ。クラスの連中がソフトドリンクに混ぜて酒を買ってきたようでの。ワシは飲まなかったんじゃが、鏡護は飲んでしまったようなんじゃ」
「あはははは~!大丈夫だよ秀吉~。僕は酔ってないよ~?」
「秀吉に身体を支えられてる状態じゃ、説得力ないわよ」
見れば、鏡護は顔もだいぶ赤い。これは完全に酔っぱらってるわね。
なんて冷静に状況を分析していると、
「わ~い♪優子~!」チュッ
「――っ////なっ!い、いきなり何するのよ鏡護!」
突然鏡護が秀吉から離れて、アタシに抱きつくなり頬にキスしてきた。
「あ~、すまんのう姉上。どうやら鏡護は酔うとキス魔になるようでな。一応相手は選んでおるようで、先程までは姫路にそうしておったんじゃが、今はあの通りでの……」
秀吉が指差した先を見てみると、そこには顔を真っ赤にしながらも幸せそうな表情で倒れている瑞希がいた。
「ふにゃ~。鏡護君、大好きです~。でもこれ以上されたら、私壊れちゃいますよ~。えへへ~」
などと寝言?を言いながら、イヤンイヤンといった風に首を振っている。
.....あの瑞希があそこまで壊れるなんて、鏡護は一体何をしたんだろう。少し怖くなってきた自分がいる。
「まあそういうことで、後は姉上にバトンタッチさせてもらうぞい」
そう言って、鏡護を置いてさっさと行ってしまう我が弟。
「ちょ、ちょっと待ちなさい秀吉!アタシにどうしろって言うのよ!」
「ゆ~う~こ~♪」チュッ
「はぅ……////」
必死に呼び止めようとしたけど、再び鏡護にキスされて身体から力が抜けてしまうアタシ。
結局その後鏡護の意識が覚醒するまで、アタシも色々とやられてしまって気を失っていたらしい。
らしい、と言うのはアタシが気付いた時には自宅のベッドで寝ていたからだ。
後で聞いたところによると、秀吉と鏡護が2人で運んでくれたのだとか。
鏡護にあの日の事を尋ねてみると、途中の記憶が抜けていて良く覚えていないと言っていた。
ちょっぴり残念な気もしたけど、覚えていられるのも何だか恥ずかしいので良かったのかもしれない。
また後日瑞希と2人で、偶には鏡護にお酒を飲ませて酔わせるのもいいかも、なんて話したことはアタシ達2人だけの秘密だ。
―Side Out
あとがき
作者 「清涼祭編、これにてお開き~!」
鏡護 「ワー!パチパチパチ~!……ってそうじゃないよっ!」
作者 「おおっ!ナイスノリツッコミ!」
鏡護 「まさか記憶のない間にこんな事になってたなんて……」
作者 「やったじゃん!」
鏡護 「2人には迷惑かけちゃったかな……」
作者 「いやいや。大丈夫だろ、別に」
鏡護 「そうかな?」
作者 「好きな男にキスされるのを迷惑に思う女はいないって」
鏡護 「そういうもの?」
作者 「そういうものだって。もし気になるなら、またデートにでも誘えばいいだろ」
鏡護 「そっか。そうだよね!」
作者 「うむ。そうだ」
鏡護 「じゃあ作者さん。今回で原作第2巻の内容が終わったけど、次回は?」
作者 「また何本か短編と中編を挟んでから、第3巻に入ろうと思ってる」
鏡護 「なるほど。それはまた楽しみだね」
作者 「おう!大いに楽しみにしててくれ!」
鏡護 「それじゃ次回予告、どうぞ!」
作者 「次回、補習第4問『災厄はいつも忘れた頃にやってくる(仮)』
を、」
作・鏡 「「よろしくお願いします!」」