バカと天眼の賢者と召喚獣 ※凍結   作:天御柱

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――清涼祭後、ある日の教室/昼休み

「明久」
「ん?何、雄二」
「そういえば、例のチケットはどうした?」
「例のチケットって――如月ハイランドのプレミアムペアチケットのこと?」
「ああ。確か今週末がプレオープンの予定日だっただろう?」
「そうだったね」
「で、チケットはどうしたんだ?」
「丁度僕の身近に結婚を考えている人がいたからね。その人にあげたよ」
「そうか。そんなヤツがいるなら都合がいいな。それで上手く結婚になれば、如月グループも喜ぶだろうしな」
「そうだね。上手くいけば全員が幸せだもんね」
「その連中、上手くいきそうなのか?」
「うん。あとは時間ときっかけの問題だと思うんだ」
「そうか。上手くいくといいな」
「大丈夫。きっと上手くいくよ」


補習第6問 『ミッションコードは“ウェディング上等!”(前編)』

――その週末、某巨大テーマパーク

 

「こちらウルズ1。各員状況を報告せよ」

 

『こちらウルズ2。現在こちらの準備は9割方終わったよ』

 

『Prrrrrr Prrrrrr』

 

「ウルズ2、どうした?」

 

『ゴメン。僕の携帯だ。……非通知設定?誰かな?はいもしもし?どちら様ですか?』

 

【………………キサマヲコロス】

 

『え!?だ、誰!?メチャクチャ怖――』プッ、ツー、ツー、ツー

 

「……ウルズ2、達者でな……」

 

『ちょっと待って鏡護!僕に勝手に死亡フラグを立てるのは止めて!』

 

「他の者はどうだ?」

 

『…………こちらウルズ3。ターゲットは今自宅を出たところ。30分程でそちらに到着するはず』

 

「了解。そのままターゲットの監視を続けてくれ」

 

『こちらウルズ4じゃ。お化け屋敷内の仕込みを完了したぞい。これよりウルズ2の援護に回るとする。……ところで何故こんな面倒な呼び方をしておるのじゃ?』

 

「その方が雰囲気出るじゃない。それに面白いでしょ?」

 

『そんなもんかのう?』

 

「そんなもんさ。さて5、6、7。準備どうだ?」

 

『ウルズ5、こっちはいつでもいけるわ!』

 

『ウルズ6、こちらも準備万端です!』

 

『ウルズ7、問題ないわよ。っていうかホント面倒だわ、コレ……』

 

「わかってないなウルズ7。こういう時大事なのはノリだよ、ノリ」

 

『ハァ……了解』

 

「よし!それではこれより我々はミッションコード“ウェディング上等!”を決行する。なお、今回のミッションは【ターゲット】の今後の人生を左右するものである!全員、覚悟はいいか?」

 

『『『うん(うむ/ええ/はい)!』』』

 

「よろしい!それから、作戦中は携帯電話の電源は切っておくように!もし鳴らした場合は厳罰に処す!約30分後にはミッションスタートだ!各自、心して臨むように!」

 

『『『サー、イエッサー!』』』

 

 

 

30分後――

 

「いらっしゃいませ!如月ハイランドへようこそ!」

 

「本日はプレオープンなのですが、チケットはお持ちですか?」

 

「……はい」

 

「拝見します」

 

「………」

 

「……そのチケット、使えないの?」

 

「いえいえ。大丈夫ですよ。少々お待ちください。……ウルズ1からウルズ4へ。【ターゲット】が到着した。すぐにウェディングシフトの準備にかかれ。確実に仕留める!」

 

『ウルズ4、任務了解じゃ!』

 

「おいコラ!なんだ今の不穏当な会話は!」

 

「何でもございません。こちらの話です」

 

「……ところでそのウェディングシフトとやらは必要ないぞ。入場させてくれたら後は放っておいてくれていい」

 

「そんなことを言わずにお世話させてください」

 

「ダメだ」

 

「お願いします」

 

「断る」

 

「断れば貴方のご実家に腐ったザリガニを送りますよ?」

 

「やめてくれ!そんな事をすれば我が家は食中毒で大変な事になってしまう!」

 

腐ったザリガニが食卓に上がることなんてありえないでしょうに.....

どうしてそんなに焦っているんですか?

 

「それでは最初に記念写真を撮ります。……ウルズ3、カメラの用意を」

 

「……記念写真?」

 

「はい。最高にお似合いの2人の愛のメモリーを残しましょう」

 

霧島さんにそう言います。

 

「……雄二と、お似合い……」ポッ

 

「悪いがちょっと電話をさせてくれ」

 

「わかりました」

 

フフッ。どうせ明久にでも掛けているのでしょうが、皆の携帯の電源は切らせましたからね。抜かりはありませんよ?

 

 

Prrrrrr Prrrrrr

 

 

~~♪

 

 

なっ!?どうして着信音が聞こえてくるんですか!?.....ま、まさか!?

恐る恐る音の聞こえた方を見てみると――

 

「あ、すみません。僕の携帯ですね。はい、もしもし?」

 

明久っ!君には失望しましたよ!

 

『いよう、明久。てめえ随分と面白い事してるじゃねえか……』

 

「………」

 

「……人違いですっ!」ダッ

 

「あ、待て!おいコラ係員、放せこの野郎!」

 

「彼はここの従業員のエリザベート・ハナコ(35歳)、通称スティーブです。明久なんて人ではありません!」

 

とりあえず明久が逃げる時間を稼ぐ為、雄二を羽交い絞めにします。.....明久には後で制裁(おしおき)をしませんとね。

 

「黙れ!人種性別氏名年齢全てにおいて嘘を吐くな!それにどう考えてもその名前で通称スティーブはないだろう!……ん?待てよ?この声は……お前、鏡護だろう!」

 

「いいえ、違います。私は水月(みづき) (まもる)(29歳)です。」

 

「クッ!あくまでシラを切る気か……」

 

もちろん。その通りですよ?

 

「それでは記念撮影を始めましょう」

 

「……チッ!翔子、すまんがちょっと我慢してくれ!」

 

そう言って、雄二は霧島さんのスカートの裾を下着が見えるかどうかギリギリの高さまで捲り上げました。

 

「…………っ!!(パシャパシャ)」

 

「やはりムッツリーニも来ていたな!」

 

「……雄二、エッチ」

 

「なっ!違うぞ!俺はお前の下着になんて微塵も興味がなぎゃぁぁっ!」

 

「……それはそれで困る」

 

「理不尽だぁぁ!」

 

霧島さんが雄二にアイアンクローを掛けています。アレは痛いですねぇ.....

そんな2人を見ているうちに康太が写真を撮ってプリントアウトしてくれました。

 

「……なんだ、この写真は!」

 

アイアンクローを掛けている霧島さんの後ろ姿とそれに悶える雄二が写っています。

 

「サービスで加工を入れてみました。お気に召していただけましたか?」

 

2人を囲むようにハート形に切り取り、写真上部には『私達、結婚します』の文字が。さらに写真下部には2人を祝福するかのように天使が飛び回っています。

.....この写真を余人が見たら、どういう経緯で結婚にまで至ったのかきっと気になることでしょう。

 

「これをパークの写真館に飾ってもよろしいですか?」

 

「キサマ正気か!?コレを飾ることでここに何のメリットがあるんだ!」

 

まあ間違いなくお客さんはドン引きですね。

 

「……雄二、照れてる?」

 

「すまない。この写真のどこにも照れる要素が見当たらないんだが」

 

『ああ、写真撮影してる!ねえねえ、リュータ!私たちも撮って貰おうよ!』

 

『オレ達の結婚の記念に、か?おい、係員!オレ達も写ってやんよ』

 

と、そこに偉そうな態度で声を掛けてくるチャラいカップルが現れました。これは面倒なのが来ましたね.....

 

「申し訳ありません、お客様。こちらは特別サービスとなっておりまして……」

 

『ああ!?いいじゃねえか!オレ達はオキャクサマだぞ!コラぁ!』

 

『キャー!リュウタ、カッコイイー!』

 

本当にウザいですね.....仕方ありません。これ以上ゴネられるのも嫌なのでさっさと撮影を終わらせましょう。

 

「それでは男性の方はこちらに立っていてください。で、女性の方は後ろ向きで……右手で男性の顔を掴んで……はい。そのまま力いっぱい握ってください」

 

『ぐ、ぐおぉぉっ!い、痛ェぞこの野郎!コレは明らかに写真を取るポーズじゃねぇだろ!?』

 

「いいえ。こちらが当園の記念撮影のポーズでございます」

 

『ク、クソォー!それなら早く終わらせやがれ!』

 

「はいは~い♪それでは撮りますよ~。ハイ、チーズ!……プリントが終わるまでお客様はそのままお待ちください」

 

『ちょっと待てや!写真を撮り終わったらもういいだろ!?』

 

せっかくなので腹いせにそんな感じで遊んでいたら、すっかり雄二達を見失ってしまいました。失敗失敗.....

 

 

 

 

 

 

―Side 雄二

 

 

 

「さて。それじゃ適当に回るか」

 

「……楽しみ」

 

写真撮影を終え、鏡護と思しき係員から逃げてきた俺達は広い園内を歩いていた。

園内には前評判通りの最新アトラクションが沢山あった。3Dの体感アトラクションから絶叫マシン、コーヒーカップやメリーゴーランドなど、知っているものは一通り揃っていた。

中には見た目からは想像のつかないようなのもある。確かにコレは凄いな。

 

「映画館でもあれば楽なんだがな」

 

「……せっかく2人一緒にいるんだから、そんなのはダメ」

 

翔子に却下されたので、仕方なく当たり障りのなさそうなアトラクションを探して歩く。すると、俺達の前にヒョコヒョコとキツネの着ぐるみが近寄ってきた。

 

『お兄さん達、フィーが面白いアトラクションを紹介してあげるよ?』

 

着ぐるみから聞こえてきたのは若い女の声だった。ボイスチェンジャーは搭載していないのか、普通の人間の声だ。というか、この聞き覚えのある声はクラスメイトの優等生にそっくりなんだが.....

 

ちょっと確認してみるか。

 

「そういえば、さっき鏡護が女子大生2人に逆ナンされてたぞ」

 

『…………』

 

チッ.....これじゃ引っ掛からないか。それにしても鏡護の事を随分信頼してるんだな。ならば.....

 

「すまん。間違えた。さっき鏡護が木下優子と2人きりだったんだ」

 

『えっ!?本当ですか?優子ちゃん、抜け駆けはダメですよーっ!』

 

「……おい姫路。アルバイトか?」

 

まんまと引っ掛かった姫路を問い質す。

 

『あっ!ち、違いますっ!私――じゃなくてフィーは姫路なんて人じゃないよ?見ての通りキツネの女の子だよ?』

 

それでも取り繕おうとするのだから、姫路は真面目だと思う。

 

「ならば、フィーとやら。お前のオススメを教えてもらおうか」

 

『あ。う、うんっ。フィーのオススメはねっ、向こうに見えるお化け屋敷だよっ』

 

姫路――ではなくてフィーの手が噴水の向こうに建物を示す。.....ふむ。廃病院を改造したとかいう例のアレか。

 

「そうか。ありがとう」

 

『いえいえっ。楽しんできてね!』

 

「翔子、お化け屋敷以外のアトラクションに行くぞ」

 

翔子の背中を押して歩き出す。すると姫路が慌てたように俺の腕を掴んできた。

 

『ままま待ってください!どうしてオススメ以外の所へ行こうとするんですか!?』

 

「その慌て様が何よりの証拠だ。どうせお化け屋敷には余計な仕掛けが施してあるんだろう?わざわざそんな所に行く必要はない」

 

『そ、そんなの困りますっ!お願いです~っ!お化け屋敷は絶対楽しいですから~っ!』

 

「イ・ヤ・だ!」

 

なおも縋り付くようについてくる姫路を振り払おうか考えていた時に、またしても何かが近寄ってきた。

 

『そこまでだっ!雄二――じゃなくて、そこのブサイクな男っ!』

 

「その頭の悪そうな仕草……明久かっ!」

 

颯爽と登場したのは雄ギツネの着ぐるみだった。

 

『失礼なっ!僕――じゃなくてノインのどこが頭が悪いって言うんだ!』

 

「黙れっ!頭部を前後逆につけているようなヤツをバカと言って何が悪い!」

 

そうなのだ。雄ギツネの着ぐるみは頭の前後が逆になっており、非常にシュールな生物になっていた。

 

「……雄二。ノイちゃんはうっかりさんだから」

 

「翔子。うっかりで頭部が前後逆になるような生物は自然界では生きていけないだろう……」

 

『あ、明久君っ!あ、頭が逆です!ああっ!今小さい子が明久君を見て泣き出しちゃいましたよ!?』

 

間違いなくその子にとって今日のこの光景はトラウマになっただろう。

 

『うわっ、しまった!どうりで前が見えないと思った!』

 

『は、早く直さないと坂本君達にバレちゃいますよっ!』

 

まだ誤魔化せると思っているのか、この2人は.....

 

「すみませーん!お待たせ致しました」

 

また面倒なのが来たな。さっきの係員だ。もう追いついてきやがったのか。

 

「坂本雄二さん。お化け屋敷に行ってください」

 

「だからイヤだと言っているだろうが」

 

危険とわかっている場所に自分から足を踏み入れるヤツがいるはずないだろう。

 

「断れば、貴方のご実家に大量のプチプチの梱包材を送ります」

 

「やめろっ!そんな事をしたら我が家の家事が全て滞ってしまう!」

 

あのおふくろの事だ。全てのプチプチを潰し終えるまで他の事は何もしないに決まっている。なんて地味かつ微妙な嫌がらせをしてくれるんだ.....

 

「坂本翔子さん。お化け屋敷では彼氏さんに抱きつき放題ですよ?」

 

「……雄二。お化け屋敷に行く」

 

「汚いぞキサマ、翔子を使って罠にハメようとするなんて!それにコイツの名字は霧島だ!勝手に入籍させるんじゃない!」

 

「……大丈夫。すぐに坂本に変わる」

 

油断しているうちに翔子に肘関節を極められてしまった。これじゃあ抵抗できない!

 

「では、こちらにサインをお願いします」

 

そう言って係員が何かの書類とペンを差し出してきた。.....何だコレは?

 

「ただの誓約書でございます」

 

誓約書が必要なお化け屋敷って何だ?そんなに危険なのか?

 

「ふむ。だがまぁ、面白そうではあるな」

 

少し楽しみになった俺はペンを受け取って、誓約書に目を通した。

 

 

【誓約書】

 

1.私、坂本雄二は霧島翔子を妻として生涯愛し、苦楽を共にすることを誓います。

2.婚礼の式場には如月ハイランドを利用することを誓います。

3.どのような事態になっても、離縁しない事を誓います。

 

 

「……はい雄二。実印」

 

「朱肉はこちらです」

 

「俺だけかっ!?俺だけがこの状況をおかしいと思っているのか!?」

 

コイツら、全員正気じゃない。

 

「冗談です。誓約書は必要ないので中に入ってください」

 

「……雄二、冗談」

 

「カーボン紙を入れて写しまで用意しているのに冗談と言い張るのか!?」

 

「それではその鞄は邪魔になりそうですので、こちらでお預かり致します」

 

「……お願い」

 

「おいコラっ!無視するな!」

 

そういえば翔子は随分大きな鞄を持ってきているが、何が入っているのだろう?

 

「……零れちゃうから、横にしないで欲しい。」

 

「この鞄を、ですか?わかりました。気をつけましょう。……それでは、行ってらっしゃいませ」

 

「……雄二、行こう」

 

「痛だだだだっ!肘が、肘がねじ切れるっ!」

 

抵抗空しく、俺はお化け屋敷の扉の前に立たされる。演出なのか、自動ドアでありながら電気が通っていないらしく、手動で開けなければならないようだ。

 

『こちらウルズ1。【ターゲット】がお化け屋敷に入った。これよりウルズ2考案の作戦を実行せよ』

 

扉を閉める直前に、そんな台詞が聞こえた。畜生!やっぱり何か仕掛けてやがったな!




あとがき

作者 「次回、引き続きまして後編をお送りします!」
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