翌朝。
目が覚めた僕が時間を確認すると、時計の針は7時を少し回ったところでした。
「うん。まあいつも通りだね」
学校のない休日は大体この時間に起きています。
着替えて顔を洗い、1階に下ります。
客間ではまだ3人が寝ているのでしょう。静かなものです。
「……そういえば昨日は姉さんが帰ってきたんだよね」
そうして昨晩の騒動を思い出します。同時に若干テンションが落ちる僕。
姉さんは落ち着いた優しい女性なのですが、僕をイジるのが趣味というちょっと困った人でもあります。
昔からイジり回されてきた僕にとって、姉さんはある意味天敵と言って差し支えありません。
「しかも姉さん、料理できないからな……」
割と何でも万能にこなす姉さんが唯一できないこと、それが料理です。
彼女が料理をし始めると、何故か台所からは破砕音や爆発音が聞こえてくるのです。
「……さて、それじゃ朝食を作り始めよう!」
そこで思考を切り替え、朝食の準備を始めます。
「う~ん。姉さんが帰ってきたばかりだから、和食がいいかな?」
料理のできない姉さんの事だから、きっと向こうではあまり和食は食べなかったでしょう。
そう考えた僕は、朝食の献立を和食に決めました。
「炊飯器はセットしたからご飯はオッケー。卵焼きは作ったし、煮物もできた。あとは味噌汁と……」
着々と準備を進める僕。
「ん~!なんかいい匂いがする~!」
すると客間の戸が開いて姉さんが出てきました。
「おはよう、姉さん。もうすぐ朝ご飯だから2人も起こしてくれる?」
「りょうか~い!」
まだ眠気が取れていないのか、若干間の抜けた声で姉さんが返事しました。
「「「「いただきま~す!」」」」
あの後すぐに起きてきた2人も一緒に、4人で朝食を取ります。
「姉さん嬉しいな~。和食にしてくれたんだね、キョウ君」
「姉さん、向こうじゃ和食はほとんど食べなかったんじゃないかと思ってね」
「流石キョウ君!姉さんの事よくわかってるわね」
やはり予想通りだったみたいです。
「でもやっぱりいつ食べても鏡護の料理って美味しいわよね」
「そうですね。でもそれだけに敗北感が……」
「そうなのよね~」
優子と瑞希は何やら落ち込んでいる様子。そんなに気にする事はないと思うのですが.....
「2人だって料理できるんだから大丈夫だよ。そのうち僕なんか追い抜いちゃうって」
「う~ん……」
「……そうでしょうか?」
「大丈夫だって。姉さんなんて料理できないのに8年も海外で生活でき痛ぁぁっ!ご、ごめんなさい!お願いだから足を踏まないで!」
テーブルの下で姉さんが僕の足を思いきり踏みつけてきました。
「折角感心してたのに、その言い方はないんじゃないかな?かな?」
ハイライトの消えた目で迫ってくる姉さん。
「は、はい……申し訳ありませんでした」
僕も慌てて再度の謝罪をします。
「まったく……。キョウ君は一言余計なのよ!」
どうやら姉さんはヘソを曲げてしまったようです。
こうなってしまっては早く機嫌を直さないと、僕に命の危機が訪れる事になりかねません。
「わかった。なら、お詫びに買い物に付き合うから許してよ姉さん」
「……本当に?」
「うん」
「今日でもいい?」
「いいよ。どうせ休日で暇だからね」
「……いいわ。それで許してあげる。もちろん2人も一緒よね?」
「え?」
「……そう言えば鏡護。清涼祭での『お支払い』がまだだったわよね?」
「へ?」
突然謎の言葉を持ち出してきた優子。『お支払い』?一体何の事で.....
「ああ。優子ちゃん、アレですね?」
「そう。アレよ瑞希」
.....アレって、まさか!?あの時僕と雄二は売られたんですか!?
「拒否権は?」
「ない事もないけど、あの場にいた皆に迷惑が掛かるわよ?」
優子、それはないと言っているのと同義です.....
「……わかった。2人も一緒に行こう」
「「やったぁー!」」
ハァ.....こういう時、男ってつくづく無力ですよね.....
結局その日は駅前のデパートに買い物へ行くことになり、大量に荷物持ちをさせられた挙句3人に1着ずつ服をプレゼントするハメになりました。
帰る時にはだいぶ懐が寂しくなりましたが、3人とも笑顔になってくれたので良しとしましょう。
あとがき
作者 「いきなりですが次回予告!
次回、補習第6問『とある恋人達の素敵な休日(仮)』
を、乞うご期待ください!」