バカと天眼の賢者と召喚獣 ※凍結   作:天御柱

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第3問 『作戦会議!そしてDクラス戦始まる!』

―Side 明久

 

 

 

「騙されたぁっ!」

 

命がけで廊下を走り、教室に飛び込んだ僕。

こ、殺されるところだった!Dクラスの連中、ものすごい勢いで殴りかかってきたよ!

息を切らせて床にへたり込む僕に雄二が視線を落とし、

 

「やはりそうきたかw」

 

なんて平然と口にしやがった。しかも笑ってるよコノヤロー。

 

「やはりってなんだよ!やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!」

 

「当然だ。そんなことも予想できないで代表が務まるか」

 

「少しは悪びれろよ!」

 

「まあ落ち着いて。雄二が酷いのは今に始まったことじゃないんだから」

 

慰めてくれる鏡護の優しさが嬉しいよ.....グスッ。

顔は可愛いし、性格も優しいし、やっぱり鏡護って実は女の子なんじゃないかな?

 

「吉井君、大丈夫ですか?」

 

「本当に大丈夫、吉井?」

 

いい感じにぼろぼろになっている僕の様子を見て、姫路さんと島田さんが心配して来てくれた。

まあ見た目ほど酷くはないから、お礼を言っておかなきゃね。

 

「あ、うん。ほとんどかすり傷だから平気だよ。心配してくれてありがとう」

 

「そう、よかった……。ウチがまだ殴る余地はあるんだ……」

 

「ああっ!もうダメ!死にそう!」

 

前言撤回。島田さんはやっぱり雄二側の人間だった。

 

「…明久、立てる?」

 

「え?あ、ありがとう」

 

鏡護が差し出してくれた手を取って立ち上がる。

 

「いつまでも遊んでるな。それよりさっさとミーティングに行くぞ」

 

そう言って歩き出した雄二を先頭に、僕たちは屋上に向かって移動し始めた。

 

 

 

―Side Out

 

 

 

 

 

 

雄二に連れられて屋上にやってきた僕らは、適当に座ると早速ミーティングを始めました。

 

「明久。宣戦布告はしてきたな?」

 

「うん。一応今日の午後に開戦予定だって言ってあるけど」

 

「じゃあ、とりあえずは昼ご飯ってことでいいのかな?」

 

「そうだな。おい明久、今日くらいはまともな飯を食えよ?」

 

「そう思うなら、パンでもおごってくれると嬉しいんだけど?」

 

彼、吉井明久は生活破綻者です。

彼は1人暮らしで、親からは十分な仕送りをしてもらっているのだが、それを後先考えず趣味に注ぎ込んでしまうため、常に金欠状態なのです。

どれくらい酷いのかというと......

 

「あれっ?吉井君ってお昼食べない人なんですか?」

 

そんな事情は知らないだろう姫路さんが驚いた顔をして明久を見ています。

 

「いや…、一応食べてはいるよ?」

 

「……あれは食べていると言えるのか?……お前の主食は水と塩だろう?」

 

すかさず雄二がツッコミを入れています。

 

「きちんと砂糖だって食べているさ!」

 

明久.....相変わらずですね。しかしそういう問題ではないと思いますよ?

あ、ちなみに僕のお昼はお弁当(※自作)ですが何か?

 

「あのっ、それは食べるとは言わないと思いますよ……」

 

「表現としては舐める、が正解じゃろうな」

 

その場にいる全員が明久を憐れみの目で見始めたので、助け船を出してあげることにしました。

 

「「しょうがない(あの)、僕(私)が作ってあげようか(りましょうか)?」」

 

「ゑ?」

 

「「えっ?」」

 

明久、それは字が違いますよ...。それよりも驚きました。どうやら姫路さんも僕と同じことを考えていたようです。...もしかして明久に気があるのでしょうか?

 

「二人とも本当にいいの?僕、ちゃんとした昼ご飯を食べるのは久しぶりだよ!」

 

......本当に明久の食生活はどうにかした方がいいように思えてきました。

 

「はい。明日のお昼で良ければ」

 

「姫路さんが作るなら、僕は今回は遠慮しようかな」

 

「いや、お前が作ってくれるなら俺は食べたいんだが……」

 

「そうじゃな。ワシも久しぶりに鏡護の作る料理が食べたいぞい」

 

「………二人と同意見」

 

なぜか僕の料理も大人気です。別に味は普通だと思うのですが.....

 

「わかった。それならみんなで食べられるくらい作ってくるよ」

 

「ウチにも作ってくれるの?」

 

「うん。どうせ手間を考えたら1人2人増えたところで変わりないからね。でも、明久は姫路さんの弁当があるから僕のはいらないよね?」

 

「えっ!うーん……それは惜しいような……いや、でも………」

 

明久が悩み始めてしまいました。.....あまり欲張るとバチがあたりますよ?

 

「……そういえば瑞希って吉井に『だけ』作ってくるのね?」

 

心なしか殺気を纏いながら、島田さんが面白くなさそうに呟きました。

おや、嫉妬でしょうか?どうやら島田さんも明久に好意を抱いているようですね。

さて、これを聞いた姫路さんはどうするのでしょう?

 

「あ、いえ!その、皆さんにも……」

 

あらら、日和りましたね。まあ、彼女ならそうだろうと思っていましたが。

 

「俺達にも?いいのか?」

 

「はい、嫌じゃなかったら」

 

そういえば先程から何か大事なことを忘れているような気がしてならないのですが、一体何なんでしょう?

 

「それは楽しみじゃのう」

 

「…………(コクコク)」

 

「……お手並み拝見、ね」

 

まあ余程大事なことならそのうち思い出すでしょうから、今は置いておくことにしましょう。

 

「わかりました。それじゃ、皆に作ってきますね」

 

どうやら話も纏まったようです。それにしても、やっぱり姫路さんは優しいですね。などと昔のことを思い返していると――

 

「姫路さんって優しいね」

 

「そ、そんな……」

 

「今だから言うけど、僕、初めて会う前から君のこと好き――」

 

「おい明久。今振られると弁当の話は無しになるぞ」

 

「――にしたいと思ってました」

 

ブフゥッ!?あ、明久!君はなんてことを口走っているんですか!

 

「明久。それでは欲望をカミングアウトした、ただの変態じゃぞ」

 

「明久。お前はたまに俺の想像を超えた人間になるときがあるよな」

 

「だって……お弁当が……」

 

明久.....君はどれだけ食に飢えてるんですか.....

 

「……っと、話がだいぶ逸れたな。試召戦争に話を戻すぞ」

 

ああ、やっと原点回帰しましたね。長い寄り道でした。

 

「雄二。そういえば気になっておったんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ?段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」

 

「そういえば、確かにそうですね」

 

「まぁな。もちろん考えがあってのことだ」

 

雄二が説明し始めようとしています。...せっかくですからその役目、横取りさせてもらいましょう。

 

「そうだね。まずEクラスを攻めない理由だけど、簡単だよ。今の僕らの力なら戦うまでもないからね。明久、君の周りの面子を見てみて」

 

「えぇっと……美少女が3人と馬鹿が2人とムッツリが1人いるね」

 

「誰が美少女だと!?」

 

「ええっ!?雄二が美少女に反応するの!?」

 

「…………(ポッ)」

 

「ムッツリーニまで!?どうしよう、僕だけじゃツッコミ切れないよ!」

 

「まぁまぁ。落ち着くのじゃ、雄二にムッツリーニ」

 

「そうだよ。それに明久、君も美少女が3人っていうのは誰と誰と誰のことを言ったんだろうね?」

 

秀吉がカオスになりかけた場を収めてくれます。さすがです。

ついでに以前から時々明久が僕のことを女子として見ているような節があったので、釘を刺しておくことにしました。“イイ笑顔”と一緒に。

 

「う……笑顔が怖いよ、鏡護……」

 

「コホン。まあ要するに僕と姫路さんに問題がない今なら、Eクラスとは正面から戦っても勝てるってことだよ。それに最終目標がAクラスである以上、Eクラスと戦うのは時間の無駄だからね」

 

「?それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」

 

「そうだね。確実に勝てるとは言えないんじゃないかな」

 

「だったら最初からAクラスに挑んでも同じなんじゃない?」

 

「確かにそうかもしれない。でもDクラス戦にはちゃんと意味があるんだよね、雄二?」

 

ここでようやく話の主導権を雄二に返します。いやぁ、楽しかったです。

 

「まったく。ここまで俺のセリフを横取りしておいて今更俺に振るか?」

 

「まあそう言わずに。大事なところはちゃんと代表さんに花を持たせてあげるんだから」

 

「ハァ…お前はたまにそうだよな。」

 

そうして雄二は皆の方に向き直ると説明を始めました。

 

「今回は初陣だからな。派手にやって今後の景気付けにしたいだろう?それに、さっき言いかけた打倒Aクラスの作戦に必要なプロセスなんでな」

 

なるほど、廊下で話していたときに聞いたヤツですね。詳しい内容までは聞けませんでしたが。

 

「あ、あのっ!」

 

「んっ?どうした、姫路」

 

「えっと、その……吉井君と坂本君は、前から試召戦争について話し合ってたんですか?」

 

「ああ、それならついさっき明久から姫路のためにって――」

 

「それはそうと!」

 

また大事なところで明久の邪魔が入りました。ですが今の会話の流れから、明久が誰のために戦争を始めようとしたのか理解できました。

 

「さっきの話だけど、Dクラスに勝てなかったら意味がないんじゃない?」

 

「負けるわけがないさ」

 

雄二が明久の心配を笑い飛ばします。

 

「お前らが協力してくれれば必ず勝てる。いいか?ウチのクラスは――最強だ」

 

雄二がそう言うと皆もいよいよやる気になったのか、場が活気づいていきます。

 

「よし。それじゃ、早速作戦を説明しよう」

 

僕も頑張らないと、ですね。

 

 

     *     *     *

 

 

午後の授業が始まると同時に決戦の火蓋が切って落とされました。

しかし、僕の姿は前線にはありません。何故かと言うと――

 

「終わりました。先生、次をください」

 

「わかりました。はい、どうぞ」

 

「先生、私も終わりました。次の問題をください」

 

「ちょっと待ってください……どうぞ」

 

現在、別教室にて補給テストの真っ最中だからです。僕と姫路さんは振り分け試験を早退したので点数が無い状態でした。さすがにそれでは戦場に出て行けないですからね。

 

「「先生、次の問題をお願いします」」

 

.....という訳でFクラスの皆さん、もうちょっと待っててください。

 

 

     *     *     *

 

 

「終わったよ~!雄二、戦況は?」

 

「お疲れさん。今のところは前線部隊と中堅部隊で戦線は維持できているが、そろそろヤバイかもな」

 

「そっか」

 

テスト終了後、僕は教室に戻ってすぐに雄二に現状の確認をしました。

皆さんDクラスを相手になかなか善戦しているようです。

 

「僕と姫路さんも出る準備をした方がいいのかな?」

 

「いや、大丈夫だ。それに姫路には後で出てもらうにしても、今回お前を出す気はない」

 

「なんでさ?」

 

「言っただろう?お前はウチの『切り札』なんだ。そう簡単に手札を見せるつもりはない」

 

「それじゃあ僕がつまらないんだけど」

 

「まあそう言うなって。その分次戦からはたっぷり働いてもらうからな」

 

「わかったよ。しょうがないなぁ……」

 

むぅ、出番がないなんて面白くありません。そうして1人不貞腐れていると.....

 

ガラッ!

 

「坂本はいるかっ!」

 

誰かが教室に駆け込んできました。あれは確か須川君でしたか?

 

「どうした、須川」

 

「吉井隊長から先生方に向けて偽の情報を流して欲しいと頼まれたんだが、どうする?」

 

「ふむ、そうだな……。よし。須川、耳を貸せ」

 

雄二が須川君に何事かを吹き込んでいます。どんな話をしているんでしょう?

 

「……アハハッ、それは最高だ!よし、任せとけ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

やがて話が終わったのか、須川君が笑いながら教室を出て行きました。

 

「雄二、須川君に何を話したのさ?」

 

「ん、ああ。ちょっとした作戦をな。まあちょっと待ってろ」

 

 

ぴんぽんぱんぽ~ん♪

 

おや、校内放送ですね。もしかして先程雄二が話していた作戦でしょうか?

 

 

《連絡致します。船越先生、船越先生。吉井明久君が体育館裏で待っています。生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》

 

 

ぴんぽんぱんぽ~ん♪

 

 

い、今のはなんて恐ろしい放送だったのでしょう。もしこれが作戦だとしても、雄二は鬼か悪魔の類だと思います。

船越先生(45歳♀独身)といえば、婚期を逃して、ついには生徒たちに単位を盾に交際を迫るようになった、“あの”船越先生のことでしょう。

今の放送を聞けば間違いなく先生を足止めできますが、明久に貞操の危機が迫ってしまいました。

 

 

『……す、須川ぁぁあああああっっ!』

 

 

あ、遠くから明久の魂の叫びが聞こえてきました。南無.....

 

 

 

それからしばらくして雄二の率いる本隊が明久たちの部隊を回収するために出ていき、帰ってきたところで戦闘は一時中断されました。

すっかり憔悴しきった顔の明久と清々しいまでの笑顔を浮かべた雄二を見て、どうして2人が友人関係を続けているのか疑問に思った人はきっと僕だけではないでしょう。




あとがき

作者 「さあ、いよいよ始まりました。Dクラス戦です!」

鏡護 「……戦闘描写が1つもない(ボソッ)」

作者 「うっ…。いいんだよ、後半戦に入ったらガンガン書いていくから」

鏡護 「……僕は戦場に出ないのに?」

作者 「そこはほら、戦場に出てる人の視点から書かせてもらうから」

鏡護 「……僕、主人公だよね?」

作者 「そうだけど、今回は諦めんさい。……っていうかいい加減テンション低いのはやめい!」

鏡護 「…わかったよ。ところで次回はDクラス戦決着ってことでいいの?」

作者 「そうだ。カッコイイ戦闘描写がバンバン出てくるからな」

鏡護 「自分からハードル上げて自分の首絞めてるけど大丈夫かな、作者さん……(ボソッ)」

作者 「何か言ったか?……まあいいや。それでは次回予告!

   次回、第4問『Dクラス戦決着!交渉は鮮度が命!(仮)』

   を、」

作・鏡 「「よろしくお願いします」」
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