―Side 明久
「ふぁ……あふ……」
自分でもだらしがないと思うくらい大きな欠伸が出る。
眠い。とにかく眠い。死ぬほど眠い。もし今が貴重な朝食の時間でなければ、ブッチぎって寝ているところだ。
「流石に眠いぞこら……」
隣の雄二も僕と同じように目を擦っている。
眠いのも当然だ。僕達2人は3日連続で朝まで鉄人の鉄拳付き補習を受けさせられているのだから。
「2人とも災難だったね……」
「済まなかったのう……」
鏡護と秀吉が声を掛けてくれた。鏡護は昨日どこかに行ってたみたいだからアレだけど、秀吉はただ寝てただけだから気にする事ないのに。
「まぁ災難と言えば災難だったかも――ふわぁぁああ~~」
ダメだ。欠伸が止まらない。今日は最終日だから、自習時間にきっちりと点数を補給しなくちゃいけないのに.....
「弱ったのぅ。お主らがその調子では、今夜はとても……」
「別にまったく寝てないわけじゃないから、気合さえ入れば目が覚めると思うんだけど――ふわあ~~」
口を開くたびに欠伸が出る。これは重症だ。どれくらい重症かと言うと、この僕が鮭の切り身や白いご飯を目の前にしているのに眠気を優先したくなるくらいだ。
「俺もダメだ……。全然気合が入ら――ふおぉぉおっ!?」
「ど、どうしたの雄二!?」
隣でダルそうにしていた雄二が、何かを見た瞬間一気に覚醒していた。何だ?何を見たんだ?
「…………効果は抜群」
「あ、おはようムッツリーニ。」
僕の後ろの出入り口から入ってきたのはムッツリーニだった。手に何かを持っているみたいだけど.....?
「ムッツリーニ。今しがた雄二に見せたのは何じゃ?えらく興奮しておるように見えるのじゃが?」
「…………魔法の写真」
ムッツリーニには珍しく、誇らしげに胸を張っている。
「へぇ~。どんなの?僕達にも見せてよ」
「…………(スッ)」
ムッツリーニが手にしている写真を僕らに渡してくる。僕と秀吉と鏡護は3人の真ん中に写真を置いた。
「魔法の写真だって?何を言ってるんだか。僕らももう高校生なんだし、たかだか写真程度で気合なんて入るわけがふおぉぉおっ!」
「ほぅ。これはまた……」
「凄いね。カメラのアングルがまた絶妙だよ……」
ムッツリーニが見せてくれた写真の1枚目は、昨夜撮影した姫路さんと秀吉と美波、木下さん、鏡護(withカツラ)の5人の浴衣姿の集合写真だった。
5人が皆恥ずかしそうな上目遣いで見つめてくるその破壊力は、言葉では言い尽くせないものがある。さらに女性陣+鏡護は浴衣をはだけているせいで胸元や鎖骨が少し覗いていて.....!
「僕、生きていて良かった……!」
そこまで肌を露出しているわけじゃないのに、この胸の内から湧き上がる興奮は何だろう!?この5人の入浴シーンを見る為なら、僕は何だってできるよ!
「明久。2枚目は何が写っておるのじゃ?」
「えっと……」
渡された写真を捲ってみる。
すると、今度は浴衣姿で雄二に迫る霧島さんとハーフパンツ姿の美波のツーショットが出てきた。
「す、凄いよムッツリーニ!今僕はキミを心から尊敬している!」
「確かに凄いのう……」
「うん。上手く雄二と明久が入らない角度で撮られているし、もはやプロの業だね」
まるでグラビア写真のように上手く写してある。特にあの美波までもが健康的ながらも色気を醸し出しているように見えるなんて、ムッツリーニは神の技術を持っていると言っても過言じゃない!
「で、3枚目は?」
「あ、うん。3枚目は――」
さらに写真を捲る。すると、そこに写っていたのは――セーラー服姿の僕(パンチラ☆エディション)
「…………思わぬ出来の良さだったから印刷してしまった」
「放して鏡護、秀吉!このバカの頭をカチ割って、脳髄を引きずり出してやるんだ!」
「落ち着くのじゃ明久!よく撮れておるではないか!」
「ダメだ秀吉!それは今の明久には禁句だよ!明久、大丈夫。僕達は何も見なかった。だから落ち着いて!」
何はともあれこれで皆の協力も得られるだろうし、僕達の気合も最高潮だし、今夜はやってやるぞ!
―Side Out
――ピピッ
どこかから聞こえてきた電子音。これは8時を告げる時報。作戦開始の合図です。
「……よし。てめぇら、気合は入っているか!」
「「「おぅ!」」」
「女子も教師も、AクラスもFクラスも関係ねぇ!男の底力、とくと見せてやろうじゃねぇか!」
「「「おぅ!」」」
「これがラストチャンスだ!俺たち4人から始まったこの騒ぎ、勝利で幕を閉じる以外の結果はありえねぇ!」
「「「当然だっ!」」」
「強化合宿第4夜・最終決戦、
「「「よっしゃぁーっ!!」」」
「あ……」
凄まじい気迫に思わず気圧されて出遅れてしまいました。.....っと、呆けている場合じゃないですね。僕も早く行きませんと。
『翔子たん!翔子たん!はぁはぁはぁああっ!!』
『島田のぺったんこぉぉーっ!』
『木下さーん!貧乳は正義ですぞーっ!!』
『姫路さん結婚しましょおーっ!』
廊下に出た途端、聞こえてくるE・Fクラスの男子達の叫び。
.....皆死んでしまえばいいと思います。特に最後の2人は僕が直々に私刑を執行して差し上げましょう。
とりあえず3階は大丈夫そうなので、先を急ぎます。
「C・Dクラスの野郎共、協力に感謝するっ!2階は――俺達の背中はお前らに預けるぞ!」
2階に降りてきたところで雄二の声が聞こえてきました。どうやら追いついたようです。
『協力なんざ、ったりめぇだ!』
『女子風呂覗かなくて何の為の男でぇっ!』
『てめぇらこそしくじるんじゃねぇぞっ!』
.....士気が高いのは喜ぶべき事ですが、何故べらんめぇ口調になっているんでしょうか。ノリですかね?
「雄二っ!」
「鏡護か。遅いぞ」
「ごめん」
「でも、この調子ならA・Bクラスもきっと協力してくれてるよね!」
「さて、それはどうだろうな」
再び階段を降りて先へ進みます。1階で戦闘の音が聞こえなければ、A・Bクラスの協力はないという事ですが.....
『……護してくれっ……』
『……メだっ!……倒的過ぎる……!』
「やった!これで1階の制圧も問題なく――」
「待って!様子がおかしいよ!」
踊り場で折り返すと、階下の様子が視界に入ってきました。そこには、教師女子連合軍に押されているBクラス男子の姿がありました。
『Aクラス 霧島翔子 & Aクラス 木下優子 & Fクラス 姫路瑞希 VS Bクラス 加西真一
総合科目 4762点 & 4365点 & 4579点 VS 1692点 』
「……雄二。悪戯はそこまで」
「残念だけど、もうお終いね」
「皆さん。ここは通しませんよ」
.....これはもう一方的虐殺ですね。この3人が防衛に回っていては、男子側の勝ち目は希薄です。
「Aクラスがおらんようじゃな……」
周囲を確認して、秀吉が悔しそうにつぶやきます。確かに目の前の総合科目戦闘でも、離れたところの物理科目戦闘でも、Aクラスの生徒らしき姿は見当たりません。結局協力してくれたのはBクラスだけでしたか.....
「オマケに随分と用心深い布陣だな、クソッ!」
階段前の向こうの配置を見て、雄二も悪態をつきます。中央には高橋先生がいて、そこから一切動く気配はありません。その周囲には霧島さん、優子、瑞樹の他Aクラス女子が数人立っています。
「(雄二。ここは僕が出るよ)」
「(……仕方ない。やってくれるか?)」
「(任せて)」
短く言葉を交わして、僕は戦場へと足を踏み入れました。左目のコンタクトを外して――
「防衛組には悪いが、押し通らせてもらうぞ――
『『『なっ!どうして貴方(彼/キミ/ヤツ/アイツ)がっ!?』』』
高橋女史をはじめ、その場にいたほとんど全員が驚きの声を上げた。驚いてないのは雄二達と優子、瑞樹くらいだな。
『Fクラス 天水鏡護 総合科目 10000点』
そして表示される俺の点数。
『総合1万点!?』
『に、人間じゃないわ……』
『おいおい、あの霧島翔子にダブルスコアってどういう事だよ……』
『ヤツは化け物かっ……!』
途端に周囲が騒がしくなる。だが、いつまでも呆けていてはいい的だぜ?
「一気に形勢逆転といこうか!出でよ『
――ザンッ
腕輪の特殊能力で喚び出した剣でもって擬似空間断層を作り、衝撃波を発生させる。これが『
衝撃波は、俺の前面に展開されていた防衛組の召喚獣を残らず消し飛ばした。霧島や優子、瑞希も例外ではない。
「……これが天水の本気?」
霧島が俺に問い掛けてくる。
「そうだな。これが今の俺の全力だ」
「……そう」
そのまま霧島は黙ってしまった。
「まったく、ホント異常よね」
「驚きました。こんなに差があったなんて……」
「俺は不可能を可能にする男だ!ってな」
優子と瑞樹には茶化してそう答える。
「まさかここまでとはな……」
「次の試召戦争では頼りにしてくれていいぜ?」
「ああ。その力、存分に振るってもらうさ」
言って雄二と笑う。
「……まさかこれ程の力を秘めていたとは、正直私も驚きました」
「これも全て高橋先生の補習のおかげさ」
「そうですか」
「貴女とは1度戦ってみたかったんだ。
「いいでしょう。今の一撃で貴方の点数も減っていますからね。相手になりましょう――
高橋女史の喚び出しに応じて、その召喚獣が姿を現す。軍将校のような服を身に纏い、手には鞭を持っている。
「というわけだ雄二!お前達は先に行け!」
「おう!必ず勝てよ!」
「鏡護、頑張って!」
「お主の武運を祈っておるぞ!」
「…………(コクコク)!」
そう言って4人が俺と高橋女史の横を通り抜けていく。
「……アイツらを追わなくていいのか?」
高橋女史に声を掛ける。
「貴方がそれをさせてくれるとは思えませんからね」
「当然だ」
『学年主任 高橋洋子 VS Fクラス 天水鏡護
総合科目 7986点 VS 8000点 』
そうして表示される互いの点数。俺の方は、さっきの腕輪の発動で点数が減っている。
「流石は学年主任。素晴らしい点数だな」
「それを上回っておいて、よく言いますね」
「違いない。……さあ、いくぜ!」
相手は召喚獣の扱いに長けていて、しかもあの点数だ。後手に回ってはマズい。そう考えた俺は迷わず打って出る。
「いい判断です。が、まだまだですね」
「なにっ!?」
『天水鏡護 8000点 → 7562点』
俺の召喚獣が吹き飛ばされ、同時に点数が大きく減少する。何が起きたんだ!?
「
天眼を発動して、高橋女史の召喚獣を見据える。
腕輪能力……『伸縮』:攻撃のレンジを自在に設定することができる
チッ.....今のはこれか。
「……
「……どうやら私の腕輪能力はわかったみたいですね」
「ああ」
これでは距離を開けてしまえば向こうの独壇場だ。何としても
「そうと決まれば行動あるのみ!」
俺は再び召喚獣を突っ込ませます。
「ですが、わかったところでどうなるものでもありませんよ?」
「それはどうかな?」
「なっ!?」
高橋女史の召喚獣が繰り出す攻撃を紙一重でかわしながら、徐々に接近していく。
「くっ……。高速で移動する事で的を絞らせないなんて……」
いくら高得点を誇る高橋女史といえど、自分に匹敵する点数の持ち主と戦った事なんてないのだろう。こちらのスピードに対応しきれていない。
「もらったぁっ!」
――シュシュシュシュッ
相手の懐に飛び込んだ俺は、高速で万年筆による突きを繰り出す。
「くぅっ……。流石にこの距離はキツいですね……」
しかし高橋女史もただでやられてくれるはずもなく、必死に応戦してくる。
『学年主任 高橋洋子 VS Fクラス 天水鏡護
総合科目 5482点 VS 5813点 』
このまま削り合いになるのもアレだな。.....ここで勝負を決めるか!
「そろそろ決着をつけさせてもらう!出でよ『
「ならばこちらもいきます!『地這い大蛇』!」
『虚空断裂』:『亜空切断』の応用。多数の断層で空間に大きな穴を作って衝撃波で敵を切り刻み、全てを飲み込む最終奥義。
『地這い大蛇』:鞭をまるで大蛇のように振るって敵を薙ぎ払う最終奥義。
――ドォン!
そうして互いの最後の攻撃がぶつかり合い、爆発が起きる。しかし断層が作った穴に煙が吸い込まれて、視界が晴れていく。
そして――
『学年主任 高橋洋子 VS Fクラス 天水鏡護
総合科目 37点 VS 84点 』
煙が消えた先には地に膝をついた高橋女史の召喚獣と、その首筋に万年筆を突きつける俺の召喚獣の姿があった。
「……私の負け、ですね」
「ああ……そして俺の勝ちだ」
そして俺は高橋女史の召喚獣に止めを刺し、
「学年主任高橋洋子、Fクラス天水鏡護が討ち取ったりっ!!」
大音声で勝ち名乗りを上げた。
『『うぉおおおおおっ!すげぇえええええっ!!』』
『『そ、そんな……高橋先生が……』』
その瞬間、男子軍からは大歓声が、女子教師連合軍からは絶望の声が上がる。
「……まさか」
「ホントにやってくれちゃったわね……」
「はい……」
霧島、優子、瑞希も呆然としている。
「ふぅ……」
近くの壁に寄りかかって、そのまま床に座り込む。
「俺のやりたかった事は果たした。後はもう知らん」
そうして俺はその場で意識を手放した。
.....あ、しまった。明久達に脅迫犯の正体教えてなかったな.....ま、いっか。
―Side 明久
『学年主任高橋洋子、Fクラス天水鏡護が討ち取ったりっ!!』
『『うぉおおおおおっ!』』
「なっ、何ぃっ!?高橋先生が天水にやられただとっ!?」
「凄いよ鏡護!」
1階からの声を聞き、鉄人が予想外の事態に驚きの表情を見せる。
「おい吉井!何故天水が協力している!アイツはこの3日間何もしていなかっただろう!」
その表情のまま、鉄人は攻撃を中断して僕に問い掛けてくる。
「念の為言っておくと、鏡護の目的は覗きじゃありませんよ。純粋に高橋先生と戦いたかっただけだそうです」
流石に大偉業を果たしてくれた鏡護に、やってもいない罪まで被せるのは忍びなかったから釈明をする。
「……アイツもとんだ大バカ野郎だな。しかもそれで結果を出してしまうとは……」
あ、鉄人が呆れてる。
「しかしこうなっては、なおさらここを通す訳にはいかなくなったな」
そう言って表情を引き締めると、鉄人が再び構えを取る。
.....さて、どうしようか?
拳、蹴り、木刀を駆使して鉄人を攻撃してはいるものの、全くダメージを与えられずにいる。
「……アンタ本当に人間なのか!?」
「鍛えているからな。これくらいは当然の事だ!」
「そんなの当然じゃないですよ!」
一見優勢なように見えているけど、実際には僕の方が旗色が悪い。
なぜなら僕は2体の召喚獣の動きを同時に考えなければならないからだ。放たれた攻撃をよけるのが主従か副獣か、ソレを瞬時に判断して個別に行動する。2人分の行動を1人で処理するなんて、いつまでも続けられない。
「どうした吉井!動きが鈍っているぞ!」
「くぅっ!」
そこで、右腕に鈍い衝撃が走った。
それをどちらが受けたのかと躊躇した瞬間を狙い、鉄人の拳が副獣の鳩尾に直撃。
「ぐ、ふぅ……っ!」
痛みに耐えかね、廊下に背中から倒れ込んでしまう。
「所詮、下心の為の集中力などそんなものだ」
「……集中?そうかっ!」
「ほう……まだやるのか? 根性だけは人一倍だな」
立ち上がった僕を見て、鉄人がどこか楽しげに口元を歪める。でも、笑っていられるのもここまでだ!
「鉄人、感謝するよ。今アンタは僕にヒントをくれた」
「ヒントだと?」
「そう、集中だ。狙いを絞るんだ。拳、蹴り、木刀。主獣も副獣も、今から放つ攻撃を全て――」
2体にそれぞれバラバラの指示を出すから混乱し、攻撃をバラバラに分散させるから威力が出ない。だから、今から全ての攻撃を――
「――鉄人、アンタの股間に集中させる……!」
「き、キサマ!何て恐ろしい事を考えるんだ!?」
「流石にあんたもそこだけは鍛えようがないはずだ!行くぞ鉄人っ!」
ローと見せかけて金的狙いに変わるキック。足元を狙ったと見せかけて股間を突きにいく木刀。鳩尾狙いから下腹部に軌道を修正した拳。とにかく全ての攻撃をただ一度の急所攻撃の為に……!
「こ、これほど執拗な急所攻撃をする奴は初めてだ……!」
「悶絶しろ鉄人!」
ガードで手一杯になっている鉄人。そっちが来ないならこっちからいくぞ!
「くっ……!」
副獣が力をためて大きく拳を振るうのを見て、股間のガードを固める。
「なんて、ウソです」
その瞬間、主獣が副獣を踏み台に鉄人の背後へ飛ぶ。
「しまっ――」
「もらったぁぁーっ!」
僕の召喚獣が手刀をふるい、それが無防備な鉄人の首に吸い込まれ、
「僕の勝ちだ、鉄人!」
「ぐぅ……っ!よ、吉井、キサマ……」
ドサリ、と重い音を立てて、鉄人はゆっくりと床に倒れ伏した。
「やった!やっと、やっと終わった……!」
本当に長かった。ここまでやってくるのに挫折したのは1度や2度じゃない。でも、今僕はこうしてここにいる。
「待ってろよ、美波のペッタンコ……!」
もう楽しみで仕方がな――ハッ!殺気!?
本能的な危機を感じて素早くその場にしゃがみこむ。すると僕の頭があった位置を、バチバチと音を立てて何かが通過していった。
「お姉さまの操は渡しません……!」
「清水さんか!」
見覚えのあるスタンガン(20万ボルト)を構えて立っていたのは清水さんだった。
「昨晩からお姉さまの元気がないのも、美春に振り向いてくれないのも全て貴方のせいです!死んで美春に詫びて下さい!」
清水さんが凶器を振り回してくるけど、さっきまで鉄人の相手をしていた僕には楽々避ける事ができる。
「この……!言う事を聞かなければ、この写真をバラ撒きます!」
「え?写真って――うわっ!それは僕の恥ずかしい写真!?」
清水さんが取り出したのは僕のメイド服姿の写真。あれ?でもなんで彼女があんな写真を持ってるんだ?まさか――
「――まさか、清水さんは僕の事が好き、とか……?」
「吐き気がします!」
おかしいな?目から汗が.....
「でも、それならどうしてそんな写真を?」
「お姉さまのチャイナドレスを撮影しようとしたら、ちょうどいい脅迫のネタが通りかかったので撮影したまでです!」
ん?という事は.....?
「清水さんってもしかして、お尻に火傷の痕があったりする?」
「な、何故それを!?さては盗撮や盗聴をやっていますね!?」
これで決まりだ。例の脅迫犯は清水さんだったんだ。っていうか、本当にやってる人にそんな事を言われたくない。
「とにかく大人しくしてください!写真を公表されてもいいのですか?」
堂々と僕を脅してくる清水さん。.....これはちょっとオシオキが必要かな?
「よっと」
「ああ!返してください!」
スタンガンを奪い取って、最低出力で押しつける。
――バチッ
「し、痺れますっっ!」
清水さんは呆気なく気絶した。
「これで全部片付いた、かな?」
悪の元凶はたった今滅びた。これでもう僕を邪魔するものは何もない。
「…………明久」
「ムッツリーニ!無事だったんだね?」
「…………当然」
ムッツリーニの全身から疲労が見て取れる。余程厳しい戦いだったんだろう。それでも、その顔はどこか晴れ晴れとしている。
「明久、よくやった」
「雄二!それに皆も!」
さらに後ろから雄二を筆頭に、各クラスの男子の面々がやってきた。全員が1つの目的を達成した喜びに、満面の笑みを浮かべている。
『吉井、よく鉄人を倒してくれた。』
『お前が今回のMVPだ』
僕を称える声がそこら中から聞こえてくる。
「皆の協力があってこそだよ!本当にありがとう!」
それに僕個人としては、今回のMVPは鏡護だと思う。なんせ高橋先生をはじめ、霧島さん、姫路さん、木下さんらを1人で倒してしまったのだから。
「それじゃ、そろそろ行くか」
雄二が珍しく顔を綻ばせている。コイツも正常な男子。この状況はやっぱり嬉しいんだろう。
「皆!これだけ人数がいれば人物の特定もできないし、邪魔も排除できる!停学や退学の心配もないから思う存分楽しんでくれ!」
『『おーっ!』』
「全員、心して見ろ!これが俺達の勝ち取った栄光だ!」
雄二が女子風呂の扉を開けた。
張りのある肌。
しなやかな肢体。
腰まで伸びた白髪。
見知った顔でありながら、衣服に包まれて一度も見ることのできなかった姿。
この機を逃せば二度と目にする事はできないと言える、そんな――
「な、なんだいアンタ達は!?雁首そろえて老人の裸見に来たのかい!?」
そんな
『『『割にあわねぇーっっ!!』』』
僕ら全員が、そのありえない光景に涙した.....
―Side Out
あとがき
作者 「まさかのオチだな」
鏡護 「行かなくてほんとによかった……」
作者 「確かに、今回は結局お前の判断が正しかったわけだ」
鏡護 「世の中そう簡単に上手くはいかないって事だね」
作者 「ああ。そうだな」
鏡護 「ところで、どうしよう?」
作者 「どうしよう、とは?」
鏡護 「いや。だって僕、学年主任の先生を倒しちゃったんだけど……」
作者 「ああ。そんな事もあったな」
鏡護 「……なんでそんなどうでもよさそうなのさ?」
作者 「だってホントにどうでもいい事じゃん」
鏡護 「僕にとっては一大事なんだよ!」
作者 「アレだろ?今後さらに補習の時間が増える、とかだろ?」
鏡護 「止めて!今は現実を見せつけないで!」
作者 「でもどうせいつかは直面することだぞ?」
鏡護 「そうしたらその時考えるよ……」
作者 「え~。鏡護が現実逃避に走ってしまったので、今回はこの辺で。次回で強化合宿編は完結です」
作者 「それでは次回予告!
次回、第26問『夢追い人の終着点と、新たな物語の序章(仮)』
を、お楽しみに~!」