「まさか高橋女史まで参戦してくるとはな」
「あの人、もう反則なまでの強さだったよ……」
「おかえり、皆。……今日もダメだったみたいだね」
結果はわかっていましたが、一応そう聞いておきます。
「ただいまじゃ、鏡護。……もしや鏡護なら高橋先生に勝てるのではないか?」
「…………(コクコク)」
秀吉がそんな事を言い、康太がそれに同意するように頷きます。
「確かにそうかもしれん。だが、コイツは今回参加しないといっているからな」
「そうだよね。鏡護がいればもう少し何とかなると思うんだけどなぁ……」
雄二と明久も秀吉の意見には賛成のようです。.....ここで『爆弾』を落とせば、面白い反応が見られそうですね。
「明日1日だったら、僕も力を貸すよ?」
「「「「なんだと(って/じゃと)!?」」」」
僕がそういった瞬間、全員が一斉にこちらを見ました。全員開いた口が塞がらない、といった様子です。ナイスリアクション。
「おい!それは本当か?」
雄二が凄い勢いで詰め寄ってきます。
「……と言っても、僕は覗きには参加しないよ。戦闘の手伝いだけだからね」
「いや、それだけでもかなり助かる。正直高橋女史は俺達の手に余るからな」
「しかしあの2人がよく許したのう」
「うん。それは本当に2人に感謝だよ」
「でもよかった!これで100人力だね!」
「…………(コクコク)」
これだけ気持ちよく迎えてもらえると、こちらもやる気になりますね。
「しかし、やはりA・B・Cクラスの協力は必要だな……」
「どうしてさ雄二?鏡護がいれば問題ないんじゃない?」
「少しは頭を使え明久。鏡護には高橋女史の相手をしてもらわなきゃならないんだ。無傷でそこまで連れて行かないとダメだろ」
「あ、そっか。いくら鏡護でも、点数を消耗した状態であの高橋先生に勝てるわけないもんね」
「そういうことだ。そこまでの女子の包囲網を突破するためには、どうしても上位3クラスの協力が必要不可欠だ。よって明日の作戦時刻まではその根回しに全力を費やす」
「う~ん。でも一度断られてるし、そう簡単にいくかな?」
「そこを何とかするのが俺達の仕事だ」
明久と話をしていた雄二は、そう言うとデジタルカメラと部屋に備え付けの浴衣を手に掲げました。
部屋の浴衣は使わないようにと言われていましたが、雄二がそんなルールを守るわけありませんよね。
「で、それをどうするのさ?」
答えはわかりきっていますが、一応聞いてみます。
「もちろん着せて写真を撮り、A~Cクラスの野郎共の劣情を煽る。上手くいけば、覗きへの興味が湧いて協力を取り付けられるはずだ」
.....まぁ、そうですよね。
「ふ~ん。何だか雄二の作戦はいつもそんな感じだよね」
そこに明久がツッコミを入れました。
「ほっとけ」
.....自覚はあったんですね。
「でも、効果はありそうだしやってみる価値はあるね。はい、秀吉」
「……またワシが着るのかのう……?」
秀吉は不満そうな顔をしています。
「安心しろ。秀吉だけじゃない。島田と姫路と木下姉にも着てもらう」
「いや、ワシ1人で着るのが不満というわけではないのじゃが……」
.....それは本当は不満ではないと言っているのと同義ですよ?
「それじゃ明久、お前は島田に連絡を取れ。鏡護は姫路と木下姉に頼んでみてくれ」
「「了解」」
「…………(クイクイ)」
2人に連絡を取る為に携帯を出そうとしていると、康太が僕の服の裾を引っ張ってきました。
「どうしたの康太?」
「…………(グイッ)」
康太は無言で僕に何かを押し付けてきました。.....これは浴衣とカツラ、ですね。
「まさか僕にカツラを着けて浴衣を着ろって?」
「…………(コクコク)」
僕の言葉に小さく何度も頷く康太。
「ハァ……わかった。僕もやるよ」
仕方なく僕も引き受けることにしました。
さて、それじゃ改めて2人にメールを送らないといけませんね。2人のメアドは.....っと。あったあった。
カチカチと携帯を操作して、メールの本文を作成します。
【ちょっと話があるんだけど、僕達の部屋に来てくれない?】
――PiPiPiPiPi
送信ボタンを押して数分もしないうちに返信がありました。.....これは瑞希ですね。
【わかりました。お菓子とかを持って、後で遊びに行きますね】
瑞希は了承してくれたようです。
――PiPiPiPiPi
それから1分もしないうちに、今度は優子から返信がありました。
【いいわよ。後で顔を出すわね】
優子も了承してくれました。
2人には写真の件もありますから、後日何かお礼をしないといけませんね。
―Side 明久
雄二に指示された通り、僕は携帯を取り出すと美波宛にメールを打った。
【ちょっと話があるんだけど、僕らの部屋に来てもらってもいいかな?】
――PiPiPiPiPi
しばらく待つと、美波から返信が。
【別にいいけど、こんな時間にどうしたの?】
あ、少し警戒してるみたいだ。それもそうか。美波から見たら、僕らは覗き魔なんだもんね。さて、何て返事をしたらいいかな?
美波を納得させられるような文章を考えていると、また僕の携帯電話にメールの着信があった。
「ん?誰からだろう?」
メールを開けてみる。送信者は――なんだ、須川君か。何だろ?
【気になったんだけど、どうしてお前は覗きにそこまで必死なんだ?そもそも本当に女が好きなのか?坂本や木下の尻が好きだって言っていた気がするんだけど】
須川君のメールを読んで、一瞬絶句する。
こ、これはとんでもない誤解だ!この文章を見ると、僕は女の子よりも雄二の事が好きみたいじゃないか!すぐにでも認識を改めさせないと!
勢いよく携帯電話のボタンを押して文章を作成する。
何で女子風呂を覗くのかって?そんなの、決まっている!
【もちろん好きだからに決まってるじゃないか!雄二なんかよりもずっと!】
まったく、どうしてそんな事に疑問を抱くんだ。普通に考えたらわかることじゃないか!
少し熱くなりながらも送信ボタンを押す。やれやれ。本当に僕の周りにはバカが多くて困――
【メール送信中…… → 島田美波】
――あれ?
あはは、やだなぁ。どうやら僕は随分疲れているみたいだ。だってメールの宛先の表示が間違っているように見えるんだから。でも、目を擦ってもう一度ちゃんと確認すれば大丈夫だよね?
【メール送信完了…… → 島田美波】
「ゴふっ」
改めて送信先を見た瞬間、僕の口からありえない音が出た。
.....とにかく落ち着くんだ僕。メールの文章はさして危険なものではなかっただろう?冷静になって送った文章をもう一度見直してごらん?
【もちろん好きだからに決まってるじゃないか!雄二なんかよりもずっと!】
なんて男らしくて力強い告白文なんだ。
「バカぁっ!僕のバカぁっ!ある意味自分の才能にビックリだよ畜生!」
こここコイツは人生最大のピンチだ!よりにもよって僕をウジ虫かサンドバック位にしか思っていない美波にこんなメールを送ってしまうなんて!絶対に振られてしまうだろうし『振った相手と会うのは気まずいから』と部屋に来てくれることもないだろう。作戦失敗の上、僕には予期せぬ失恋!今日は厄日か!?
.....ハッ!こ、こうしちゃいられない!とにかく急いでさっきのメールが事故だって事を弁明しないと!
「どうしたの明久?さっき何か悲鳴が聞こえたけど」
「そうだぞ明久。いつもより5割増しのアホ面で何やってるんだ?」
さっきの悲鳴を聞きつけたらしい鏡護と雄二がこっちに近づいてきた。
「色々と大変な事になっちゃったんだ!今は僕の邪魔をしないで――」
「大変な事?それは――っとと」
「雄二?――って、わわっ!?」
ツルン(雄二がバナナの皮で滑る音)
ドタッ(雄二が鏡護と僕を巻き込んで倒れる音)
バキッ(鏡護が僕の携帯を踏み潰す音)
「明久。それで大変な事って何だ?」
「たった今キサマらが作った状況だ」
僕の携帯は、今やバラバラに分解されて見るも無残な姿へと変わっていた。これでは電話やメールでの弁明なんて明らかに無理だ。
「ん?あ、これもしかして明久の?ごめん。今度修理して返すよ」
今の僕には、誰が何と言おうとコイツらをしばき倒す権利があるはずだ。
「いや、今はそんな事はどうでもいいから、とりあえず雄二の携帯電話を貸して!」
「あ、ああ。別に構わんが」
そう言って携帯を取り出した雄二からそれを掻っ攫い、すぐに美波の番号を探し始める。
坂本雄二のアドレス帳登録……1件 → 『霧島翔子』
「む。翔子のヤツ、また勝手に俺の携帯電話を弄りやがったか……。これでまた家でアドレス帳を入力し直さないとならないじゃないか」
「………」
当然美波のアドレスなんて覚えているわけがない。僕の中で何かが色々と終わってしまった気がした。
.....仕方ない。こうなったらコイツらにも僕と同じ苦しみを味わわせてやる!
カチカチカチ。送信、っと。
【To:霧島翔子
もう一度きちんとプロポーズがしたい。今夜浴衣を着て俺の部屋まで来てくれ】
「鏡護も携帯電話貸して!」
「どうしたのさ?」
「いいから早く!」
「わ、わかったよ」
そうして鏡護からも携帯を奪い取ると、同じようにメールを打つ。よし送信、っと。
【To:優子&瑞希
さっきのとは別件で2人に大事な話があるんだ。今夜改めて浴衣を着て僕の部屋に来て欲しい】
「うん?明久、俺の携帯電話で誰に何を送信し――ゴふっ、ななななんてことをしてくれるんだキサマ!」
「どうしたの雄二?明久も突然何を――って、ちょっと!?何でこんなメールを送ったのさ!?」
「黙れ!キサマらも僕と同じように色々なものを失え!どりゃああーーーっ!」
お茶の中に2人の携帯を突っ込む。
「おわぁっ!俺の携帯電話になにしやがる!!これじゃ壊れて弁解もできないだろうがクズ野郎!」
「そう!それだよ!それが今僕が雄二に抱いている気持ちだよ!」
「何をわけのわからん事を!と、とにかく今は急いで翔子の部屋に行って誤解を解いてこないと大変な事になっちまう!」
「あっ!ダメだよ雄二!今外に出たら――」
ガラッ(雄二が廊下へと続くドアを開ける音)
ドゴッ(廊下にいた鉄人が雄二に拳を叩き込む音)
グシャベキグチャッ(雄二がテーブルを巻き込んで壁に激突する音)
「部屋を出るな」
「「了解です」」
ピクリとも動かない雄二の代わりに、僕と鏡護が返事をする。この部屋に対する教師達の警戒態勢は万全だ。
「もう雄二と鏡護を巻き込んだから、後はどうなってもいいや」
僕はもう自分の事を考えるのは止めにした。きっと美波もあのメールは冗談だと思ってくれるだろうと願いつつ.....
―Side Out
あの後僕達の部屋にやってきた島田さん、瑞希、優子の3人と、秀吉とカツラをかぶった僕の合計5人で撮影会は行われました。
浴衣を着ていた秀吉に優子がキレたり、カツラをかぶった僕に瑞希と優子が異様にテンションを上げたり、逆に島田さんは落ち込んだり、僕達がポーズを取る度に例の如く康太が鼻血を噴き出したりと、また騒動があったけど無事終了しました。
.....こっそりカツラを取った状態で瑞希と優子と3人で撮った写真は、皆に内緒の3人の思い出用という事で。
そうして女子3人はそれぞれの部屋へと帰り、今は皆寝静まっています。
「……きて、起きなさい鏡護……」
「……護君、起きてください……」
.....何でしょう?誰かに身体を揺すられているような気がします。
ゆっくりと目を開けた僕の視界に入ったのは、
・ぐっすりと眠っている秀吉の寝顔
・カメラを構えている康太
・慌てる雄二の前で浴衣をはだけようとしている霧島さん
・明久に詰め寄っている島田さん
でした。
.....一体どういう状況ですか?
「鏡護君」
「起きたみたいね」
背後から聞こえた声に振り向くと、瑞希と優子がいました。
「あれ?なんで?」
「なんでって、呼んだのは鏡護でしょ?」
「メールの事、忘れちゃったんですか?」
メール?はて、何か送りましたっけ?
.....ポクポクポク、チーンっ!
「あぁ!あれか!」
ついつい大声を出してしまう僕。
「ちょっと!鏡護うるさい!」
「こ、声が大きいです鏡護君!」
「むぐぅっ!?」
慌てた様子で2人に口と鼻を押さえられます。
「落ち着きなさい。そしたら手を放すから」
「……(コクコクコク)」
優子の言葉にすぐに頷いて返します。いくら焦ったからとはいえ、口と鼻を塞がれたら息ができないんですよ?
「大声は出さないでくださいね?」
そうして手を放してくれる2人。呼吸を整えてから、正面の2人を見ます。
「え~っと。って事は、だ。2人は『大事な話』を聞きに来たんだよね?」
「「ええ(はい)、そうよ(です)」」
僕の言葉に頷く2人。やはりそうですか.....しかしどうしましょう?あれは誤送信だったのですが、それで追い返すのも何だか申し訳ない気がします。
.....そうです!2人にはアレを伝えましょう!
「わかった。ただ、ちょっとこの部屋じゃ言いにくいから場所を変えよう」
そう言うと、2人は首を傾げました。
「?どうして場所を変えるのよ?」
「そうですよ。ここでいいじゃないですか」
.....もしかして2人とも、周りの状況が見えてないんでしょうか?
「……2人とも、周りを見てみようか」
「周り、ですか?」
「どういう事よ……って、えっ!?どうして代表と美波がいるの!?それに秀吉以外は皆起きてるじゃない!」
「ほ、本当です!気が付きませんでした……」
.....本当に周りは目に入ってなかったんですね。
「そういうわけだから、移動してもいいかな?」
「ええ、そうね……」
「はい……」
今さら恥ずかしくなったようで、2人は静々と僕の後についてきます。
僕達はちょうど空き部屋だった隣室に入りました。
「それじゃ、さっきの続きを言わせてもらうよ」
2人が頷くのを待って、続けます。
「僕は2人と一緒にこれから全部の時間を共有したい。……もうしばらく先の話にはなるけど、僕と結婚してくれるかい?」
正直タイミング的にどうなんだ、という話ではありますが、いつか言おうと思っていた僕の偽らざる本心である事には違いありません。
「「――っっ!?////」」
聞いた2人はやはり驚いています。暗くてあまりよくわかりませんが、顔も赤くなっているようです。
「な、ななな何て事を言い出すのよ!こんな時に!」
「う、嬉しいですけど、流石にこんな時に言われるのはちょっと……」
器用に小声で怒鳴る優子と、何やらボソボソと呟く瑞希。
「ごめん。本当は僕も色々と準備してから言うつもりだったんだけど、この合宿中に2人に伝えたくなってね」
「「鏡護(君)……」」
.....ん?2人ともどうしたのでしょうか?突然俯いてしまいました。
「「アタシ(私)は――」」
そして、どちらからともなく話を始めた2人は――
「アタシは、いつでも『素のアタシ』を見てくれる鏡護が大好き。だから――」
「私は、困っている時には必ず手を差し伸べてくれる鏡護君が大好きです。だから――」
「「だから、アタシ(私)を鏡護(君)のお嫁さんにしてください」」
そう言って浴衣を脱いで僕に近づいて.....って、えぇっ!?
「2人ともストップ!こ、こんなところでそれはマズいよ!」
慌てて止めます。
「「そんな……」」
そこの2人!残念な顔をしないでください!
「とにかく、すぐに浴衣を着て!それにこんなところをもし先生に見つかったら――」
『ああああああっ!皆そんなに騒いじゃダメだよっ!このままじゃ鉄人に気付かれて――』
『何事だっ!今吉井の声が聞こえたぞっ!』
「「「………………」」」
隣から聞こえた明久の声に、階下にいる西村先生が反応したようです。
「……というわけでもうすぐ西村先生が来るはずだから、静かにしてやり過ごそう」
「……そうね」
「……わかりました」
.....明久、頑張って
『吉井に坂本ぉっ!お前らだという事はわかっているんだ!大人しくその場を動くなよっ!』
あ、雄二も巻き添えにされましたね。
しばらくして隣の部屋の前が騒がしくなり、2つの足音と少し遅れてもう1つの足音が廊下を走っていくのが聞こえました。
「ふぅ……。よかった。行ったみたいだね」
「「ええ(はい)」」
3人して胸を撫で下ろします。すると――
「もう大丈夫でしょ。……という訳で、鏡護……」
「鏡護君……」
再び僕に迫ってくる2人。いけません!ここで2人の誘惑に負けてしまっては!
「鏡護……」
「鏡護君……」
だ・か・ら、そうやって涙目+上目遣いをするのは止めてください!
「だ、ダメだよ2人とも!このままじゃ僕は――」
結局そのまま朝まで2人と過ごしてしまった僕は、改めて2人には勝てない事を強く思い知らされてしまいました。
しかし部屋に差し込む朝日の中で見た2人の幸せそうな寝顔を見ると、「それもいいか」と思ってしまう僕でした。
あとがき
作者 「なんというエロス」
――スパァァーンッ!
鏡護 「酷い!ここ数回のあとがきの中で1番酷い始まりだよっ!」
作者 「痛いわ!力の限り叩きやがって!」
鏡護 「今のを聞いたら誰でも叩きたくなるよ!」
作者 「元凶が何を言うか!」
鏡護 「う……。で、でもあれは2人が……」
作者 「言い訳なんて見苦しいぞ!自分に正直になれ!」
鏡護 「………よかっ……」
作者 「んん?聞こえないぞ?」
鏡護 「………もちよかっ……」
作者 「ヘイ!もっと大きな声で!」
鏡護 「っっ////だから、気持ちよかったって言ったんだよっ!」
作者 「チッ……」
鏡護 「ちょっと!?人に恥ずかしい事言わせておいてなんで舌打ちするのさ!?」
作者 「これだからリア充は……」
鏡護 「僕が悪いの!?ねぇ!?おかしいでしょ!?」
作者 「リア充爆発しろ」
鏡護 「うわ、ヒドっ!」
作者 「え~、次回予告いきます。
次回、第25問『挑むは最強の敵!男達の運命は……』
を、乞うご期待ください」
鏡護 「テンション低いなぁ……。あ、次回もよろしくお願いします!」