とりあえず校舎内に入った僕は靴を履き替えて、2年生の教室がある3階を目指します。
「せっかくだから他のクラスの教室でも見てみようかな」
誰に聞かせるでもなくそうつぶやくと、1人教室巡りツアー(笑)をすることに決めました。
* * *
「・・・ここは一体どこの高級ホテルなんだろ?」
階段を上がって最初に目に入ったのは2年A組の教室でした。
まず驚いたのはその教室の広さです。少なく見積もっても一般教室の4倍強あります。
さらに教室の前面には黒板の代わりに超大型プラズマディスプレイが配置されています。
また、壁には高そうな絵画や観葉植物がところどころに置かれていて、高級感を煽っています。
極めつけは生徒たちが使う机周りの設備です。ノートPC、個人エアコン、冷蔵庫、その上リクライニングシートまで完備とは恐れ入りました。なんて贅沢なんでしょう。
僕は軽い羨望を覚えつつ、残りの教室を適当に見て回ってから自分の教室へ向かいました。
* * *
「ここか……」
新校舎から渡り廊下を通って旧校舎へ。
そうしてたどり着いた「2-F」のプレートのかかった教室を前にして、愕然としました。
既に外観からしてそのボロさが滲み出ています。これは酷いですね。
とりあえず、教室の外でいつまでも突っ立っているわけにも行かないので中に入ります。
「これは……廃屋、…いや墓場かな?」
そして扉の内側を目にした僕は一瞬にして絶望感と虚無感に襲われました。
普通の教室にあるような机・椅子は存在せず、そこにあったのは卓袱台と座布団。
床はフローリングなどではなく、傷んでカビ臭い畳敷きでした。
想像の遥か斜め上をいく惨状に、試験を早退した自分を思わず呪いたくなってしまいました。
しばらくの呆然自失状態から抜け出した僕は、まだ誰もいなかったのを良いことに適当な所に腰を下ろすと、知り合いが来たら起こしてくれることを期待しつつ目を閉じました。
現実を見ていたくなくて夢の世界に逃げたわけでは、決してないことを誓っておきます。
「………、…遅れちゃいましたっ♪」
「早く座れ、このウジ虫野郎」
どこかで聞いたことのある明るい声と、それに続くこれも聞いたことのある罵声が聞こえて目を開けると、なにやら周りが騒がしいです。
寝起きで意識のはっきりしないまま、周囲を確認してみるとどうやらだいぶ時間が経っているようでした。
「おお、起きたようじゃな」
そして隣からはこれまた聞き覚えのある独特の爺言葉が。
声につられてそちらを向くと、やはり知った顔ですね。
「あれ、秀くん?」
まだ僕の頭は完全に覚醒してないようで、ついつい昔の呼び方で呼んでしまいました。
僕に声を掛けてきたのは幼馴染の
彼とは家が近所で、最近でもよく互いの家に遊びに行ったりしています。
本人は嫌がっていますが、女子と見間違えるような可愛らしい顔をしています。そのため初対面ではまず男と思われないのが悩みだそうです。
ちなみに、彼には双子の姉の
「そうじゃよ。あまりに気持ちよさそうに寝ておったので、起こさずにおったんじゃが」
「そうだったんだ。誰も起こしてくれないから、てっきり知り合いはいないと思ってたよ」
「ははは、まあこうして同じクラスになったんじゃ。1年間よろしく頼むぞい」
「うん。こっちこそよろしく。…そういえば優ちゃ――優子は?」
「姉上ならAクラスじゃ。お主と同じクラスでないと知って不貞腐れておったがの」
「う……。後でご機嫌取りしておくよ」
「それがよいじゃろう。…む、担任が来たようじゃな」
「ほんとだ。じゃあまたあとでね」
「うむ」
ちょうど寝癖のついた髪にヨレヨレのシャツを貧相な体に着た、いかにもさえない風体のオジサンが教室に入ってきたところでした。
「えー、おはようございます。担任の
黒板の方に向き直り、名前を書こうとして、やめました。どうやらチョークすらないようです。
続いて設備に不備があるか聞いているが、生徒たちに対しては「我慢してください」、「自分で何とか
してください」といった感じの返答しかしていません。教育機関としてそれはどうなんでしょう。
「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」
廊下側からというと.....最初は秀吉でした。
『木下ーっ、好きだっ、付き合ってくれーっ!』
『お前抜け駆けすんなよ!俺も大好きだーっ、木下ーっ!』
相変わらず秀吉に対するこの学校の男子の対応はおかしいと思います。.....さて次は誰でしょう?
「…………
おや、彼も僕の知り合いです。相変わらず口数が少ないですね。
彼は体こそ小柄であるが、運動神経は素晴らしいです。しかし、やはり商売上目立つのは避けたいみたいですね。
彼は僕のバイトの雇い主でもあるのですが、この話は今はしなくてもいいでしょう。
「――です。海外育ちで、日本語は会話はできるけど読み書きは苦手です。あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は―――」
そうこうしているうちに次の人に移っていました。声からして女子のようですが。
「趣味は吉井明久を殴ることです☆」
おおっ、なんとピンポイントかつ物騒な趣味なんでしょう。自分のことではないのに背筋が薄ら寒くなりました。
「はろはろー、吉井!今年もよろしくね」
そんな彼女もまた、僕の知りあいだったりします。
彼女が手を振る方に目を向けると“彼ら”もいることがわかりました。
こうしてみると、知り合いが多い気がします。なんたる偶然でしょう。しかしFクラスに固まってるっていうのは歓迎してもいいんでしょうか。微妙なところです。
そうこうしているうちに僕の番が回ってきました。まあ無難に済ませましょう。
「天水鏡護です。趣味は読書と料理です。よろしくお願いします」
そう言って軽く一礼してから席に着きます。
その後もクラスメイト達の自己紹介が続いていきます。
しばらく目で追っていると、“彼”の番が来ました。
「えーっと、
『『ダァァーーリィーーン!!』』
瞬間、クラス中の男子による(※鏡護、秀吉を除く)野太い声の大合唱。
.....これは思った以上に気持ち悪いです。ちょっと吐き気が.....うぅ。
「――失礼。忘れてください。とにかくよろしくお願いします」
吉井明久。彼ももちろん僕の友人です。小学校の頃からなので、10年近い付き合いになります。
いつも明るくムードメーカー的な存在だけど、勉強はちょっと苦手だったりします。
ガラッ!
「あの、遅れて、すいま、せん……」
明久が自分の席に着いたちょうどそのとき、教室のドアが開いて誰かが入ってきました。
『えっ!』
その姿に教室中(というか男子たち)から驚いたような声が上がります。
「丁度よかったです。今自己紹介をしているところなので、姫路さんもお願いします」
「は、はい!
少し緊張しているのか、体を縮こませて途中から自己紹介が尻すぼみになっていく彼女。
普段なら、そんな彼女の小動物を連想させる様子を見て可愛らしいと和むところだが、今の僕にはそんな余裕はありませんでした。
「はいっ!質問です!」
「あ、は、はいっ。なんですか?」
いきなりの自分への質問に驚きあたふたする彼女。あ、見てたらなんか落ち着いてきたかも。
「なんでここにいるんですか?」
聞く人によっては大変失礼な質問ですが、この場面では適切な質問ともいえました。
姫路瑞希。
彼女は人目を引くほど可憐な容姿の女の子で、
昨年度の試験においては、常に学年上位1桁以内に名を連ねていた程に高い学力の持ち主。
そしてここ数年はちょっと疎遠でしたが、僕の幼馴染でもあります。
そんな彼女がFクラスのクラスメイトとして目の前にいます。
一体どういうことなんでしょう?
あとがき
鏡護 「ねぇ、ちょっとほんとにどうなってるの?」
ガクガク...(首が揺すられる音)
作者 「説明するから落ち着けって。ウグッ、ヤ、ヤメレ、首が締まる~」
ガクガク......
作者 「マ、マズッ。も、もう息が……」
ガクガク......... キュ~(作者がノビた音)
鏡護 「ねぇ、聞いてる!?……って、あれ、作者さん!?」
蘇生作業中..... しばらくお待ちください
作者 「…ひどい目にあった」
鏡護 「ご、ごめんなさい」シュン...
作者 「ええい、そんな落ち込むな。こっちが悪いみたいだろ」
鏡護 「うぅ。…で、結局どういうことなの?」
作者 「…切り替え早いね、別にいいけど。そして説明だけど…………」
鏡護 「いや、引っ張らなくていいから。みのも○たじゃあるまいし」
作者 「……ざぁんねん。次回のネタバレになっちゃうからできません、テヘッ」
鏡護 「(怒)」
作者 「いやぁ、ほんとはその辺まで今回分に入れちゃおうと思ってたんだけど、
どうせまたひと悶着あるんで、次回に回すことにしたんだよね~」
鏡護 「……ちょっと、頭冷やそうか……」
作者 「え、あれ、なんでO☆HA☆NA☆SHIフラグ立ってんの!?」
鏡護 「人が真面目に聞いてたのに、理由がそんなだなんて、納得できると思ってるの?
ねぇ?ネェ?」(艶の消えた目)
作者 「うぉぉ!?なんかしらんがヤバイ!?それでは今日はこの辺で。
次回、第2問『いざ試験召喚戦争!これが勝利のカギだっ!(仮)』
よろしくお願いします!」