短めですが、御容赦ください。
最低でも毎月更新はやっていきます!
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玉が品川に墜落する様子を、中央前艦の展望台となっている場所から望む者がいた。
周囲の掃除を重力制御でこなす武蔵の背後に一人の人影がやってくる。
「朝からお掃除とはさすがだねぇ」
やっ、と手を挙げて来るのは中年の男。武蔵は彼に視線を向けず応じた。
「そちらこそ、こんな所でサボりとは良い度胸だと判断できますーー以上」
「それを言うなら、武蔵さんだって半ば授業参観しているよね」
そう言って、男が品川に指を向ける。その先にあるのは艦首側の暫定居住区の一角。周辺住民が撮影した写真には、黒塗りの貨物庫を改造した建物の屋根が写されており、大きな孔が開いていた。
……玉様ならば問題ないと判断できます。
統計的に結論して、武蔵はふと一息をついた。
「酒井様。私はサボっているのではなく、武蔵総艦長として住民の安全確認をしているだけですーー以上」
「……分かったからさ。そろそろ、その箒をこっちに向けるのは止めてほしいな」
酒井の周囲には、数本の箒が重力操作で首を狙って浮遊していた。
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……面倒なことになった。
オリオトライのフルスイングで飛んだ先にあったのは、本来の目的地である事務所だった。そんな所に上から人が落下してきた場合、大多数の人間が慌てふためくだろう。それは目の前の人物たちにも当てはまっていた。
「おい、上から人が降って来たぞ」
「あ、ああ。俺の見間違いじゃなかったんだな……」
赤色の四腕に頭には二つのホーン。人間よりも遥かに大きな巨体を持つ二人の魔神族がこちらを見ている。
とりあえず、敵意がないことを伝えなければ。こちらに向かっているアマゾネスは敵意ありまくりだけど。
「えーと。ちょっと盛大にホームラン食らっちゃって、飛んできました。喧嘩とかはする気ないんで」
失礼します、と入り口を探そうとした瞬間。二人の魔神族の向こう側から足音が聞こえた。
「お前、あの時いっしょにいたガキだな。けっこう好みだったから、珍しく覚えてるぜ」
「兄貴、ロリコン極めてるっすね」
やめろ馬鹿。
だが、『兄貴』と呼ばれる声には聞き覚えがある。そう、オリオトライと焼肉に行った日に聞いた声だ。振り向くと、出入口にはひときわ大きな魔神族が立っていた。他よりも太く力強い腕から、そのパワーが並大抵のレベルではない事が伺える。
「そうだけど。……見逃してくれるの?」
「な訳ないだろっ!!」
剛腕が勢いよく振り下ろされる。それを正面へのステップで避けて懐に潜り込む。眼前で空いた胸に手のひらを出し、狙いを定める。
「『神獣鏡』展開」
開いた五指の先に黒い球体が形成される。
「『画点』」
「ぐはっ!?」
黒球が胸に触れた瞬間、頑丈な魔神族の肉体があっけなく吹き飛ばされる。巨体はそのまま壁をぶち抜いて外に放り出された。
「おい、嘘だろ……」
「兄貴ぃ!!」
それを見た二人の魔神族が口を開けて呆然としている。
……案外なんとかなるもんだなぁ。
先生との訓練による影響か、相手の評価が世間一般とずれている気がするが気にしない事にした。
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オリオトライの眼前には梅組の面々が息も絶え絶えな様子で座っている。
あの後、玉が脱落してからはマルゴットやナルゼの射撃を行われたが、オリオトライはそれらを潜り抜け品川までたどり着いていた。
しかし、ペルソナ君に担がれていた鈴を除いて、梅組はほぼ全滅だった。
「まぁ、生存一名に脱落者は玉以外助けられているし上出来ね」
「あの、玉さんは……?」
ああ、とオリオトライが後ろを振り向いく。それに釣られて皆が顔を向けると、黒い事務所の壁を破壊しながら巨体が飛び出してきた。
赤い巨体に頭部のホーン。オリオトライが話していた地上げ業者だった。
一体誰がやったのか。騒ぎを聞きつけてやってきた観衆も含め、皆の疑問に答えるように空いた壁から梅組のよく知る人間が出てくる。
「玉さん!?」
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皆の視線を横目に、倒れ伏す魔神族を撮影術式で撮影しておく。
「あの、何やってるんですか?」
皆の疑問を集約した浅間からの問いに、イッスンに撮影をさせたまま答える。
「何って。松平元信公に頼まれた情報収集と同人誌用の素材撮影だけど」
「「「さも当然のように答えやがった!!」」」
そんな受け答えの中で、オリオトライが一息を吐いた。
「あんたがコレやったって事でいいのかしら」
先生からの質問に頷く。
「Jud. 吹き飛ばされて着地したのがここだったからーー」
「待ちな!!」
背後から叫ぶ声。その声の主はさっきの魔神族二人組だった。
その姿に彼女は嬉しそうな表情をした。そして長剣を手に取り、顔だけを梅組に向ける。
魔神族は標的を定めて、突撃を開始した。
そして、未だその意図をつかめない皆を置き去りに先生は言った。
「今から実技をします」
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魔神族はその巨体と筋力もさることながら、大きな特徴を持っている。それは体内に流体炉に似た器官を持っていること。その器官から得られる内燃排気の獲得量は目を見張るほどのレベルがある。
そんな彼らの肉体は重装甲並みの強度を持ち、筋力も軽量級の武神と戦えるほどである。
「でも、そんな魔神族にも弱点があるわ」
それは生物が持つ大きな弱点。生物の頭蓋とその内部にある脳。頭蓋を揺らせば内側にある脳も振動することで脳震盪が起こる。
それは魔神族も例外ではない。特に頭部のホーンは大きな狙い目だ。
「このホーンの先端。その曲がった角に引っ掛けるように打撃する」
「ぐっ……」
振るわれた一撃は正確にホーンを打撃した。オリオトライの驚異的な膂力から放たれた打撃をまともに受けた事で、力なく魔神族の体が倒れ込む。
それでも内燃排気を用いて回復しているのか、指に力が入っている。
そんな魔神族を見下ろすように、オリオトライは長剣を振りかぶる。
「ここで油断しちゃダメよ。回復させる隙を与えずに、ちゃんと対角線上をぶん殴るっ!!」
躊躇い無く放たれた二撃目によって魔神族は完全に意識を失った。
それを見ていた残りの魔神族が仲間を引きずって建物へと逃げていくのを横目に、オリオトライは笑顔で生徒の方へと振り返る。
「それじゃあ、今から皆にもやってもらうわよ」
さも当然と告げるオリオトライの眼前に玉が立ち、梅組の方へと手を下から上へさん、はい、と振る。
「「「出来るかぁ!?」」」
「おいおい。皆してどうしたんだよ?」
突然聞こえた声に皆がそちらを向く。
その視線の先にいたのは、紙袋を脇に抱えた少年だった。一見すれば普通の学生だと思えるだろうが、紙袋から見える箱には『ぬるはちっ! R元服』と書かれている。
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葵・トーリ。武蔵アリアダスト教導院の総長兼生徒会長である彼がこちらに近づいてくる。
それに合わせて周囲の観衆がぞろぞろと道を開ける。
「あれが総長兼生徒会長か」
「ああ。聖連からせい『不可能男』なんて字名を貰ってる」
「……てか、なんでエロゲ持ってんだよ」
観衆の呟きを聞き逃さず、彼らにちょっかいを出しながらトーリがやって来る。
そんな様子を見て唖然とするのが多い中でオリオトライは拳を震わせ、玉は大笑いしていた。
「あっははははっ。トーリ、それって泣きゲーでしょ」
「お、玉じゃねぇか。お前は並ばなかったのかよ。点蔵の親父は店舗別特典まで集めに忍者走りしてたのに」
玉の笑いに答えながら立つトーリ。その肩に後ろから、オリオトライが無言で手を置く。トーリはそれに気づき後ろに振り返りながら、
「なんだよ先生? そんなマジ顔してるとモテないぜ。まぁ、悲しかったら俺も玉も焼肉に付き合うからさ」
「なんで私まで付き合うの確定なのよ」
「そりゃあ、玉と先生の付き合いが長いからだろ。IZUMOの時からの付き合いなんだっけか」
「Judge. 先生はあんまり話さないけどね」
玉の方を指さして笑うトーリの言う通り、オリオトライと玉は武蔵乗船前からの付き合いがあった。それは彼女たちの関係者達も知っている。ただ、咲とその当人達によると、当時の関係は今と大して変わらなかったらしい。
そして、オリオトライの空気が少しずつ変わるのを感じ取った周囲の人間が後退を始める。
握られた拳に力が入る。姿勢を変えてキレのいい一発を放つ準備をするオリオトライに、顔を玉へと向けるトーリは、それに気づくことなく話を進める。
トーリ越しに玉もオリオトライの様子に気づくが、その拳はすでに解き放たれようとしていた。
「どうせIZUMOでも肉ばっか食ってたんだぜ。先生はもっと野菜を食った方がーー」
「馬鹿! それ以上言うな!!」
一撃。
「わー!! 急にエロゲ持った学生が中に!?」
玉の言葉も届かず、トーリに突き刺さった拳は振りぬかれた。もろに食らったトーリが魔神族の事務所に突っ込み、中から悲鳴が聞こえる。
そんな中で、事務所の中からトーリの声が響く。それは梅組の面々に届くほどの声量をもって告げられた。
「俺、明日告りに行こうと思うわ」
「ーーーえ?」
トーリが告げた内容に一同は困惑を隠せないまま、時が過ぎていった。
では次回!!
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