境界線上の天照   作:-甘夏-

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どうもです。ホライゾンの二次創作は書きたいと思っていたので、今回は衝動のまま書き始めようかと

2019/5/30
改定しました
これからも頑張ります


一章 エセ大神の開始地点

 風が吹き荒れる海を八つの巨大な影が過ぎていく。その影を生む準バハムート級航空都市艦『武蔵』は世界各国から暫定支配を受けている極東の数少ない自治領であり、八隻の航空艦から成る全長八キロ以上の巨大な航空艦である。

 その一つである中央前艦の武蔵野。その艦橋前には表示枠を多重に表示して作業を行う光景がある。

 そこで主に作業を進めているのは黒髪に侍女服の自動人形で武蔵総艦長である『武蔵』。総艦長として武蔵全体の管理を行う彼女は他の自動人形よりも処理能力が高く設定されている。そんな彼女にとって艦橋前から武蔵野全体を見渡すことは視覚による情報収集や各所の点検に向けた準備を兼ねていて、今日も変わらず武蔵各所の自然物のメンテナンスを行っていた。

 

「玉様。間もなく授業の開始時間です。以後の仕事はこちらで行えますーー以上」

「Judge. じゃあ撤収するね。先生怒らせるとやばいから」

 

 呼びかけに答えるのは下着姿の女性。武蔵とは正反対の白髪を肩まで伸ばし、片手には筆を持っている。玉が幼い時から付き合いのあった武蔵にとって、彼女が下着姿でいることを注意するのは意味の無いことだと理解していた。そんな彼女が犯罪に遭遇しないのは母親に犯罪予備軍が誰も相手できないからだ。

それに最近行っているケンカと称した戦闘訓練ではオリオトライと刃を交えている。それを見た酒井曰く、「あれは人のするケンカじゃないよ」とのこと。そんな力強いところも良いのですが。

ふと彼女がさっきまで作業をしていた場所に目をやれば、表示枠に丸や直線が描かれている。傍から見ればただの落書きにしか見えないそれはやがて淡い光を放ち始め、表示枠が砕けた。 その表示枠から拡散していく流体光は武蔵の各所へ散らばっていき、草花や木々に浸透していく。そうして光が吸い込まれた植物は無駄な枝や葉を自然に落としていき、枯れかけていた花はなんの前触れもなく美しさを取り戻していく。

 あの母にしてこの子あり。この一連の光景が筆を持つ少女、甘上玉(あまがみたま)の術式が起こしたものだと武蔵は知っている。総長の奇行に慣れている武蔵からしても初めて見た時は驚いたのだが、今では武蔵八艦の初期メンテナンスや植物への手入れなどその力を借りることが多くなっている。

 

 

 「いつもありがと。武蔵さん」

武蔵さんから渡された表示枠の最後の一枚に筆を走らせて振り向けば、いつもと変わらず制服を持ってくれている。それを各部のハードポイントに接続すれば極東式制服として相応しい格好だ。でも私も一人の女性。喜美みたいにいかないが少しは魅力を出していきたい。三河に着いたら母さんに見てもらおうかな。

そんなことを考えていると、武蔵さんから鋭い視線が飛んでくる。

「お急ぎ下さいーー以上」

痛い。視線が痛い。あれは早くしなきゃいけないやつだ。

「創作術式『筆しらべ 零式』起動」

 

 音声認識によって握っている筆が淡く光を発し始める。穂先には加工された流体が墨のような黒色で集まっていく。

 甘上一族に伝わる創作術式『筆しらべ』は空中に特定の円や線を描くことで流体を用いて自然現象を再現させる術式。甘上一族では『筆しらべ』と呼ばれるそれは水や草花、風や雷、日と月の満ち欠けを疑似的に操ることもできる。本来ならば神との契約や代演と複雑な条件が付くけれど、私が使う零式は出力が低かったり一部制限を掛けている。そうすることで複雑な過程を飛ばしているけど、代演や契約をすべて行った母さんの筆しらべは桁違いに強力で、昔に発生した巨大な怪異を浅間神社と協力して御祓したらしい。

 

 

「じゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃいませーー以上」

 

 武蔵さんに背を向け、教導院前の大階段を視界に合わせる。ここから大階段までをつなぐように私の体とを結ぶ線を走らせる。そして筆しらべは空中に静止したままその印通りの力を発揮した。

 描いた印は「咲花」。視界に移る範囲内で対象と目標を結ぶ蔦を生成でき、主に移動手段や物の固定に使える筆しらべで、流体の続く限りは蔦を生成し続けられる。

 描いた線は太くしっかりとした蔦へと変化して私の体を固定する。締め付けがきついのが難点だが外れることはない。これを使えば艦橋前から教導院までノンストップで移動できるだろう。

 

 

「良い仕事をしたと判断しますーー以上」

 

武蔵は教導院前に飛んでいく玉を連続撮影しながら一息をつく。

 

・武 蔵:『玉様の御写真と映像を入手しました。配布しますーー以上』

・● 画:『さすが武蔵ね。言い値で買うわ』

・武 蔵:『judge.取引成立ですね。ではーー』

 

 

「じゃあ体育を始めるわよー。とりあえず欠席者は……正純と馬鹿だけね」

 

 教導院前には幾らかの人が集まっている。その集団は武蔵アリアダスト教導院の三年梅組。玉が所属するクラスで、彼女の師匠である真喜子・オリオトライが担任を務めるだけあって個性的な学級である。そんな彼らの前に立つオリオトライは出席簿を片手に欠席者を確認している。

 

「えっとぉー、ナイちゃんが見るにタマタマも来てないかなー」

「大丈夫よマルゴット。武蔵に世話されてるだけで、もう来るわ」

 

そこで声をかけたのは武蔵第三特務マルゴット・ナイトと第四特務マルガ・ナルゼ。彼女たちの手元には玉の着替えを写した表示枠があるが全員が見て見ぬふりをする。それは某総艦長の職権乱用による一品だと皆が理解している証である。中には既に表示枠で取引を始める会計がいたりもするが。

 そんなナルゼの言葉とともにオリオトライの前に突如一凛の花が咲く。桃コノハナと呼ばれる桜色の花はその中心から蔦を勢いよく射出して対象を固定する。皆が驚く間もなく、その対象はすぐに飛んできた。

 

「武蔵総艦長補佐、甘上玉。到着しました!」

 

 

桃コノハナから抜けた先には長剣を携えたリアルアマゾネスこと、我らが担任オリオトライがいる。

 

「あー。先生怒ってる?」

「武蔵の手伝いなら文句ないんだけど、遅刻ギリギリはちょっとね」

「長剣で素振りするのが「ちょっと」なのか!?」

 

一同の叫びに、うるさいわね。と先生は言うが、ここは従っておこう。ぶっちゃけ武蔵各艦を繋ぐ連結縄で行う『今年一番の波が来たぜ』ごっこが楽しみなのだ。ここで吹き飛ばされるのは大問題である。

 

「ま、いっか。じゃあ体育を始めるわよー」

 

先生が姿勢を正してこちらを見る。こうしてちゃんとしていれば体育会系教師として十分なのだが、行動が危険だ。

 

「ルールは簡単。先生今から品川にあるヤ「地上げ業者」……ナイスよ玉。とりあえず業者をぶん殴りに行くから。そこまで着いてくること。そこからは実技で」

 

その言葉に集団の中で言葉が生じる。

 

「先生と彼らに何か関係が?」

 

その疑問は当然だ。だからその場に居合わせた一人として発言しておく。

 

「Judge. 先生とこの前焼肉食べに行ったんだけど、そこで先生が地上げに遭ってね……」

「あら、別に気にしてないわよ。単純に何かをぶん殴れば運動になるでしょう? 運動は体育だから何も問題ないわよ」

「大アリだよ!」

 

皆のツッコミに先生は悪びれる風もない。私は先生のアマゾネスっぷりはもう極まっているのだと久しぶりに思い出した。

 

「まぁそれは置いておいて。私が着くまでに攻撃を当てられたら、出席点を五点あげるわ」

 

その発言に私を含め皆の空気が変わった。

 

「分かる? 授業を五回サボれるの」

「先生、攻撃を当てれば良いので御座るな?」

 

そう言って質問するのは武蔵の第一特務である点像・クロスユナイト。第二特務である半竜のキヨナリ・ウルキアガも一緒だ。

 

「戦闘系は細かいわね。別にそれで構わないし、手段も問わないわ」

 

その言葉に二人が顔を見合わせ、再び前を向く。

 

「ちなみに先生。触ったり揉んだら減点する箇所はあり申すか? 逆に高得点の場所とかーー」

「あはは、最初に死にたいのはお前ら二人か?」

 

長剣を二回三回と素振りする先生に二人は俯いた。まぁしょうがないって。

そんな二人を他所に、先生は皆に問う。

 

「あんた達、これからどうしたいの? 各国に配られた聖譜の更新は今年で更新が止まり、末世が来ると言われてる。そんな時代に生きるあんた達が何をしたいのか。ちょっと考えてみなさい」

 

その言葉と共に、先生は跳躍した。授業の開始である。

 




さて、これから2話以降も改定していきます

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